『あぁっとっ!?まさか、ナチラ選手のみが-ハズレ-となってしまいましたっ!
ーでは、此処で解説をしましょう』
司会は残念な感じでアナウンスした後、解説を始める。…どうやら、今回は『その後』をやらないようだ。まあ、自社内で『弊社』って言葉は使わないだろうからな。
「ー…けど、なんでハンターチームは分からなかったんだろう?」
司会が解説する中、ふと弟は疑問を口にした。
「…多分だけど、『こういうジャンル』のホロムービーをあまり見てないんじゃないかな?」
「その可能性はありますね。…そして、これも予想ですが、恐らく『準備』が出来なかったのでしょう。
例えば、『これ系』が今回のイベントにより予約待ち状態になったか、そもそも自分達と『無縁』だったから…とかですかね?」
それに答えたのは、姉だった。だから、俺は同意し自分の予想も付け加える。
「…ありそうですね。正直、『これ系』ってあまり彼らのジョブと関わりなさそうですし」
「…だとすると、このセクションでは彼だけ相当の苦戦を強いられるでしょうね」
すると、ヒューバートも同意し抱いている自分の『イメージ』を口にする。そして、ミリアムはこの後の戦局を予想した。
『ー…という訳で、あの場面では-弊社-が正しいのです。
…さあ、3クエスチョンにして早くも衝撃の展開が発生しましたが、どんどん先に進みたいと思いますっ!』
そうこうしている内に解説は終わり、司会は進行を続ける。…すると、ステージ中央のセットに変化が起きる。
ー『そこ』は、見た所ミーティングルームのようだった。…という事は、『母親のターン』が続くのだろう。
『ー…-大事な通信-から時間は少し流れて、ついに-商談-が始まります』
『ーお待たせ致しました』
『ああ、ご足労頂きまして恐縮です』
すると、ナレーションが流れ先に母親がルームの中でスタンバイする。…そして、そこに取り引き先の人が入って来たー。
『ーキャアアア~ッ!』
『ウソォオオオ~ッ!』
『ー………』
直後、『その人物』を見たオーディエンスやライバル達は驚愕する。…勿論、俺達も唖然としていた。
『こんにちは、クルーガー社長』
『ええ、こんにちは。-マクシミリ-社長』
そんな状況の中、2人は仲良く握手を交わす。…そう、『相手の社長役』は最年少でプラチナランクになった『プレシャスメンバー』のエリィ
さんだったのだ。
「ー…な、なんで、エリィ先輩まで……」
少しして、ようやく復帰した姉は当然の疑問を口にする。…多分、オーディエンスやライバル達も同様の疑問を抱いている事だろう。
『ーでは、早速始めるとしましょうか?』
『ええ。…今後の世界にとって、極めて重要な-話し合い-を』
一方、2人は席に着き…なにやら真剣な雰囲気を醸し出しながら『商談』を始める。…おぉ、まさかエリィさんも『慣れ』があるとは。
もしかして、彼女も『経験者』なのかな?
『…まずは、こちらをご確認下さい』
そんな事を考えていると、相手の社長は厚みのある『何か』をテーブルに置いた。そして母親は、それを手に取り『確認』する。
『ー…なるほど。確かに確認しました』
ー…うわ、スゴイ技術だな。生で見ているハズなのに、『モノ』が見えない。
そして、母親は特徴的なアクションをしながら恐らく『資料』を確認し、テーブルに戻した。
『ーさあ、ここでクエスチョンッ!
相手の社長が渡した資料は、-どんなモノ-なのかお答え下さいっ!』
すると、そこでシーンが終わり司会が肝心の部分を発表する。…おぉ、マジか。
『ー……』
あまりの『レベル』の高さに、少し驚いた。…当然、代表達は揃ってメンバーとミーティングを始める。
「…すみませんが、知恵を化して下さい」
「勿論です。…とりあえず、博士の予想を聞かせて下さい」
「はい。…パッと頭に浮かんだのは、古代に良く使われていたとされる-ペーパーメディア(紙媒体)-です」
「…っ!」
「「…」」
俺の質問に、博士は自らの予想を口にした。すると、ミリアムとランスター達は驚く。
「(…いや、ホント良くモノを『再現』出来たよな……。)…良いですよ。後は、『フォルム』を解き明かすだけです」
「…っ。……そういえば、さっきマダムは特徴的なモーションをしていましたね」
勿論、俺も内心驚きつつ話しを続ける。…すると博士は、非常に良い所に気付いた。
「…あ、確かに。…えと、『こういう』感じだったかな?」
そして、弟は先程の女史のモーションを再現した。…それは、何かを『めくり上げる』ようなモーションだった。
「…っ!そうか、『アレ』は1つのモノではなく複数のペーパーメディアが重なっているんですね?」
「…となると、確認をラクにするために何らかの『策』があるハズです」
すると、メンバーは着実に『アンサー』へと進み出した。そしてー。
「ーっ!…思い出しました。
確か古代では、複数のペーパー資料を-ブック-のような1つのモノ…-バンチ(束)-にして保管していたんです」
味方のサポートを得た博士は、見事必要な記憶を『サルベージ』した。…恐らくこれも、ホロムービーから得た知識だろう。
「…へぇ。…ちなみに、どうやって見やすくしてたの?」
「…えっと、1ヶ所をクリップやホッチキスと呼ばれる金属質のアイテムでホールドさせているんです。…で、合ってますよね?」
「ええ、その通りです。
ーいやはや、それにしても流石です」
弟の疑問に、博士は思い出しながら答える。…けれど少し不安だったのかこちらに確認してきた。
勿論、俺は頷き称賛する。
「…っ。ありがとうございます。
ではー」
すると、博士は嬉しそうな反応をしてテーブルに戻った。
『ーおぉっ!?なんと、最初にリターンしたのはエリゼ選手だっ!…しかも、-余裕のスマイル-を浮かべながらアンサーを記入しているっ!』
どうやら、ウチのチームが真っ先にミーティングを終わらせたようだ。
『ーっ!?』
…しかも、博士のスマイルを『そういう風』に捉えた司会のアナウンスで、ほとんどのチームは焦りを見せる。更にー。
『ーそして、気付けばシンキングタイムもハーフになりましたっ!…さあ、残る4チームの内-2番手-でアンサーを記入するのは一体ドコなのでしょうかっ!?』
『ー…っ、~~っ!』
司会は、余計に焦らせるようなアナウンスを流した。…すると、各チームに動きが発生する。
ーなんと、ハンターチームがミーティングを打ち切り、ナチラ選手がテーブルにリターンしたのだ。…多分、確信の持てるアンサーが出ずに『ギャンブル』に出たのだろう。
『ーおぉっ!2番手は、ハンターチームのナチラ選手だっ!…しかし、少し自信がないように見受けられますが、大丈夫なのでしょうか?』
当然、司会はナチラ選手の様子をアナウンスしつつ不安そうなコメントをした。…さて、どうだろう?
『ーさあ、シンキングタイムも残り僅かとなりましたが…おっ!ちょうど3チームもミーティングが終わり、代表選手達がテーブルにリターンしましたっ!』
それから少しして、残りの3人がテーブルに戻りアンサーを記入していった。…そして、数10カウント後にシンキングタイムは終了した。
『シンキングタイム、終了~っ!
ーでは、皆さんのアンサーを一斉にオープンしましょうっ!』
すると、代表達のアンサーが会場中の一斉に表示される。…ああ、『やっぱり』か。
『あっと…、またしても、アンサーが2つに分かれてしまいました。
エリゼ選手達が-バンチ-とアンサーする中、ナチラ選手は-ノート-とアンサーしていますっ!
ー果たして、どちらが正しいのかっ!?』
『ー……』
司会がそんなアナウンスをする中、『後者』の応援団は…既に『諦め』のムードが充満していた。そしてー。
『ー正解は、-こちら-っ!』
司会のエアウィンドウに先程のシーンが映し出され…『モノ』を隠していた『モザイク』が消えていく。
ーそれは、紛れもなくペーパーメディアで構成された『バンチ』だった。
『ということで、正解は-バンチ-でしたっ!』
『ーおぉ~~~っ!』
『きゃああ~っ!』
『やった~~~っ!』
『良いぞぉ~~~っ!』
『…っしゃあああ~~っ!』
司会が正解を告げた直後、オーディエンスと4チームの応援団は歓声を上げた。…その一方でー。
『ー………』
ハンターチームの応援団は、最早リアクションすらしなかった。…いや、良く見るとハッキリと『失望』が浮かんでいた。