『ーはいはーいっ!』
『どうしたの?』
『すみません、お待たせしました』
トラブル解決から2日後。俺は、ホテルのマイルームにてとある人達にコンタクトしていた。
「あ、お忙しいところすみません」
『あはは、大丈夫だよ~』
『今日は、ちょうどオフですから』
『今の時間フリーですので、お気になさらず』
その3人…『プレシャス』メンバーのマヤさんとノアさんとニールさんはニコニコしながら返して来た。どうやら、タイミングが良かったようだ。
『それで、どうしたんですか?』
『…確か、-お姉様-からの報告だと無事にメインステージに進めたんですよね?』
「ええ。
ーこれも、皆さんが『サポート』してくれたおかげです。『クイズチーム』を代表し、お礼を申し上げます」
…そう。メインステージを目前に控えた今日、なんとか3人にリハーサルの時のお礼が言いたかったのだ。
まあ、昨日『リーダー』としてもメールでお礼はしたが…やっぱり、『俺』自身が直接お礼を言うのが『スジ』ってもんだろう。
『…君って、真面目なんだね』
『私達とそんな変わらないのに、スッゴク礼儀正しいし…』
『…まあ、お役に立てたなら幸いです。
メインステージ、どうか頑張って下さい』
『君たちなら、絶対大丈夫だよ』
『陰ながら、応援してますね』
すると、3人はちょっと照れた様子で俺の評価をした。…そして、俺達にエールを送ってくれた。
「ありがとうございます。それでは、失礼します」
『はーい』
『うん』
『さようなら』
「…よし。お次はー」
そして、通信は切れ俺は別のところに通信をする。
『ーはい、どちら様…ってオリバーッ!?』
すると、『家族』であるカーリー従姉さんが出た。そして、俺だと分かった瞬間彼女は慌てふためく。
『そっちは大丈夫なのっ!?』
「大丈夫だよ。ニュースの通り、『無事』に解決さ」
『…良かった。なんか、-ヤバい兵器-が使われたって聞いてたから。…ホントは、直ぐにでも通信したかったんだけど、あの人に-忙しいからやめておけ。そもそも、頼りになる弟が現場に居るんだから大丈夫だ-って言われちゃって…今日まで我慢してたの』
「…流石、『兄さん』。ホントしっかりしてるな~。
まあ、実際昨日の夜までクソ忙しかったのは間違いないよ」
『…うっ。…それで、お義母様は?』
「勿論、伯母様も無事だよ。今は、ご友人のお見舞いに行ってる」
『劣勢』になった彼女は、話題を変えた。なので、情報を出す。
『…そっか。……』
すると、彼女は何か『納得が行かない』…といった顔をした。…あれ、何か『嫌な予感』がするな~?
『…ねぇ、オリバー。今、お義母様の様子って分かる?』
内心冷汗を流していると、彼女はピンポイントで伯母様の『機嫌』を聞いて来た。
「(ちょっと待って。セサアシスで初めて通信を介さずにコンタクトしたあの日、伯母様の機嫌は良かったハズだ。…いや、あれは『俺の前だったから』なのか?)
ーまあ、理不尽な『テロ』でご友人が体調を崩されたから少しピリピリしていたかな。でも今は、落ち着いているよ」
ふとそんな予想を立てつつ、事実を答えた。…勿論、だいぶ『ショートカット』しているが。
『…そ、そう。なら良いんだけど…。
…それじゃあ、クイズ番組頑張ってね。私はお義父さんや子供達と一緒に応援しているわ』
「ありがとう(そういえば、そろそろ2人は帰って来るシーズンだったな)。
ーじゃあ、『また会おう』ね」
『…自信満々ね。…まあ、楽しみにしてるわ』
俺の自信が伝わったのか、彼女は苦笑いしながら返すのだったー。
◯
ーSide『マダム』
「ー失礼します」
「…あ、シュザンヌさん。こんにちは」
「こんにちは」
ラバキアにようやく『フェスティバル』の前の空気が漂い始めた頃。シュザンヌは友人の元に来ていた。そこには、彼女の子供が居た。
「こんにちは。…具合はどうかしか?」
「先程ドクターに診察して頂いたのですが、もう大丈夫だそうです」
「…良かった。という事は、もうすぐ日常生活に戻れるのかしら?」
「はい。明日には、ホームに戻れます」
「あら、そうなの。……」
友人の言葉に、彼女はようやく安堵した。…そして、ふと『どうするか』悩んだ。
「…どうかされました?」
「……ねぇ、1つ『確認』したい事があるのだけれど」
「…はい?」
「…貴女は、『犯人』を知りたいかしら?」
「……え?」
「「………」」
けれど、彼女は意を決して『本題』を口に出した。…当然、友人と子供達はポカンとしてしまう。
「…は、『犯人』は例の反社会的勢力でしたよね?」
「確かに黒幕と実行犯はサーシェスカンパニーです。…けれど、連中をこの地に招き入れた人間が居るのですよ」
「…っ!そ、そんな人が……。……ー」
すると、友人は微かに顔を青くした。…それと同時に僅かな『可能性』が頭に浮かんだような顔をする。
「…やはり、心当たりがあったんですね?」
「…え?」
「…お母さん?」
それをみた彼女は、最後の確認を取る。するとその事を知らなかった子供達は、驚いた様子で母親を見た。
「………。……まさか、『あの人』が『契約者』なのですか?」
「ええ。
ー正確には、事件前に貴女と揉めた『彼』と貴女の2つ隣に座っていた『彼女』が、連中と契約した人間になります」
そして、友人は恐る恐る確認して来る。だから彼女は、正確な事実を述べた。
「………」
「…そんな、『たったそれだけの事』で例のカンパニーと契約し『あれだけの事』をやらかしたというのか?」
「…なんて、恐ろしい……」
その衝撃の事実に、友人は言葉を失った。そして、子供達は母親の心情を代弁するかのように怒りを見せたり、恐怖したりした。
「…まあ、ある意味でその2人も『被害者』と言えるでしょう。
ー何せ、彼と彼女は連中の生み出した『新型兵器』によって操られていたのですから」
「…っ!?」
「…え……」
「…そ、そんな……」
そんな時、彼女は少しだけ同情しながら真実を語る。…当然、3人は唖然とした。
「これは、トラブルを解決に導いた『プレシャス』の方…私の『家族』から聞いた話なのですが、どうやらその2人は契約の段階から連中によって『催眠状態』になっていたようです」
「「「……」」」
「…更に、連中は以前からあの2人のような『被験者』を探していたようでした。つまり、あの2人は『運悪く』連中の目に留まってしまったのです」
「…では、その2人は罪に問われる事はないのですか?」
「…残念ですが、あの2人が連中と『契約』したのは紛れもない事実です。例え、その裏側にどんな事情や理由があったとしても『ルール』を破った以上2人には相応の罰が下されるでしょう。
…もし見逃せば、いずれ連盟の平穏は『見せかけ』になってしまうのですから」
「「………」」
「……っ」
それを聞いて、子供達は唖然とした。…一方、友人は微かに震えていた。それは、恐らくー。
「ー貴女のせいではありませんよ。全ての原因は、連中に付け入る隙を見せたあの2人の心の弱さです」
「…っ」
そして、そんな友人の心情を正確に読み取った彼女は毅然とした表情を柔らかくし、フォローを入れた。
「それに、罰と言ってもそんなに厳しい内容ではありませんから」
「…え……」
「どうやら、連盟の民間人が『協力』していた場合その人物に重いペナルティを与える事しないそうです。
ただし、先程言ったように罰を与えなければいけないので…その人物には連盟のエージェント監視下の元、『慈善活動』と『注意喚起』に従事する事になっていると言っていました」
「……」
「「……」」
すると、友人はホッとした様子になる。だが子供達は、疑問の表情になる。
「…まあ、納得は難しいでしょう。実際、お母様がこうして入院してしまったのですから。
ですが、連盟はただ単に甘い判決を出したワケではないようです。
ー何せ『慈善活動』の内容は、地方惑星の人道的支援や新規の『都市惑星開発事業』のボランティア活動といったものまでありますから。
そして、同時にそういった環境の中で『注意喚起』もするのです」
「……え?」
「…マジですか?……」
「…なんか、その人達が可哀想になってきました」
あまりの『幅広さ』…いやハードな内容に友人は唖然とし、子供達はようやく納得したり同情したりするのだったー。