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第109話 アーンするとドキドキする

案の定累は私が制限した5個のものみのとスイーツを注文した。私はドリンクとケーキ2個。それも累が味見できるように別のものを頼んだ。


「結菜。俺に味見させようとして別の頼んだのでしょ?」


ズバリ言い当てられて私は苦笑した。累は私の考えなんてなんでもお見通しなのだろう。それ私のことを理解してもらえていたようで心地よかった。


「楽しみだね!それにしても内装可愛い。写真撮ってきてもいい?」


 ここは写真気をOKの店なので私は席を立って写真を収めていた。私は気づかなかったけどその隙を狙って別グループの女の子が累にはないかけていた。


「ねえねえ、お兄さん。私達と一緒に抜けない?連れの子地味だしつまんいでしょ?」


「化粧で顔を変えてる女に彼女のことをあれこれ言われることが耳障りだ。消えろ。これ以上彼女を侮辱するならお前らを許さない」


 私が席に戻ると女の子からぎろりと睨まれて私は身をすくめた。


「累、さっきの人たち?」


「ああ、逆ナン。もちろん結菜がいるから断ったよ。というより顔を塗り屈めて顔を変えてる女嫌いなんだよね」


 思い出すと確かに化粧が濃かった。私はどちらかといえばナチュラルメイク。累が好まない造形でないことがホッとした。


「お待たせしました。ご注文の品が乗り切れませんので、終わり次第また運んできますね」


 店員はそう言って机に乗るだけのケーキとドリンクを持ってきくれた。

 それはどれもSNS映えしそうで私は写真を撮って早速SN Sにアップした。


「おいいしそ〜!いただきます」


一口食べると甘酸っぱいカシスの風味で幸せな気分になる。 


「はい。累にもお裾分け」


 フォークを差し出すと累は躊躇なくそれを口にする、そしてパッと顔を輝かせる。


「美味しい!カシスの甘酸っぱさがムースに合ってて最高に美味しい」


「でしょ?これにして大正解!」


 そう言ってパクパク食べ進めていると累はケーキをひとすくいすると私に差し出しきた。


「結菜も味見して、ピスタチオ味。美味しいよ」


 ドキドキした。スプーンでアーンなんて恋人らしいこと。累には自然に出来ていたのだが反対になるとドキドキしてしまう。

 でも覚悟を決めてパクッと食いつくと濃厚なピスタチオ味のケーキが美味しくて恥ずかしさを忘れてしまった。


「美味しい!私この味好き!」


 だと思った。良かったら交換する?


 まだ二口しか食べってないケーキ。ちょっと申し訳ないけど嬉しい提案だった。


「じゃあお願いしようかな」


 私はまだ食べていないロールケーキとピスタチオのケーキを交換した。パクパク食べていると累がふっと吹き出した。


「どうしたの?」


「だって結菜が小動物みたいで可愛くて。ごめんね」


「もう!いいから累も食べて。店員さんも待ってるし」


 そういうと累は私の口の端についたクリームを掬ってペロリと食べてしまった。

 私が赤面するとピスタチオのケーキの残りを胃のなかに放り込んだ。

 ドリンクを飲むと累はすでに全てのケーキを食べ終えて残りのケーキをお願いしているところだった。私は喉が渇いていたので、まだ頼んでないドリンクを追加で注文した。


「ここいいね。可愛いし、食べ物美味しいし。たまたまニュースで知れて良かった」


「うん!期間限定だからもう来れないのが残念だけど、これか一緒にいいお店開拓していこう」


 そういうと累は泣きそうな嬉しそうな顔をして微笑んだ。きっと私の感情が戻って、累が私のそばにいられるのが嬉しいんだろう。私も累のそばにいて、こうしてケーキを食べてたわいないことを話して。幸せだった。もう二度と持つことが出来ないと諦めていた感情に私は感謝した。

 ここまでくるのにすごく時間がかかったけど、関係は少しずつ修復されている。そう思っているのはわたしだけかもしれないけど、それでも良かった、


「今ね。私どうしようもなく累のことが好きなの」


 そう告白すると累は優しく微笑む。


「知ってる。結菜の所作一つ一つ見ていたらわかったから」


「でもね。それ以上に俺が結菜のこと深く愛しているのを知って。もう逃さない。どこまでも一緒だからね」


 恥ずかしげもなく愛を語る累に私は赤面する。


「そういうのは家で…」


「どうして?始めたのは結菜だよ?」

「うう〜」


 軽く伝えただけなのに。累は意地悪く笑って残りのケーキを食べ終えるとさっさとコートを羽織った。


「並んでいる人がいるからもう行こうか」


 累はそういう気遣いができる人だからなお好きだった。お会計はまた累もち。自分が行きたくてきたんだからという理由で。私は累の好意を無碍に出来ず仕方なくその言葉に従った。


 外に出ると寒さで身が震える。累はそんな私の片手を握って自分のポケットに突っ込んだ。その温もりで心がぽかした。


 そのまま二人は特に目的もなく街をぶらつく。途中、いい雰囲気の雑貨屋さんに入ったり、累が好きなインテリアショップに入って家具などを見ていた。二人の間には会話も少なかったが、繋いだ手から伝わる温もりで満たされた時間を過ごした。


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