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お祝いと出迎えと

「ーでは、『ファーストステージ』突破を祝してカンパ~イッ!」

『カンパ~イッ!』

 それから数時間後。俺達は、初日に来たレストランの『パーティールーム』にて綺麗なソフトドリンクが注がれたグラスを掲げた。

「…あ、これ美味しい」

「そりゃ良かった」

 そして、一斉にドリンクを飲むとミリアムが感想を口にする。どうやら、口に合ったようだ。

「…にしても、まさか『ファーストステージ』をクリアしただけなのにこんな良い店で祝勝会が出来るとは、正直思いませんでした」

「…実は、ボクもちょっとビックリしてる」

「「右に同じく」」

 ヒューバートがそう言うと、ランスターに博士は同意しこちらを向く。すると、ミリアムさえもこちらを向いて来た。

「…言っておくけど、『今回』は俺は関与してないぞ。むしろ、君達と同じように驚いている」

『……へ?』

「…実はなー」

 俺の言葉に、全員ポカンとした。…なのでとりあえず、いきさつを説明する。


 ーそもそも、俺は良さげな店で『かるーく』ランチとパーティーをするつもりだったのだ。…ところが、先に『顔役』達にクリアの報告をした際に『良いレストランで祝勝会をしてはどうですか?』と女史達が提案して来たのだ。

 ー曰く、『-次-のモチベーションに繋がる』とか、『メンバーのメンタル管理もリーダーの仕事の内』とか、『努力し結果を出した者には相応の褒美を与えるべき』…だそうだ。

 いや、正直その通りだと思った。だから、若社長に『こちらの条件が合う』店を聞きいたのだ。…勿論、そこから先は『代表』として俺がやるつもりだった。

 けれど、若社長はなんと『こんな事もあろうかと予約しておきましたよ』…と言って来たのだ。


「ー…ちょ、ちょっと待って下さい。つまり、ヨーラン社長は『我々がファーストステージをクリアすると信じていた』…と?」

「だろうな…。…全く、会長殿やはどんな『話』を若社長にして来たのだろうな?」

 会話の途中、ミリアムはビックリしながら予想を口にした。…俺は、少々困惑しながらランスターの方を向く。

「…あー、確かに会長が『話』をしていそうですね……」

「…あの人、『語り上手』だからね。しかも、絶対に『過大評価』はしないし」

 すると、会長の事を良く知る2人は凄く納得していた。…あくまで予想だったが、大正解のようだ。

「…まあ、そんな訳でこのパーティーのセッティングに俺は一切関与していない。

 ああ、それとミールは俺持ちだから心配はいらないぞ」

「…なるほど。……って、え?」

「…マジですか?」

 そして、最後にサラッと重要な事を伝えるとメンバーは唖然とした。

「これでも俺、『高給取り』なんだぞ?」

「…あ」

「…なんか、時々忘れてしまいますね」

「…確かに」

 けれど、『俺のもう1つの顔』を思い出したメンバーは納得した。

「ーだから、遠慮しないで食べてくれ」

『……』

「「分かりました」」

 俺がそう言うと、メンバーは申し訳なさそうにした。…けれど、付き合いの長いランスター達は直ぐに切り替えて料理に手を伸ばす。


「…2人共、平気なんですか?」

「…え、だって『遠慮するな』ってキャプテンが言ったし」

「うーん。そもそも私達って『クルー』…つまり、彼にミールを頂いている身ですから、今更気にするのも変じゃないですか?」

 それを見たヒューバートは、2人に問うが…本当に『気にした様子』を見せずに返した。

「…それに、食える時に食っておかない食いそびれるかも知れないし」

「ですね。特に今は、いつ『トラブル』が起きても起きてもおかしくないですから」

 そして、更に2人は『傭兵』らしい持論と心構えを口に出した。…いやはや、頼りになるぜ。

『……』

 すると、残りのメンバーはポカンとした後…互いに顔を見合せ頷き、皿に手を伸ばすのだったー。



 ○



 ーそして、ラバキアが黄昏時を迎える頃。俺と『ライトクルー』メンバーと『SPチーム』は、宇宙港に上がりシュザンヌ伯母様の到着を待っていた。

「ーキャプテン・プラトー。そろそろ到着します」

「ありがとうございます」

 伯母様の乗る定期船の到着時刻間際になると、ユリア副隊長が報告してくれる。…それから少しして、定期船が到着した。

「さ、行きましょう」

『了解』

 大型モニターでそれを確認し、俺達はロビーから審査ゲートの出口に移動する。

「ー…っ、驚いたな。…まさか、こんなにも来る人が居たなんて」

 そして、そろそろゲートが見えて来る頃には大勢の観光客…恐らくは大半が『クイズ番組』のオーディエンスであろう人達が出てくるのが見えた。その光景に、イアンは驚く。

 まあ、流石に『気が早い』上に『生でみたい熱』が強過ぎるよな…。

 ーちなみに、連盟の各政府はラバキアへの渡航制限は出さなかった。…勿論、その代わり『観覧以外での外出は控える事。また、非常事の際は地元警備部隊の非難誘導に従う事』を強く呼び掛けていた。

 多分、『俺』が此処に居るからだろう。本当、非常に頼りにされているな…。


「ーっ、キャプテン・プラトー。お見えになりました」

 改めて、『期待』という名のプレッシャーを感じていると副隊長は『目当ての人物』の登場を告げた。

「…っ。

 ーシュザンヌ伯母様っ!こっちですっ!」

『っ!』

『…え、嘘、あの人……』

 なので、俺は気持ちを切り替え大きな声で呼び掛けた。…当然、他は観光客や出迎えの人に『気付かれる』がスルーを決める。

 勿論、伯母様も自身に注がれる大量の視線を全く気にせずに優雅な歩みでこちらに近いて来た。…やっぱり、『軍人の家の人』だからメンタルが超強い。

「ー久しぶりね、オリバー君。…本当、凄い人気ね?」

「…あはは。

 …とりあえず、さっさと地上に移動しましょう」

「ええ。

 ーそちらの『面白そうな』人達を紹介は、落ち着いて場所で聞きたいし」

 すると、伯母様は俺の周りに居るメンバーを凄く興味深そうに見ながらそんな事を言った。…やっぱり、そうなるよな~。まあ、この人は俺の『事情』を知ってる人だし…何より、他人の秘密は絶対に守ってくれる人だから大丈夫なんだけどね。


『ー……』

 当然、周りのメンバー…特に『ライトクルー』は少し緊張する。…そういえば、この人の事あんまり話してなかったな。

 俺は、うっかりしていた事をちょっと反省した。…そうこうしている内に、地上行きのエレベーターホールに到着した。

 ーそして、またまた周りに注目されながらラバキアの地上へと降り立つ。

「ーそれでは、どうぞ」

「っ!…ありがとう」

 その後、地下パーキングに待機させていた『リムジンレッグ』に俺と伯母様と『ライトクルーガ』だけ乗り込む。…まあ、案の定ドライバーが居ない事に伯母様は驚いたが直ぐに『察し』たのか、なるべく落ち着いて中に乗り込んだ。

『ーゲスト並ビニ、カノープスクルーノライドヲ確認シマシタ。

 発進シテモ宜シイデスカ?』

「ーっ!?」

『……』

 すると、広い後部シート…キャビンシートの中央にエアウィンドウが展開し『ウマ耳が頭部から生えた白銀の髪のメイド』が表示された。

 当然、伯母様はギョッとしまだ慣れていないメンバーはちょっとビックリしていた。

「…ああ。安全運転で頼む」

『了解シマシタ』

 とりあえず、俺は了承すると直ぐに『リムジン』は発進した。


「ーまずは、『彼女』の事から説明しましょう。…『エージェント』」

『イエス、キャプテン』

 そして、地上に出た辺りで再び『エージェント』を呼ぶ。すると、再び『彼女』が出現した。

「こちらのシュザンヌ夫人に、自己紹介を」

『了解シマシタ。

 ー初メマシテ、シュザンヌ=レーグニッツ様。私ハ、-トランスポートレッグ-統括管理人格の-エージェント・ホース-ト申シマス。

 宜シクオ願イ致シマス』

『彼女』…『エージェント・ホース』は名乗った後、深くお辞儀をした。

「…こちらこそ、宜しくお願いします」

 すると、伯母様は驚愕しつつ返事をした。

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