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カギ

「「ー失礼します」」

 ラバキア時間、午後19時。女史と俺はテレビ局の局長ルームを訪れていた。

「ようこそおいで下さいました。

 キャプテン・プラトー、マダム・クルーガー」

 すると、ルームオーナーの局長が1人で出迎えてくれた。…これは、事前にこちらから要請していたからだ。

「どうぞお掛け下さい」

「「ありがとうございます」」

 そして、局長はソファーに座るよう促して来たので女史と俺はお辞儀をして座る。

「まずは、『プレシャスノヴァ』の優勝おめでとうございます」

「どうも」

「恐縮ですわ」

 すると、局長は『若手チーム』の勝利を称賛してくれた。…どうやら、『ウチら』を応援してくれていたようだ。

「…そして、『身内』を救って頂き本当にありがとうございます」

 更に、局長は『トラブル』の事にも触れ…俺に深く頭を下げて来た。

「…私は、与えられた役割を果たしただけですから。

 それに、本当の意味で『身内殿』を助けたのはクルーガー女史の『ご友人』ですよ」

「確かに、そうですね。…『彼女』が来てくれて本当に良かったです」

 俺が『伯母様』の事を口にすると、女史は即座に同意してくれる。

「……。…それで、本日はどのようなご用件でお越しくださったのですか?」

 局長は、なにやら感心したような顔でこちらを見ていたが直ぐに『本題』を出して来た。


 ー実は、アポを取る際『局長に直接用件を話します』と言ったのだ。…まあ、テレビ局サイドも大きな恩がある『俺達』の頼みだから深く理由を聞かずに、アポを取り付けてくれたのだろう。

「…ストレートに申し上げます。

 ー我々に、『ファインドポイント』の調査許可を頂けないでしょうか?」

「…っ。…やはり、その件でしたか」

 すると局長は、神妙な顔をした。…まあ、『直接用件を話す』形にしたのは情報漏洩を避ける為にしたのだ。

 そして、局長は簡単に『予想』出来ただろうから約束してくれたのだろう。

「…勿論、『許可』しますとも。

 ーただ、出来れば『ちゃんとしたお礼』をしたいところですが…貴方は受け取ってはくれないのでしょうね」

「……」

 すると、局長は苦笑いを浮かべながら『お礼』の話をした。…当然、俺も苦笑いを浮かべる。

「…すみません。

 ー貴方の『立場』では、『我々』からは受け取れない決まりなのですよね」

「…ご理解、ありがとうございます」

「いえ…。

 それでは、『こちら』をー」

 そして局長は話を本題に戻し、胸ポケットからメタリックカラーの『小物ケース』を取り出した。そして、ケースを開き中身をこちらに見せる。…あれ?あの『小物』……っ!?

「………」

『ソレ』を見た瞬間、女史と俺は驚愕した。…何故なら『ソレ』はー。


「ーいやはや、流石は『かのデータノベル』の大ファンですね。…そうです。『コレ』はまさに、『現物』なのですよ」

 すると、局長も驚きつつ『証明』をした。…うわ、マジか。

「『ーそれは、実に不思議なフォルムをしたメタリックなカラーのモノだった。…これが古代の、キーなのだという。』

 まさか、『本物』をこの目にする日が来るとは思いもしませんでしたよ」

 テーブルの上に置かれたキーをガン見していると、隣に座る女史は『プレシャス』の該当部分を口に出した後、少し興奮する。

「…『コレ』を持って、このテレビ局の地下に向かってください」

「…っ!…あの、何も今渡して貰わなくとも」

「…これは、局長殿にとって大事なモノなのでは?」

 すると、局長はキーをこちらに差し出した。…それを見て、女史と俺は少し困惑する。

「…『コレ』の事を知っているのは、私と数名の幹部のみです。そして、明日は私とその数名はほぼ1日忙しいので案内と立ち会いが出来ないのですよ。

 ですので、申し訳ありませんが今日の内に『渡して』おきたいのです」

「…なるほど」

「……?…『貸し出し』ではなく、『渡して』おきたいとは?」

 それを聞いた女史は、納得した。…けれど、俺はふと『それ』が気になった。


「そのままの意味ですよ。

 ーどうか、そのキーを『受け取って』頂けますか?」

「「…っ!」」

 すると、局長はとんでもない事を頼んできた。当然、女史と俺はビックリする。

「実は、元々そのキーは『初代殿』から預かっていたモノなのですよ。ですから、正確に言うと『お返しします』…ですね」

「…『初代』が……」

「『シークレットエリア』…私の先祖が運営していた『ミュージアム』地下で『手掛かり』が発見された後、『彼』は『いずれ此処を調べに来るヤツの為に-キレイ-に保っておく必要がある。その為には、-意外なやり方-で守らなくてはならない』…と、提案したそうです。

 そして、『方法』として『このキー』と専用の『オープンシステム』を先祖に託してくれたのです」

「…初めて聞きました」

 局長の話を聞いた女史は、唖然としていた。多分、女史は参加していなかったのだろう。

「…では、調査の後はどうするのですか?」

「『今後のトラブル』を避ける為に、『埋めます』」

 俺は更に『後』の事を聞く。すると、局長はまたも驚く事を言った。

「随分と、思い切った決断をなさいましたね。

 …まあ、確かに『連中』が来ないともかぎりませんからね」

「……。…あの、最後に1つ良いですか?」

 当然、女史はまた驚き『おきうるトラブル』を口にする。勿論俺も驚いていたが…最後にどうしても、『聞いておきたい』事があったので挙手をした。


「何でしょう?」

「…どうしてこの星系は、『テロ』に対する備えの意識が強いのでしょうか?」

「…っ」

「…思えば、この星系に来た時からずっと気になっていたんです。

 ー『ファーストトラブル』の時の、防衛軍の通信ジャミング対策。また、通信タワーの局員の非常事マニュアル。その後の、テレビ局前での対応。

 その他にも、非常に『助かる』サポートをして頂けました。…そのおかげで、今回の『トラブル』も無事に解決に導けたのです。

 …一体、いつから『定期的にトレーニング』をするようになったのかとても気になります」

「…いやはや、本当に良く『観察』していますね。

 ーこれは、先代局長から聞いたのですが。

 …どうやら、『手掛かり』関係の『トラブル』がきっかけだったようです」

「…っ」

「…まさか、『連中』ですか?」

 局長の言葉に、女史はまたまた驚く。そして俺は、予想を口にした。

「いや、確か『外』から来た『タチの悪い』傭兵と聞いています」

 けれど、局長は即座に否定した。…いや、もしかすると『バック』に居た可能性はある。

「…つまりは、その『不届き者』達が悪辣な武力交渉をして来たのですね?」

「…っ、は、はい」

 すると、いつの間にか女史はピリピリとした雰囲気を纏っていた。…そのせいで、局長も俺も威圧されてしまう。

「(…女史がイチバン『嫌い』な連中だな。まあ当然、俺もだけど。)

 …マダム、落ち着いて下さい。きっと…いや確実にソイツらは、『初代』と居合わせた頼もしい『友人達』にボコボコにされています。

 ー…ですよね?」

「…っ!本当に、まるで『見ていた』ような的確な予想をしますね。

 …ええ、まさにその通りです」

「…っ!失礼致しました…」

 俺は直ぐに、女史を落ち着かせる為に予想を口にした。すると、局長は工程し…女史はハッとし申し訳なさそうにする。


「…では、キーは頂いていきます」

「ええ」

 そして、俺はキーをケースごと貰い持参したアタッシュケースに入れる。…良し。

「それでは、私達はこれにて失礼致します」

「失礼致します」

 それを確認した女史は立ち上がり、別れの挨拶をした。なので、俺もケースを持って立ち上がり後に続いた。

「ええ。…私と局員達は、貴方達の『目的』が達成される事を心より願っております」

 すると、最後に局長は『俺達』にエールを送ってくれた。

「「ありがとうございます」」

 なので、女史と俺は『代表』してお礼を述べてからルームを後にするのだったー。

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