ーその後、つつがなく『エンディング』は進行し…俺が代表で『優勝賞品』を受け取った。
そして、俺達チャレンジャーは入場とは逆の順番でステージを後にした。
「ーおめでとうございます、皆さん」
その後、ウェイティングルームに戻り休憩しているとクルーガー女史とリンウェルさんが入って来た。
『ありがとうございます』
「…いやはや、本当にお見事でした。
ーこれで、-蒼の銀河-に眠る-手掛かり-をほぼ手中におさめたことになります」
「どうもです。
ー…ところで、クルーガー女史。1つ聞きたい事があるのですが」
機嫌良く告げる女史に、俺はゲーム中気になっていた事を聞いてみる。
「ああ、何故『私達』がアクターとして出演していたか…ですね。
ーリンウェル、説明を」
「はい、お姉様」
当然、女史は予想しており…後ろに控えているリンウェルさんに振る。すると、彼女は前に出て来た。
「では、私から経緯を説明させて頂きます。
ー実は、私達…キャプテンと私が『代役』を務める事になった原因は今回の『トラブル』が関係しているのです」
『ー…っ!』
「「……?」」
彼女の説明に、俺達は2パターンのリアクションをする。…まあ、ミリアムと博士は『知らなくても』無理ないか。
「オリバーさんやランスターの2人とかは知っているかと思いますが、『連盟』ではテロ対策として文明星系で『トラブル』が発生した場合
は、その星系とリンクしているハイパーレーンの通行制限するようになっているんです。
これは、その星系宙域に誤って民間の船が入ってこないようにする為と、『敵を逃がさない』ようにする目的。更に、『敵の増援』を防ぐ目的もあります」
「…な、なるほど」
「…凄いですね」
「…ですが、この措置は『解除』になかなかの時間が掛かるという弱点もあります」
感心する2人に、彼女は『弱点』の話をする。
「…え?」
「…どのくらいですか?」
「…確か、早くとも『事件解決』から3デイは掛かりますね」
「「…っ!」」
彼女の答えに、2人は驚愕する。…そうなんだよな~。この措置は、強力な反面『反動』が凄いんだよな~。当然、その間ハイパーレーンは規制状態だから流通や人の出入りに大きな影響が出る。それと、多分ー。
「ーそれと、もう1つ理由があります」
「「…え?」」
「「……?」」
すると、予想通り彼女は2つ目の理由を語り始めた。すると、メンバーは『1人』を除いて首を傾げる。
「…あの、もしかして-オフィス-が出演キャンセルを?」
その『1人』…ヒューバートは、自信ありげに確認する。
「…っ!その通りです」
「…あ、そうか。
ー『テロ』が起きた所に、大事なアクターを向かわせられませんよね」
すると、ミリアムも納得したように答えを先に出した。…まあ、当然の行動だよな。
「…いやはや、流石ですね」
「…本当、『頼りになる人達』が入ってくれて助かりますわ」
「恐縮です」
「…どうも」
一方、リンウェルさんと女史は驚きと感心が混ざったリアクションをする。それを受けたミリアムとヒューバートは、丁寧なお辞儀で返した。
「…話しを戻しますね。
ーそして、『前入り』していたミルディーヌさんからヘルプを受けて『経験』のあるお姉様と私が出演する事になったのです。…実は、元々
サプライズで応援しようとしていたのですがそれが功を奏したようです。
ー私からは、以上です」
「(…やっぱり、こっそり応援しようとしていたのか。)ありがとうございました」
『ありがとうございました』
最後に、リンウェルさんは補足をして説明を終えた。…そうか、ドレスデンさんはオファーがあったのか。
「ーさて、この星系でやるべき事はあと1つとなりました。
すなわち、『ファインドポイント』の調査になります」
『ーっ!』
すると、女史は手を叩き注目を集めた。そして『もう1つ』の用事を口にする。
「…まあ、今日は皆さんお疲れですから夜の内に『ボス』と私で『許可』を貰っておきますね」
『…っ、あ、ありがとうございます』
女史の言葉に、俺達は僅かなリアクションをしつつお礼を言った。…はあ、『代表』はツラいよ。
「それでは皆さん、今日は本当にお疲れ様でした」
「失礼します」
そして、女史とリンウェルさんはお辞儀をしてからルームを出て行った。
「…はあ。それじゃ、一旦ホテルに戻ろうか」
「はい。…あの、お疲れ様です」
「…頑張って」
「「「…宜しくお願いします」」」
直後、俺はため息を吐きながらメンバーに告げる。…すると、メンバーは少し申し訳なさそうに頭を下げで来た。
「まあ、これも『トップ』の務めだ」
俺は苦笑いを浮かべながら返し、先頭でルームを出る。
『ーっ!』
すると、偶然同じタイミングでルームを出たハンターチームと出くわす。…うわ、なんか気まずいな。
『……』
『……』
当然、行き先は同じなので俺達と彼らは少し離れて歩き出した。…すると、後ろから鋭い視線が複数飛んで来た。そのせいで、ミリアムや博士はピリピリしてしまい、ヒューバートはやや震え、ランスター達は居心地が悪そうにした。
「ー…やめろ、みっともない」
すると、リーダーのグレット氏がメンバーに注意した。…多分、彼だけはこちらに視線を向けていなかったのだろう。
「…今回の敗因は、『準備不足』と『慢心』が招いたものだ。大人しく、結果を受け入れるしかない」
『……っ』
彼の言葉に、メンバーは悔しそうにする。…それにしても、凄く良識のある人だな。
「…嫌な思いをさせたな。すまない」
「…いえ、お気になさらず」
すると、彼はこちらに謝罪してきたので俺は後ろを振り向きやんやりと返す。…その時、彼の顔を見たがかなり申し訳なさそうにしていた。
『ー…っ!』
それから少しして、エレベーター前にたどり着くと…先に出ていたベテランチームとも出くわす。
『……』
まあ、彼らは遥かに『大人』なのでこちらに視線を向けて来る事はなかった。…だがー。
「ー…お見事でした。流石は、『かの団体』が送り込んだ『ノヴァ』達です」
向こうのリーダーであるジェイド氏は、俺達を称賛する。
「ありがとうございます」
『ありがとうございます』
なので、俺達は素直にそれを受け入れ軽く頭を下げる。
「…今日は、本当に『良い日』だった。
ー『古代学』界隈の未来が明るいと、知れたのだから。
そして、自分達がまだまだ『スタディ不足』だと知る事が出来たのだから」
『……』
すると、ジェイド氏は心底嬉しいそうに感想を口に出す。…良く見ると、向こうのメンバーもまるで子供のような笑顔を浮かべていた。
ー…はあ、やっぱり『ベテラン』はスゲーな。
『ー下ニ参リマス』
彼らに敬意を抱いていると、地下パーキング行きのエレベーターが到着したので3チームで乗り込む。
そして、直ぐににパーキングに到着しそれぞれの送迎車に乗り込み出発を待つ。
『ー……』
それから数分後。エレベーターの方向から、どんよりした学生チームがやって来て俺達の乗る車の隣にある車に乗った。…その際、彼らの顔がチラリと見えたのだがー。
「ー……っ」
『……』
彼らの目は、赤く腫れていた。…多分、ルームで思い切り泣いたのだろう。
「ー5号車、了解。
お待たせしました。それでは、出発致します」
複雑な気持ちで待っていると、ドライバーが声を掛けて来た。…どうやら、クイーンチームは既に車に乗っていたようだ。多分、次の仕事があるのだろう。
そんな事を考えている内に、車はゆっくり動き始めるのだったー。