「あ、初めての人が…、俺、高木良平って言います。結菜の幼馴染で塁の恋敵です」
「え、君も結菜ちゃんのこと好きなの?でも残念!結菜ちゃんは塁一筋だからね」
なぜか田村が自身ありげに言ったので良平も少し驚いていた。
「へえ、塁にもこんなに親しげな友達がいたんだね」
「ああ。中学からの友達だ」
累が答えるとなぜか良平は嬉しそうだった。
「恋敵ではあるけど、お前が頼れる友人もなく一人だったら、距離置くのとかキツイだろうって思ってたからさ。まあ、お前のこと思ってくれている人がいて安心したよ」
良平は心底安心したというように微笑んだ。
「君は本当に善良を絵に描いたような人物だね、俺もそうありたかった」
累は良平を羨ましむように見つめる。
「いや。俺なんて全然善良ではないよ。お前達が距離置くことになったと聞いて内心ガッツポーズしたからね」
(良平…まだ私のこと諦めてなかったんだ)
私は良平の言葉を聞いてギュッと胸が締め付けられた。ここまで思ってくれることに応えられないのが悲しい。でも累のことが好きだから応えられない。その気持ちに嘘はつけなかった。
「すごくストレートだね、君。俺、君みたいな人好きだなあ。せっかくだし友達にならない?LIME交換しようよ」
田村は良平のことが気に入ったらしくニコニコとスマホを取り出した。良平も田村には悪い感情を持っていないようで、スマホを取り出してLIMEを開いていた。
「なんか不思議な縁がどんどん広がってる気がする。最近忙しいなあ」
良平がぼやく。だがそれは決して嫌な感じではなく、楽しげに語っていたので私はほっとした。
(最近良平に色々負荷かけてたから…なんだか申し訳ないな)
「良平ごめんね、私が色々迷惑をかけて」
「いいよ。俺が好きでやってることだから」
良平は優しくいうと私の頭に手をそっと近づけて、ハッと思い直したようにその手を引っ込めて微笑んだ。
「でさ、今回の集まりはどういう趣旨なの?距離おいてるはずの累がいるってことはもうそれは解消されたっていう認識でいいのかな?」
良平がそういうと私は頷いた。
「実は英二さんが色々アドバイスしてくれて、仲直りの機会を作ってくれたの」
「へえ。英二くんいい人なんだな」
良平は心から関心したように言った。するとやはりちょっと赤面しながら英二がはにかむ。
「いやあ。俺は累を呼び出しただけだから。仲直りできたのは2人がお互いちゃんと話し合ったからだし…全然何もしてないよ」
「いや、まず会う気持ちにさせるのが難しいから。いい奴なんだね、英二くん」
褒められてむず痒そうにする英二が微笑ましくて笑顔になってしまう。累も同様で親友が褒められるのが嬉しかったようで穏やかな表情で微笑んでいた。
「ねえねえお腹すいたよ〜。早くお惣菜食べたい」
花がそういうので私は慌てて小皿や箸を配った。
「花ちゃん好き嫌いはある?」
「全然〜。何でも美味しくいただく派だから。このお惣菜の煮物おいしそ〜」
花はそういうと筑前煮を小皿に大量に取るとモリモリ食べ始めた。
「うっま!こんな美味しいの初めてかも。良平のお母さんすごいね!」
「筑前煮は得意料理だからな。しかし、お前一見偏食ぽく見えるのに何でも食べられるなんて意外だなあ」
良平が失礼なことを言ったが花は気にしていないようだった。
「まあね。友達にも驚かれるし。私の見た目って可愛いけど我儘そうでこだわり強くて偏食〜みたいな感じって自覚してるから」
「そこで自分のこと可愛いって言えるのすごいな」
良平は驚いていると花はふふんと笑って言った。
「客観的に見て私は可愛いから」
花はそう言って髪の毛をくるくると指に巻きつける。その仕草も可愛いかった。