「ー到着しました」
『ありがとうございます』
そして、厳重な警戒態勢の市街地を移動する事数分。俺達の乗るカーは、ラバキアテレビ局の所有するイベントホールの地下パーキングに停車した。
「ーお疲れ様です。此処から会場までは、我々がご案内致します」
「…っ。ありがとうございます」
『あ、ありがとうございます』
俺達がカーを降りると、『SPチーム』リーダーのユリア副隊長と戦闘班男性メンバー待ち構えていた。…いや本当に、ちょっと気が休まるな。
実際、彼らと行動を共にする事で今日も朝からピリピリしている外の空気に引っ張られていた俺達は、ちょっとだけリラックス出来た。
『ーっ!』
『…やはり、勝ち残ったか』
その事に感謝しつつエレベーターホールに向かうと、恐らく他のホテルに滞在している『ライバル』達とも出くわした。…けれど、『心強い味方』が周りを囲んでいるので向けられる鋭い視線も、あまり気にならなかった。
『ー上ヘ参リマス』
そうこうしている内に、イベントホール特有のキャパがかなりあるエレベーターが到着したので、俺達『チャレンジャー』の第1陣はゆっくりと乗り込んだ。…そしてー。
『ーようこそお越し下さいましたっ!』
それから少しして、会場となる広大なフロアに入るとスタッフ達に出迎えられた。…おわ、なんか『試験会場』みたくなってるな。
フロアの中は、大量の細長い長デスクとコンパクトに持ち運べるチェア。それから、前方に雰囲気作りなのか『ティーチャーデスク』まであった。
『それでは、大変恐縮ですがお近くの受付テーブルにて身分証明のご提示をお願い致します。
その後、テーブルゾーン付近に立っているスタッフよりナンバーカードをお受け取り下さい』
すると、スタッフからそんなアナウンスがあった。…今回は、いつもより数が多いから大変だろう。
ちょっぴりスタッフ達に同情しつつ、俺達は一旦『SPチーム』と別れてライトサイドのテーブルに向かう。
「ーこちらにどうぞ」
「はい」
「それでは、お名前をどうぞ」
「はい。
オリバー=ブライトです」
「アイーシャ=ランスターです」
「…イアン=ランスターです」
「ミリアム=リーベルトです」
「エリゼ=アルジェントです」
「ヒューバート=スミルノフです」
すると、ちょうど順番が来たので受付のアンドロイドスタッフの前に立つ。そして、俺達は順番にゆっくりと名乗っていく。
「ーありがとうございます。それでは、お手数ですが身分証明カードをご自身の顔の横に持ち上げて下さい」
それが終わると、スタッフはそう言って来たので直ぐに言われた通りにした。…すると、スタッフは大きな『カメラ』を取り出しパシャリと撮影した。
『ー照合完了。ゴ本人ニ間違イアリマセン』
直後、カメラから電子音声が聞こえて来た。…おぉ~、随分とハイテクだな~。アンドロイドスタッフに加えて『これ』なら、スムーズにチェックが出来るだろう。
どうやら、『こういう時』のマニュアルもしっかりあるようだった。流石、連盟内で帝国国営放送局に次いで2番目のキャリアを持つテレビ局なだけはある。
「ありがとうございます。それでは、お進みください」
「はい」
そして、俺達はテーブルゾーンに近付き別のスタッフからナンバーカードを受け取りゾーン前方のブロックに向かった。
「ーふう。…いよいよですね」
「…ええ」
とりあえずシートに着いた俺達は、説明が始まるまでの間ゆっくりする事にした。まあ、『準備万端』だから余裕なのだ。
『ー…っ、マジか…』
『…ホントに、ルーキーなの?』
すると、またまた視線が集まって来た。…どうやら、俺達がギリギリまで『詰め込まない』のを見て驚愕しているようだ。しかしー。
『ー流石は-プレシャス-…といったところか』
『これは、油断出来ませんねぇ…』
集まる視線の中には、『称賛』や『警戒』といった物も含まれていた。…多分だが、『メインステージ』では彼らとバトルする事になるだろう。
『ーお待たせ致しました。それでは、-クイズショー・セカンドステージ-を始めたいと思います』
そうこうしている内に時間となり、スタッフがティーチャーデスクの前に立ちアナウンスを始める。
『まずは、ルールを説明します。…とは言っても、基本的にファーストステージと同じですが2つだけ追加事項があります。
ーカンニングを発見した場合、即座にチーム全員が失格となります』
『……』
まあ、当然だな。…今のところ、そういう事をしそうな奴はいないな。
俺は、それとなくライバル達の様子を探る。だが、落ち着いているか少し『嫌悪感』を示すかのどちらかだけだった。
多分、此処に集まっているのは純粋な『ヒストリーマニア』だけなのだろう。
『そして、もう1つ。他のチャレンジャーの迷惑となる行為…例えば、デスクを蹴ったり叩いたりだとかチェアを過度にずらしたりするのはご遠慮下さい。
万が一、そういった行為を発見した場合即刻会場より退場して頂きます』
『……』
おぉ、マジで『試験』だな。…まあ、傭兵チームや『バウンティハンター(賞金稼ぎ)』っぽいチームもチラホラ居るから、それ用の注意だろう。
けれど、彼らからはちょっと不満そうな気配を感じた。…どうやら、彼らは世間一般のイメージとは真逆の人達のようだ。
『ー以上で、ルール説明を終わります。
次に、今回のステージの-試験総監督-をご紹介致します』
すると、前方のドアが開き…アルファイド博士が会場に入って来た。まあ、適任だな。
『…っ!?』
『…ウソッ!?』
『マジかよ…』
俺は落ち着いていたが、ライバル達は『ビッグゲスト』の登場にざわめいた。
『ー初めてまして。ヒストリーサーチャー代表のフランツ=アルファイドと申します』
そんな中、博士は自然な様子でティーチャーデスクまで歩きその後ろに立つ。そして、手短に挨拶をした。…そういえば、たまにテレビやサイバーニュースで『調査報告』をしてたな。
それに比べれば、この状況は『大して緊張しない』のだろう。
『尚、こちらのアルファイド博士には-メインステージ-の問題作成にもご協力頂いております』
『ーっ!?』
スタッフの言葉に、会場はまたどよめいた。…マジか、メインステージでは『先生』が作った問題にチャレンジ出来るのか。
『…これは、ますます-負けられない-ね』
『絶対、通過するぞ』
『おおっ』
「ー…凄い。会場に『闘志』が満ちている」
すると、ライバル達も俄然やる気になった。当然、会場の空気が変わりミリアムは真剣な様子でそう言った。
「まあ、『連盟イチ』の『ヒストリーマニア』が作る問題だからな。『ベリーハード』なのは、間違いないだろう。
ーそして、『俺ら』はそういうのが大好物なのさ」
「なるほど。常に向上心と探求心を持っていると言う訳ですか。実に、素晴らしい」
『ーそれでは、カンニング防止のパーテーションを展開致しますのでご注意下さい』
そんなやり取りをしていると、スタッフからアナウンスが流れた。
ー直後、デスクに複数のパーテーションが展開した。そして、スタッフが手分けをして問題がインストールされたタブレットをチャレンジャー達に配布していく。
『ーそれでは、端末を起動して下さい』
それが終わると、スタッフが起動の許可を出したので俺はスイッチを押した。
『制限時間は、ファーストステージと同じく1ジャンル-50分-です。
それと、何かありましたら直ぐに挙手をお願いいたします』
最後に、スタッフは『ファーストステージ』と同様の注意事項を告げた。…そしてー。
『ーセカンドステージ開始まで、カウント10。
10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、0』
『-セカンドステージ-、スタート』
カウントダウンの後、博士のコールと共にセカンドステージは始まるのだったー。