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陥落

「…凄い食い付きですね」

「今までにない反応です…」

「…しかし、何故あれだけの反応を?」

「ー僭越ながら、私より説明させて頂きます」

 責任者が質問質問してきたので、俺はカノンにアイコンを送る。すると、彼女は頷き説明を始める。

「今回用意した『試作品』の原料は、ブルタウオ星系でのみ採掘される『マリンクリスタル』となります」

「…っ」

「ウェンディ様はご存知かと思いますが、通常は装飾品に使われるマテリアルですね。

 ただし、『試作品』に使用している物は都市惑星で採掘された物ではなく『第1星系』で採掘された物になります」

「…え?」

「まあ、『現地の環境』を守るというのが第1ですね。…そして、第2の理由は単純にエネルギー含有率が高いからです。

 だから、今急速に調査が進んでいる第1惑星で採掘したモノを使っているんですよ」

「…なるほど」

「ーっ!3体の『キャット』達が立ち上がりました」

 説明が終わったその時、職員が報告したのでモニターを見る。…どうやら、そろそろ『限界』が来ているようだ。


「カノン、『トドメ』を」

「イエス、マスター。

 ー責任者様、宜しくお願いいたします」

 だから、直ぐにカノンにオーダーを出した。すると、彼女は頷き…監視責任者に頭を下げる。

「分かりました。

 ー『清掃ドローン用ドア』、オープン」

「…へ?…イ、イエス、コマンダー」

 直後、責任者は簡潔なオーダーを出した。…当然、職員はポカンとするが直ぐにオーダーを実行する。

 ー次の瞬間、隔離ルームの中に『トリ』が複数入っていく。…そして、ゴルフボールサイズの『試作品』をフロートして『キャット』に接近した。

「…っ」

「…うわ、エグ~」

『……』

 多分、キャット好き達はこれから『何をするのか』が分かったのだろう。…皆、ちょっと引いていた。

『ー……ッ!』

 そして、『トリ』達は『キャット』達の手間で止まる。…すると、『キャット』達は自然と上を見上げる。

 ー直後、『トリ』達は時計回りで旋回をしたり上下運動を始めた。すると、それに合わせて『キャット』達も首を動かす。


「ーっ。確か、キャットは動くモノに夢中になる習性がありましたね…」

「その通り。…ほら、だんだん『ハンティング』のポーズにー」

『ーNYAAAA~!』

 その時だ。『キャット』達は、凄まじいジャンプ力で宙を舞い『シーフード』の形をした『試作品』に飛び掛かった。

 すると、『トリ』達は一斉に『試作品』を離し急速にエスケープした。

『NYA!?』

 当然、『試作品』は落下し偶然にも『キャット』達の顔にクリーンヒットした。…そして、そのまま『キャット』達は床に着地する。

 ーけれど、『キャット』達は何故か立ったままピクリとも微動だにしなくなった。…多分ー。

『ー…FNYAAAA~……』

 数分後、突如『キャット』達は気持ち良さそうに鳴き床にペタンと座り込んでしまった。

「…ええ~……」

「…なんと……」

「………」

 それを見た職員達は、呆気に取られた。…まさか、数時間前まで『不気味な存在』だった監視対象が『何処にでも居るような存在』に変わるとは、思ってもみなかっただろう。


「…な、なんですか、あの『反応』は?」

「ああ、多分『マリンフレグランス』的なモノを感知したからでしょう」

「……はい?」

 責任者の疑問に、俺は答える。…まあ、当然彼は余計に混乱した。

「私も良く分かっていないのですが、『マテリアル』を『好物』に変換する際その星系の環境情報が、『フレグランス』に似た情報になるようなのです」

「………」

「だから、『キャット』達はその『フレグランス』を嗅いだことであんな反応をしたのでしょう」

『ー…FSHYA!』

 そんな憶測混じりの解説をしていると、モニターの『キャット』達は突如『機嫌』が悪くなる。…すると、モニターの向こうでは『トリ』が『ある物』をフロートしながら近いていた。

 多分、『大好きなモノ』を奪われると思ったのだろう。

『ーPYE』

 けれど、『トリ』達は臆する事なく『キャット』達の前に迫り…運んでいた『ランチョンマット』を落とした。

『…NYAA?』

『PEY,PYE』

 すると、『キャット』達は威嚇を解除し首を傾げる。なので、『トリ』は『何か』を伝えた。

「…何だ?」

「…一体、『トリ』達は何を?」

 少しして、『キャット』達は若干警戒しつつランチョンマットに近く。そして、『試作品』の引っ付いた顔をそっとー。


『ーNYAA!?』

 次の瞬間、『試作品』だけが上手い事ランチョンマットにポトリと落ち…ほんの少しだけフロートする。要するに、アレも『アイテム』の1つだ。

『…!……』

 そして、『キャット』達は再び至近距離で『試作品』を凝視した。…同時に、口からはまたヨダレが流れ始める。そしてー。

『ーNYAAA~!』

『キャット』達は、最早『ガマン出来ない』といった様子で口を大きく開け、『試作品』をパクンと取り込んだ。

『ー…!FNYAAA~!』

 そして、咀嚼が終わりゴクンの飲み込んだ後…再び『キャット』達はブルブルと震える。…その顔は、実に幸福そうだった。

「ーすみません、ちょっと『中』と会話しますね」

「…っ、は、はい」

 俺は責任者に許可を取り、通信用の『トリ』を腕に乗せる。

「ー『残り』のヤツも、遠慮せず食って良いんだぞ?」

『ーFNYAA!?』

 すると、『キャット』達は我に返りこちらを見る。…しかし、今さら取り繕っても遅い。

「ほら、早くしないと『それ』も消えてしまうぞ。…あ、ちなみに『さっきのヤツ』はお前達の『部下』が美味しく食べてるだろうからー」


『ー…!』

「…うわ、早……」

「…まあ、『そんな事』言われたらねぇ……」

 話の途中、『キャット』達は凄まじいスピードで皿に突撃し貪るように『試作品』を食っていく。…後ろの『キャット好き』達は、彼らの心理を良く理解していた。

 まあ、俺は『連中』の思想…『下の奴』に手柄を横取りされるのを激しく嫌う性質をラーニングしていると思って、さっきの『話』をしたのだが…。どうやら、元からそういう性質があるようだ。

『ー……!………~!』

 そして、数分後。『キャット』達は『試作品』を全て平らげ非常に満足そうにしていた。

「(ーさあ、『ラストスパート』だ。)

 ウマかったか?ウマかったよな?…『ハウス』で出されていた『ご褒美』より、今食べたヤツのほうが圧倒的にウマかったハズだよな?」

『ー……!………』

 すると、『キャット』達は幸福の顔から一変して非常に『真剣』な顔になる。…どうやら、マジで『あと1歩』のようだ。

「もし、俺達の『味方』となってくれるのなら『今のモノ』より更にウマい『報酬』を支払うと約束しよう」

『ー……!………』

『キャット』達は、非常に『悩ましい』顔をしていた。…ほう、『もう1声』欲しいといったとこかな?どうやら、『連中』は随分としっかりとした『アメとムチ』をしていたようだ。

『連中』の『徹底ぶり』に感心しつつ、俺は後ろを振り返る。


「ー……。…やはり、『環境』を保証する必要があるのでは?」

 すると、支援班長が真っ先に返した。そして、メンバーも同意していた。

「なるほど。

 ー良し、『そこそこ広い専用ルーム』も用意しよう。『頼み事』の時以外は、好きなだけのんびりしていると良い」

『ー……!NYAAA~!』

 すると、『キャット』達の顔は非常に良い笑顔になっていた。…多分、『環境』の面で不満を抱いていたのだろう。

「契約成立だ。…じゃあ、早速だが『頼み事』をしよう。

 ーまずは、キミ達の『部下』を説得してくれないだろうか?」

『NYAAA~!』

 すると、『キャット』達は即座に了承したのだったー。

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