「湿っぽいとピザが美味しく無くなるからバラエティでも見よ!」
花はそういうとテレビをつけてチャンネルを回す。するとちょうど人気のお笑い番組が放送されていたのでその明るい声を聞きながらみんなでピザを食べた。
「やっぱここのピザは耳まで美味しいよね。チーズが入ってるのがかなりポイント高い」
花はもぐもぐとピザを食べながら言った。
「うんうん。最後の一口まで美味しく食べられるから私もここが一番好きかも」
空気を変えようと努力してくれている花の気持ちを汲んで私も明るい声を出して答えた。
「花ちゃんやっぱ俺と付き合おうよ。ピザの耳みたいに味のある男だよ。俺は」
英二が軽い調子で言うと花は嫌そうな顔をしてしっしと手で払う。
「それだけは無理。今回のことでだいぶ見方が変わったけど恋愛対象ではないわ。見た目も好みじゃないし。私累みたいなシンプルな人が好きなの」
花はそう言うと、英二はがっくしと項垂れる。少し派手な見た目なのは自覚があるようで、ぶつぶつとなら見た目を変えてみるか〜とつぶやいていた。
「ふふ。花ちゃんは見た目より中身を重視するタイプでしょ?なんか、付き合っているうちにわかったよ」
「そうなの?あ〜だったら俺絶望的じゃん。デリカシーないしさあ」
英二は頭を抱える。自覚はあるけど直す気はないらしい。
「英二はね…それさえなければいいやつなんだけどね…」
花は英二の空気の読めなさとデリカシーのなさが本当に無理な様子だった。
それよりも花は良平に対して興味を持ったらしい。
「ねえねえ良平。LIME交換しようよ!振られたもの同士色々話したい事あるし」
「悪いけど今は誰とも繋がる気はないよ。しばらくのんびり自分の気持ちと向き合いたい気分なんだ」
あっさり断られても花は諦めない。
「花ちゃんはお兄ちゃんフェチなの?俺には全然靡いてくれないのは俺がお兄ちゃん属性じゃないから?」
英二がうちひしがれていると、花がバッサリと言った。
「あーお兄ちゃんは確かにポイント高いけど、英二の場合お兄ちゃん属性持ってても無理」
「ぐは!またまたバッサリかあ。悲しい」
「ふふ。英二さんも頑張るね」
笑っては申し訳ないと思ったけど。必死にアピールする英二さんが可愛くてつい笑ってしまった。すると英二はニカっと笑って言った。
「俺は諦めの悪い男だからね。しかも一途だよ。ずっと花ちゃんが振り向いてくれる日を待ってる」
優しい表情でそう言うと英二はお笑い番組を見てケラケラ笑い始めた。
私も見たけどお笑い番組は面白くてさっきまでのしっとりした雰囲気は暖かな食卓に変わっていた。
(花ちゃんに感謝だな。せっかくみんなでごはん食べてるんだから楽しく過ごしたいよね)
その後5人は笑い合いながらピザと惣菜を食べてシメのビールを飲んで解散になった。
「結菜お姉ちゃん!今度はお姉ちゃんの手作り料理食べさせてね」
「うん!いつでも遊びにきてね」
「ちょっと待って、今週末は空けておいて、デートに誘いたいから」
累が花と約束しようとしていたところを慌てて制してきた。
「え〜せっかく結菜お姉ちゃんの手料理を食べられると思ったのに〜。でもいいよ。私とはまた今度遊んでね!」
花は不満そうにしているけどあっさり身を引いた。
「どこか行きたいところがあるんですか?」
「うん。この後LIMEで連絡するから。花は英二が家近いよね?悪いけど送ってやってくれる?俺実家にはあまり近寄りたくなくて」
「もちろんいいよ。じゃあ行こうか花ちゃん」
「チェ。わかった。行こう英二」
花は英二について行った。
それを見送った私と累と良平も去り行く2人がうまく行くようにと願って解散したのだった。
『今日はありがとう。こうしてまたL IMEできるようになって嬉しい』
『私もだよ。また累と仲良くなれて嬉しい』
『今度こそ結菜のこと幸せにするから。だから信じてついてきて、おやすみ結菜』
『うん…、信じてるよ、累…おやすみ』
累は変わろうとしてくれていることが嬉しかった。きっと大丈夫。今度こそ幸せになれるはず。そう信じてLIMEを閉じた。