「ーおはようございます」
『おはようございまーす』
それから、数10分後。俺達は、ファロークス支社社屋の地下にあるトレーニング施設に足を踏み入れていた。
そこでは、既に複数のスタッフがトレーニングに勤しんでいたので、小さめの挨拶をして中に入る。
「ーんじゃ、まずはウォーミングアップからだな」
『はい』
そして、ランニングフィールドの端っこで一旦足を止め『荷物』を置いてからストレッチを始めた。
「ー…良し。それじゃあ、スタート」
それが終わると、俺達はランニングをスタートした。…当然、直ぐに他のスタッフ達の一団に合流する。
「ーあ、おはようございます」
『おはようございます』
すると、向こうから声を掛けてくれたので俺達は素早く返した。…どうやら、大分歓迎されているらしい。
まあ、『契約相手』だから当然か。多分、若社長にとって『プレシャス』と契約する事は目標の1つだったのだろう。
勿論、『上へ行く為の-功績-して利用する為』という事は俺も『顔役達』も十分理解しているし、『リターン』も十分過ぎるほど受け取っているし…何より、『理由の半分』という事も分かっているから異を唱える事はしない。
「ーおはようございますっ!」
『おはようございます、社長っ!』
『おはようございますっ!』
ちょうどその時、ヨーラン支社長がランニングフィールドに入って来た。すると、ランニング中のスタッフがすかさず返事をした。勿論、俺達も返した。
「…っ!さあ、今日はトラックでランニング中の『プレシャスメンバー』が、テレビ局主催の『クイズショー』へチャレンジを開始する日です!
皆で、しっかりとサポートと応援をしていきましょうっ!」
『了解ですっ!』
そして、ランニングしている俺達を見つけた若社長はその場のスタッフにオーダーを出す。…いや、本当に有難い事だ。
俺は、改めて彼らに感謝しながらランニングを続ける。
「ー……っ」
それから、大体30分後。…そろそろ終わりが近くなか、不意に『プライベート用』端末が震えた。…とりあえず、保留にして最後まで続ける。
ーそして、数分後。俺の端末から終了のブザーが鳴った。
「はい、終了~っ!」
「「「はいっ!」」」
「……はい」
すると、『指導役』2人と『弟』はまだまだ元気な感じで返事をした。…反対に、『姉』はヘロヘロな様子で返した。
まあ、少し前までせいぜい10分位しか参加してなかったからしょうがない。…ただ、この短期間で大分『マトモ』になったようだ。
「ー……ふう」
『ふぅ~……』
「…はあ、はあ、はあ、はあ……ー」
そして、俺達はゆっくりとペースを落としていき数分後にスタート地点で完全に止まった。
「ーほいっ」
「あ、すみません」
「ほいっ」
「あっ、ありがとうございます」
「ほいっ」
「…ありがとう」
「ほいっ」
「……ありがとう、ございます」
そして、俺は直ぐにスタート地点の傍においてあったデカイ『保冷バック』をスポーツドリンクを取り出し、1つずつメンバーに渡す。
「…んくっ、…んくっ、…んく……。…はふぅ~」
「あー、生き返りますね…」
「…美味しい」
全員ゴクゴクとドリンクを飲み、一息ついた。
「…あー」
そのタイミングで、ようやく俺はデバイスを確認する。…って、マジか。
「……?」
「どうしました?」
「そういえば、先程デバイスに連絡が来ていたようですが?」
「もしかして、『クイズ関係』でしょうか?」
俺は直ぐに、『折り返し』を掛ける。当然、ランスター達は不思議そうにするが…ミリアムとエリゼ博士はピンポイントで言い当てた。
「正解です。
ーあ、もしもし。こちらは、キャプテン・オリバーです」
『ああ、すみません。お忙しいところ、ありがとうございます』
相変わらずの鋭さに感心していると、通話が開始されたので名乗る。すると、若い男性スタッフの声が聞こえて来た。
「…あ、それで『先程の確認』なんですがー。
ーファロークス支社のセブンフロアにある、『第3ミーティングルーム』をお借りしているので、『ファーストステージ』はそこで受ける予定です」
『分かりました。…えっと、その場合だとー』
俺は、『ファーストステージの会場』を告げた。すると、向こうは『ルール』を確認ー。
「ーああ、勿論既にスタッフの方に『事前確認』をして貰っています。確か、証拠のムービーとフォトを『責任者』又はそれに準ずる人が提出するんでしたよね?」
『…え?…は、はい。その通りです』
まあ、こちらも『ルール』は頭にインプットしているの『セッティング』出来ている事を伝えた。…すると、向こうはちょっとビックリした様子で返事をした。
「そちらも、既に責任者の方に話を通していますから大丈夫です。
他に、追加の注意事項はありますか?」
『は、はい。
ー開始30分前までにはこちらのスタッフ2名と-採点係-をそちらに向かわせますので、それまでには会場に入っていて下さい』
「分かりました」
『…それでは、失礼致します』
「はい…ー」
そして、通信は切れた。…それにしても、『採点係』まで居るとは凄い力の入れようだな。
「ーという訳で、30分前にはお借りしている『会場』に入るように」
『了解です』
「ーああ、ちょうど良かった」
とりあえず、改めて全員に『集合時間』を伝えといると、ランニングを終えた若社長が声を掛けて来た。
「先程、担当の者から連絡が来ました。
ー『会場』は、問題ないようです。…で、後は私が今から来るスタッフにデータを渡せば良いですよね?」
「はい。お手数お掛けしますが、宜しくお願いします」
「いえ。それでは、お先に失礼します」
『お疲れ様ですっ!』
すると、若社長は足早にトレーニング施設を後にした。
「…さ、俺達も場所を代えよう。
ー今日は、俺も『参加する』からな」
「「…っ、はい……」」
「「宜しくお願いします」」
それを見送った俺達も、『次』に移行する。…そして、俺の言葉に『生徒』達はげんなりし『指導役』達は深く頭を下げて来たのだったー。
○
ーSide『プロダクション』
「ーおはようございます」
「ああっ、おはようございますっ!ようこそお越し下さいましたっ!」
テレビ局の局長ルームに入って来た『ゲスト』を、マギーは非常に感謝した様子で出迎えた。
「ありがとうございます。…随分と、大変な状況のようですね?」
「…ええ。ですが、『クイズショー』は予定通り開催致しますのでどうかご安心を」
「…本当に大丈夫なのですか?
ー帝国軍の知人は、『例のカンパニー』が関わっている可能性があると言っていましたが…」
しかし、『教授』…帝国に総本部を構える歴史研究機関『ヒストリーサーチャー』の責任者は局長の言葉に不安を感じていた。
「…なるほど。随分と、『情報通』な知人ですね。
ー…ですが、その知人は『十分注意するように』とは言っただけで『止めておいた方が良い』とは言いましたでしょうか?」
「…っ!……いいえ。…随分と心配していましたが、『そこまで』は言われませんでした」
「でしょうね。
…何故なら、『絶対の守護者』がこのラバキアの地に居る事を知っていたのですから」
「……。…やはり、『彼』が此処に来ているようですね」
局長からそれを聞いた教授は、自分の予想が当たっていた事を確信した。…それだけ、『プラトー』に対する信頼と信用があるという事だ。
「…ええ。ですから、こうして皆様をお招き出来たのです。
道中も、大丈夫でしたでしょう?」
「ええ。いや、まさか『プレシャス』に専属サポーター達が居るとは思いませんでした」
「私も、つい先日知りました。…いやはや、本当に『プレシャス』には『マスメディア』としても個人としてもいつも驚かせれる。
ー…っと、話がコースアウトしてしまいましたね。どうぞ、お掛け下さい」
ふと、話が大分コースアウトしていた事に気付いた局長は軌道修正をすべく教授に座るように言った。
「失礼致します」
「…っと。
ーでは、改めて『ヒストリーサーチャー』の皆様への依頼内容をお伝え致します」
そして、局長も対面のソファーに座り説明を始めた。
「今回、教授と研究員の皆様には『クイズショー』の第1関門…『ファーストステージ』での採点役をお願い致します」
「了解しました」
「尚、採点が終わりましたら本日午後1時までに『合格者』のネームを担当の者の端末に転送して下さい」
「分かりました」
「では、『誰が何処の会場』なのかをご確認下さい」
そう言って、局長はタブレットを教授に差し出した。
「拝見致します……ほうー」
教授はそれを見て、直ぐに自分の端末に『担当者情報』をメモしていく。
「ー……っ」
その最中、『彼ら』の欄を見た教授はビックリしたように目を見開いた。
「…ああ、そういえば『プレシャス』メンバーの『誰か』まではお伝えしていませんでしたね。
いやはや、私も驚きましたよ」
「…で、ですよね……」
何に驚いたかを予想した局長は、教授の心境に同意した。…だが、教授の真意は別である事には局長は気付く事はなかったのだったー。