『さあ、これで全選手リーチとなりましたっ!
ー…っ!?』
司会が興奮しながらアナウンスする中、『ラスト』に手を掛けているスンスー選手の方で動きがあった。
「ーやりますね」
「えぇ、まさか『あれ程』とは」
『それ』を見た司会は唖然とする。一方、俺と博士は感心していた。
『ーな、な、な、なんとっ!スンスー選手がガーディアンをぶっ飛ばしたっ!…い、一体何をしたんだっ!?』
「…いや、マジで『何』をしたんですか?」
司会はログを再生し、そして映し出された驚愕のムービーにガチ困惑していた。すると、同じくヒューバートも困惑しながら聞いてくる。
「『ゼロインパクト』。…要は、相手の懐に潜りこみ『ゼロ距離』でデカイ一撃を与えたんですよ。
ー彼女、相当な実力を持っていますよ」
「………」
『ーそ、そして、ミリアム選手に負けず劣らずのスピードでセントラルへリターンを開始しましたっ!…これは、もしかして……っ!』
司会とステージの『予想』が一致するなか、先にボックスに手を掛けていたジルバ選手達の前に『あの』ガーディアンが立ち塞がっていた。
『ああっとっ!ジルバ選手達の前にも-最強-のガーディアンが出現したっ!果たして、彼らはどんな攻略を見せてくれるのでしょうかっ!?
ーっ!ああ~っ!しかし遂にスンスーがセントラルに戻って来てしまいましたっ!
…それでは、ボールゥ~オープンッ!』
けれど、その時既にスンスー選手はセントラルに戻って来ていた。…なるほど、セーブしていたのか。
そして、クイーンチームの『ラストオープン』が始まる。…まあー。
『ーおぉっ!ラストのボールは、見事-アタリ-でしたっ!
それでは、クエスチョンッ』
やはり、スンスー選手はきちんと『アタリ』を持って来ていた。…それに、クエスチョンもマリー選手くらい実力者にはちょうど良いレベルと言えるだろう。
『ーさあ、お答下さいっ!』
『……-ネジマワシ-』
『……お見事っ!正解ですっ!
ーつまり、クイーンチームが1位通過となりましたっ!…よって、5クエスチョン正解分の50ポイントと1位ボーナスポイントの50ポイント…すなわち、100ポイントが加算されますっ!』
『ーきゃあああ~っ!』
『やったぁああああ~っ!』
司会は長くタメた後、正解のコールをした。…そして、その時点でクイーンチームの『勝ち』が決まった。
『クイーンチーム、ようやく-フルスロットル-となりましたっ!
さあ、次に通過出来るのはどのチームだっ!?
ーっ!おぉっ、リスタル選手とルーリー選手は果敢に攻めているぞっ!…しかし、ガーディアンは凄まじいスピードで回避しているのでなかなかヒットしないっ!
そして、ベテランチームは作戦を練っているのかなかなか動かないっ!』
そして、司会はフィールドの状況をアナウンスする。…ふむ。
「…なんか、『調整』されてませんか?」
「…確かに、そんな気がします」
すると、どうやら2人も同じ事に気付いた。
「…まあ、間違いないでしょう。
ー『あの人』なら、事前に『デヴァイサー』のデータを見ただけで『レベル』を変えれるでしょうから」
「……へ?…あ、あの『ご婦人』はそんな芸当が出来るのですか?」
「…というか、『あの方』だったんですね」
なので、俺は確信に近い予想を口にした。…当然、博士は驚く。そして、ヒューバートはそこで初めて『正体』に気付いた。
『おっとっ!そうこうしているうちに、ミリアム選手もラストに手を伸ばすっ!…っ!?』
そんななか、遂にミリアムもラストのボックスに手を掛けた。
ーそして直後、素早く距離を取り…今まで使わなかったフェンを構え『じっと』待つ。
『ミ、ミリアム選手、先程とは違い再度ボックスへアタックする事なく待っているっ!
ーまさか、彼女はガーディアンとバトルしたいのでしょうかっ!?』
「…やはり、その選択をしましたか」
「まあ、『こういう機会』はなかなかないですからね。…ただー」
司会の予想を、俺と博士は断言する。…なので俺は、予め仕込んでおいたコネクトガジェットを起動した。そして、小さな声で話す。
『ーミリアム。分かっているとは思うが、-ヒートアップ-するなよ』
『ーっ!』
すると、ウィンドウに移る『彼女』はビクッとした。…やれやれ。
『…そうだな。…もし、-クール-に攻略出来たら-あの人-との-リアルバトル-の場を設ける事を約束しよう』
俺は呆れつつ、『ご褒美』をチラつかせた。すると彼女はー。
『ーイエス・キャプテンッ!』
ものすごいスピードで、テキストメッセージを返して来た。…これでよし。
『おっとっ!遂にジルバ選手が仕掛け……え?』
そんな事をしている間に、フィールドでは動きが発生していた。…ワォ。
俺もそちらを見るが…司会が驚愕するのも無理ないと思う。
ー何故なら、ジルバ選手はゆっくりとした足取りでガーディアンに近いて行ったのだ。…そして、どういうワケかガーディアンはアクションを起こさず簡単に接近を許した。
『な、何が起きたんだっ!?ガーディアンはジルバ選手をあっさりと近けてしまったっ!?…っ!』
司会もガチで混乱するなか、ゼロ距離まで接近したジルバ選手はガーディアンに手を伸ばす。
当然、ガーディアンはそれを『攻撃』と判断し『対処』しようとするがー。
『ーうぉおおおっ!?』
「ー…どうなってんですか、この『フェスティバル』は…」
「…右に同じく……」
直後、ガーディアンは膝から崩れ落ちていた。
それを見たオーディエンスは驚愕し、メンバーは『猛者』が複数居る状況唖然としていた。
「…いや、同感ですね」
『ーっ!な、なんとジルバ選手片手であっさりとガーディアンを無力化したっ!?…まさかジルバ選手も、-アーツ-の使い手だったのかっ!?』
「ーあっ、やっと『思い出した』」
「…はい?」
「…まさか、ジルバ選手に『見覚え』があるんですか?」
その瞬間、俺はようやく『初対面』の時から感じていた『既視感』の正体にたどり着いた。
「…『見覚え』どころか、ハッキリと身体が覚えていますよ。
ーだって、『トレーニング中』散々負けて来たんですから」
「……っ!…そういえば、リーダーは『サイバートレーニング』でアーツトレーニングをしていたんでしたね。…つまり、『ファイター』の中にジルバ選手をトレースした相手も居たのですか……」
「…ええ。いや、何でこんな大事な事忘れていたんだろうな」
「「……」」
『ーな、なんということでしょうかっ!-古代知識-に一番詳しい人を決めるこのフェスティバルに、-古代由来-のアーツを身に付けた実力者が3人も参加するなんて、誰が予想出来たでしょうかっ!?
そして、-最後の1人-であるミリアム選手は現在激しい攻防を繰り広げておりますっ!』
司会の言う通り、彼女とガーディアンはガチのバトルをやっていた。…いや、本当美しいな。
改めて見る彼女の『舞』は、見る者に感動を与える。…それでいて、ガーディアンの猛攻をたやすく受け流しているのだから余計に魅せられる。
『おっ!リスタル選手、ガーディアンの武装の片方を撃ち抜き使用不可にしたっ!
一方、ルーリー選手はビームを-置いて-ボディにヒットさせたっ!』
一方、リスタル選手達もなかなかにアツい攻防を見せていた。
「…はあ、本当にレベルの高いライバル達ですね。
「…これは、次も気が抜けませんね」
「…ええー」
『ーっ!?ミ、ミリアム選手、隙を見てガーディアンの武装を叩き落としましたっ!…へ?』
俺達が改めて気を引き締めていると、ミリアムに動きがあった。…彼女は、一瞬出来た隙を見逃さず瞬時に間合いを詰めながらフェンを閉じ
、ガーディアンの手を凄まじい力で叩く。
すると、ハンドからトンファーは落ちた。しかし、ガーディアンはすかさずレッグも使って来た。
ーけれど、それをも予想していたミリアムは…『片手』でレッグを掴み、フェンでレッグを攻撃する。
『ーはぁあああ~っ!?』
勿論、ガーディアンは逃げようとするが…凄まじい『グリップ』と彼女自身の『パワー』によってガッチリとホールドされていたので、強烈な攻撃をモロに受けてしまった。
『ミ、ミリアム選手、ガーディアンのレッグに強力な攻撃を入れたっ!
し、しかも、今のでガーディアンのレッグは完全に-ブレイク-したようですっ!…あぁっ!?』
当然、ガーディアンはマトモに立っていられなくなり片膝をついてしまう。…そして、その絶好のチャンスを彼女が逃すハズもなくー。
『ーミリアム選手っ、ガーディアンのヘッドパーツを容赦なくアタックッ!…これはー』
『ーダメージ限界、強制停止シマス』
彼女の攻撃を受けたガーディアンは、そうアナウンスした後…そのまま倒れた。