次の日、私は早速、愛花に累とのことを報告した。
「実はね、累と色々あって復縁することになったの」
「ふふ。そうなるだろうって思ってた。だって結菜は累さんのことかなり好きだもんね。今度こそ幸せになるんだよ?」
「うん!そ言ういえば愛花はどう?栄さんとうまくやってる?」
以前良平の友達である栄を紹介したきりその後を聞いていなかったので思い切って聞いてみると愛花は嬉しそうに微笑んだ。
「栄はすごく可愛くてもうラブラブだよ。ちょうど栄の家が契約更新時期だから一緒に住もうかって話になって。それならちゃんとしたいからってプロポーズされちゃった」
「えええ〜!すごいね!スピーディー!」
栄と愛花の決断力に驚いたが、2人は本当にお似合いのカップルなので応戦したいと思った。
「応援してる。2人とも幸せになってね」
「もちろん!栄はちゃんと仕事しているだけあって話も通じるし、もう子供のことも考えてくれていて、育休をとって育児してくれるんだって」
驚いた。栄は今まで不遇だったから愛花のような強い女性に出会えてもうこれ以上の人はないだろうと思ったらしいのだ。
「栄さんも愛花に出会えて本当に良かったよね。いいなあ。プロポーズ」
「でも累さんも考えてくれてるんじゃないの?まあまだ復縁したばかりだから早いか」
そう。まだ復縁したばかり。関係修復にはまだ時間がかかるだろう。こんな時にプロポーズされても私自身受けることができない。
「愛花はこのまま結婚するの?式は?」
「うーん。私ドレスとかに興味ないけど栄がドレス着て欲しいっていうから写真撮るので終わりにするつもりだよ」
「そっかあ。それもいいかもね。今はあまり派手に結婚式する人も少ないみたいだし」
「そうそう。ジミ婚ブーム。節約もしたいしね」
そう言って美味しそうなお弁当をもぐもぐ食べていた。
「あれ?なんだか今日のお弁当いつもより彩りが綺麗だね」
「失礼だなあ。いつもは栄養ガチガチのお弁当だったからああだったの。今日のは栄が作ったからこんななんだ」
「栄さん料理もできるの!?すごい!」
「そうなの。栄。一人暮らし長いから家事全般できちゃうんだって。仕事も家事もできるから、今は当番制にして半々で家事してるんだ」
「すごいなあ。今時のカップルの理想形だね」
そういえば累の家も綺麗だったから、きっと料理も掃除なんかの家事も得意なのだろうと思った。
(今度聞いてみようかな)
愛花の結婚話に触発されて累との今度についてちょっと考えてしまった。
私も仕事を辞めるつもりはないし、累は自宅でもできる仕事なのできっと育児も手伝ってくれるだろう。そうだといいなと思いながら残りのお弁当を食べた。
それからは仕事に忙殺されて疲れ切って会社を出たのは7時。黒沼が来てから雑務を押し付けられることがなくなって残業がほぼなくなって帰宅できるようになったのだ。黒沼に対して思うことはあるが、その点はすごく助かっている。
「泉川さん、今日は予定なかったらこれから飲みに行かない?」
立ち上がった瞬間後ろから声をかけられて私は驚いて振り向いた。
そこにはニコニコ顔の黒沼の姿があった。
「ごめんなさい。私は彼氏がいるのでサシ飲みはできません」
はっきりと断ると黒沼は驚いた顔をした。
「復縁したの?別れたって話だったのに、いつ?」
「それはプライベートなことなのでいえません」
黒沼は悪意はないのだろうけどグイグイ聞いてきて少し不快だった。
私は累しか興味がないのではっきり断っているのに、それでも迫ってくる黒沼のことをどうしたらいいのか分からず持て余していた。黒沼から離れてくれたら嬉しいのに。そんな気配もない。
「すみません。私が好きなのは累だけです。それは今度も変わりません。ずっとずっと累だけを愛し続けると決めているんです。だからもう…諦めてください」
「そっか…決意は固いんだね。でも俺も泉川さん以外とは結婚する気がないから。このままでは黒沼財閥の存続の危機だよ」
「知りません。私には関係のないことですから。失礼します」
なんとか黒沼を振り切って私は会社を後にした。