『ーおはようございますっ!』
『こちらへどうぞっ!』
そして、『メインステージ』当日。俺達チャレンジャーは決戦の舞台…ファロークスの所有するイベントホールに集っていた。
「ーあっ!おはようございますっ!『チーム・プレシャスノヴァ』の皆様ですねっ!」
『おはようございます』
「それでは、ウェイティングルームに案内させて頂きます」
『お願いします』
それから、担当スタッフの後に着いていきウェイティングルームに案内された。
「ー…ふう」
「いよいよですね」
とりあえず、ルームの中心にある複数人掛けのソファーに座りスタッフが来るまで寛ぐ事にする。…まあー。
「「「ー………」」」
俺と『指導役』達は落ち着いていたが、ランスター達と新入りはスッゴくソワソワしていた。
「…やれやれ。今から緊張してたら、本番はガチガチになるぞ」
「…いや、何で落ち着いてられるの?」
すると、弟は信じられないモノを見るような目で疑問を口にした。
「…おかしいな。『ポターランカップ』とかのデカいイベントに参加しているハズの君が、何でこんなに緊張してるんだ?」
「…だって、アレとかは基本ソロだしフィジカルメインだし。
ーそれに対して、今からやるのはチームでのチャレンジで知識バトルだから…」
俺も疑問を投げ掛けると、弟は理由を返す。…最後には、不安になっていた。
「…ああ、要するに『初めてだらけ』だから緊張してるのか。そして、『怖い』んだな?
ー『もしミスをしたら、どうしよう?それでチームが優勝出来なくなったらどうしよう?』
…ってか?」
「「「……っ」」」
ビンゴだったのか、弟とだけでなく姉も新入りも俯いてしまう。
「言っておくが、俺だって…多分ミリアムもエリゼ博士もこんなデカいステージで頭使うチーム戦やるのは初めてだ」
「ええ」
「そうですね」
「…え?」
「「…マジですか?」」
なので、俺達も『初めて』だと言った。当然、3人は驚く。
「当たり前だろ。
ー俺は、ちょっと前まで宇宙に出られない身体なうえファーマーや『色んな事』をやってたから『縁がなかった』」
「私も、アーツのトレーニングに人生を捧げるつもりでしたから興味もなかったですね」
「私は、仕事が忙しかったのもありますが…あんまり『進んで目立つ』性格ではないので」
「「「………」」」
それぞれがきちんとした理由を語ると、3人はポカンとした。
「…まあ、地元ではいろんなチームに所属はしていたな。例えば、ビーチバレークラブとか『対害獣駆除チーム』とか。
どっちも、些細な『ミス』がチームにデカい損失を与える事になる」
「私…というかナイヤチアーツでは、チームを組んでの団体戦がありますね。それと、この間のフェスティバルのように全体で演舞をする機会も割りとあります。
そして、当然『ミス』は許されません」
「…私の仕事も、割りとチームプレイが要求される場面がありますからね。
後、定期的にシンポジウムに参加したりするので『耐性』がついているんですよ。
まあ、仕事の『ミス』は勿論許されませんしシンポジウムでも無いほうが良いのは間違いないですね」
「「「……」」」
そして3人は、ただ呆然としていた。…多分、自分達とそんなに変わらない年齢の俺達が相当の場数を踏んでいる事に驚いているのだろう。
「まあ、要するに俺達は『慣れて』いるから平気なのさ。勿論、いざってタイミングで『ミス』しないように日頃からトレーニングをしたり、チームメンバーとの絆を深めたりしてるんだ」
「…っ」
「「…あ……」」
「ハッキリと言おう。
ー今までの『トレーニング』、それからファーストステージとセカンドステージを乗り越えた『俺達』なら、絶対メインステージをトップの成績でクリア出来る。
そして、俺達は『チーム』だ。…仮に、自分の担当がダメだったとしても後ろには『仲間』が居る。
まあ、だからといってわざと『ミス』するのはダメだが…全力でやった上で負けたなら、『カタキ』はちゃんと取ってやるよ」
「だから、気を張り過ぎないで下さい」
「集中する事も負けない事も大事ですが、全力を出す為に『心を落ち着ける事』が一番なんですから」
「「「……ー」」」
俺達の言葉に、緊張していた3人は顔を見合わせた。…そして、3人は深呼吸をする。
「「「ー……」」」
「…うん、ちょっとは落ち着いたみたいだな」
少しして、3人は普通の呼吸になった。その顔からは、ほんの少しだけ緊張が取れていた。
『ー失礼します』
「っ!どうぞ」
その時、インターフォンが起動した。確か、送れらて来たスケジュールだとー。
「ー間も無く、『リハーサル』が始まりますのでステージまでご案内致します」
「お願いします」
『お願いします』
そして、俺達は担当スタッフの言葉に従い速やかに会場へと向かった。
『ー…っ!』
『…フフフ。そうでなくてはね』
『ああ、最高に楽しみだ』
まあ、当然道中で『メインステージ』まで上って来たライバル達と出くわす。…彼らは皆、スタート前から『楽しそう』にしていた。
「ー…あ」
そして、その中にはウェスパルドさんと彼女みたく派手な衣装に身を包んだ4人の女子達も居た。
「…?……ー」
すると、彼女の様子の変化に気付いたメンバーがコソコソと問いかける。…うん、これは『アレ』だな。
「…あの、何か?」
内心で『対応』を決めていると、ジロジロとこちらを見る女子達にミリアムがやや鋭い声で聞く。
『…っ』
「…ミリアムさん、そのくらいに。別に彼女達は、『敵意』を向けて来ているワケではないんですよ?」
「…っ、すみません」
当然、女子達はビクッとしてしまった。…なので、直ぐに落ち着かせる。
「すみませんね、彼女『こういう場所』は初めてでして。…『好意以外の視線』には、警戒してしまうんですよ」
『……』
「ー…い、いえ、こちらこそメンバーが失礼しました」
そして、向こうのメンバーにもリーダーとして謝る。…すると、向こうのリーダーであるウェスパルドさんも謝って来た。
「…っ、すみませんでした」
「…ごめんなさい」
「…失礼しました」
「…謝罪致します」
すると、他のメンバーも直ぐに謝って来た。…なんか、凄いマトモな人達のようだ。多分、派手な装いはテレビ映えを狙ったモノだろう。
「……いや、あの、私こそ威圧してしまい申し訳ありませんでした」
そして、ミリアムも恐縮した様子で謝罪した。
これで、なんとか『トラブル』に発展するのは避けらただろう。
「…改めて、『初めてまして』。
チーム『プレシャスノヴァ』リーダーの、オリバー=ブライトと申します」
とりあえず、両チームの担当スタッフが困っていたので俺は直ぐに歩き出し彼女達の元に向かい、『初対面』を装いながら名乗る。
「…っ。…どうもご丁寧に。
『ヒストリーメイデンズ』リーダーの、ネリエル=ウェスパルドです」
すると、こちらの意図を瞬時に察した彼女は直ぐに合わせてくれた。…やっぱ、頭の回転が早いな。
そして、互いにスタッフの後に続きながら歩き出す。
『ーっ…』
『……』
…直後、互いのメンバーも慌てて着いてきた。
「いや、まさかあのラバキアの『クイズクイーン』や『クイズフォーリーダー』にお会い出来るとは思いませんでしたよ」
「…こちらこそ、あの『プレシャス』のメンバーにお会い出来て光栄です」
まず、互いの経歴とメンバーを称賛する。…そう、彼女の率いるチームのメンバーもかなりの『実力者』だったりする。
これはマジで、ハイレベルなイベントになるだろう。
「……っ。…ところで、貴方達はどうしてこのクイズショーに?」
その後はちょっと沈黙になるが、直ぐに彼女から質問して来た。
「(…仕方ない。ちょっとボカすか。)
ー何、簡単な事ですよ。…実は、『次』のポイントは『優勝賞品』のある惑星なんですよ」
「…っ!」
『……』
俺は、コソッと彼女に『表向きの目的』を告げる。当然、彼女や周りのメンバーはビックリした。
「…驚いた。でも、それなら『プレシャス』が参加してるのも納得です。
…ちなみに、私達の目的もシンプルです」
「…ほう?」
「私達は、より多くの人に『ヒストリー』を知って貰いたい。…だから、今回私達はチームを組んでこの大舞台にチャレンジしたんです」
「なるほど、『啓蒙』が目的という訳ですか。
ーいや、本当に貴女達は立派だ」
『……』
彼女やチームメンバーは、真っ直ぐな称賛にポカンとしてしまう。
「…それでは、一旦こちらでお待ち下さい」
そうこうしている内にステージ裏に着き、『リハーサル』が始まるのを待つのだったー。