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第115話 違うのコスメなの

 私はあるコーナーで途方にくれていた。そこは避妊具を扱うコーナーなのだがなんとサイズや種類が多い。多すぎる。まさか店員さんに聞くわけにもいかず、私は相当悩んで普通サイズの薄めのものをカゴに放り込んだ。会計をしている間もずっとドキドキしていたが、店員さんは普通の顔をしてそれを生理用品を買う時みたいに紙袋に入れて隠してくれたのでほっとした。

(ああドキドキした。でもこれで安心)

 そう思いながら累と待ち合わせていた場所に行くと、累は既に車で待機してくれていた。


「ごめんね。ちょっと時間かかって」


「いいよ。献立に悩んでたの?」


 まさか避妊具のサイズが分からずに悩んでいたとは言えないので適当に誤魔化して、荷物は累の目に触れないように足元に置いた。


「今日はハンバーグを作ろうと思ってるの。累、好きだったよね?」


「うん。結菜のハンバーグ楽しみ。副菜は?」


「ポテトサラダかマカロニサラダで迷っていてどっちでも作れるように両方材料を買ってきたよ」


 そう言うと、累は悩まずマカロニサラダがいいと言った。子供の頃から好物で、お腹いっぱい食べたいから、作ったらボウルごと渡して欲しいとお願いされた。

(累って時々子供みたいなこと言うのが可愛い)

 私はそのお願いを了承して中にきゅうりと卵を入れて欲しいというお願いと人参もできれば入れて欲しいとお願いされて了承した。

(シリコンスチーマー持ってきておいてよかった)

  人参は茹でるより蒸すほうが栄養がとけださなくて体にいいし、時短になるので自炊する時は重宝しているアイテムだった。


「今日は家に着いてたらシャワー借りていいかな?ちょっと買い物してたら汗かいちゃって」


「そういえば今日は暖かいからね。ふふ。うっかりダウン着てきちゃったの?」


「そうなの!一度家から出てちょっと暑くなるかな〜って思ったけど約束の時間に遅れそうだったから。それに明日はまた冷えるらしいし」


 累は特に疑問を抱いていない様子で私はホッとする。まさか累と仲良ししたいからシャワーを先に浴びたいなんて恥ずかしすぎて言えない。


(ここまでして何もなかったらもう諦めよう。私に魅力が足りないってことで)

 グッと拳に力を込めると、計画遂行のためにも身体中ピカピカに磨いて思わず触りたくなる体になろうと決意した。


 家に着くと私と累は買ったものを冷蔵庫と野菜室に片付ける。その際、例の紙袋が累の手に渡ってしまった。


「結菜、これは?」


「ヒッ!これは…なんでもない!コスメ…そうコスメなの」


「そっか…わかった…」


 累は特に追及せずにその袋を返してくれた。私はそれを自分のカバンに押し込んでシャワーを浴びるためにお風呂セットを持って風呂場に向かった。

 頭から熱いお湯をかぶると少し冷静になれた。

(これから私は累を誘惑するんだ)

 なんと大胆な。そんなこと人生始まって初めての経験だからネットで色々検索して学習したが、どれもなかなかにハードルが高く、私には愛花からアドバイスされた抱きついてキスするのが限度だと思った。

 そんなことを考えているとお風呂の扉が控えめにノックされる。


「累?どうしたの?」


「結菜。髪の毛は俺が乾かしたいからドライヤー持ってダイニングで待ってるね」


 それだけ言うと累は脱衣所から出ていった。 

 やましいことを考えている最中に声をかけられたから声が裏返ってしまったが、おかしく思われなかっただろうか。不安になりながらも身体中、隅々まで綺麗に洗い、脱衣所で体をしっかり拭いてから勝負下着を身につけ、ホットパンツにボタン付きのトップスを着てダイニングに向かった。

 そこでは累がドライヤーを弄びながら待ってくれていた。


「累お待たせ」


「いいよ。じゃあ髪の毛乾かすから頭こっちに向けて」


 優しい手つきで髪の毛を乾かしてくれる累の手つきで私はうっとりとする。自分でやるときは結構適当にワシワシしてしまうけど、累は毛先からほぐすように優しく、髪が絡まないように丁寧にドライヤーで乾かしていってくれる。


「気持ちいい…」


そう言うと累は背後から私の背筋を指でなぞった。


「あっんん」


 思わず変な声が出て私は赤面して手で顔を隠した。


「結菜。今の声かわいいね…ねえ。もう一回聞かせて」


 累の中で何かスイッチが入ったようで背中をもう一度なぞられる。するとお腹の底からゾクゾクとした。


「んっはぁ…累やめ…て」


「結菜は敏感なんだね…かわいい」


累は後ろから私の体を抱きしめて首筋にキスをした。長い時間をかけて吸って舐めて甘噛みして、肌に赤い花びらのような印が刻まれた。

そうしながら私の服のボタンに手をかけて一つずつボタンを外していく。私の肌がはらりと顕になる。そのままソファでするのかと思っていたら累は私をお姫様抱っこして、私が買った避妊具の袋を持ってベッドルームに連れていってくれた。


「これ…俺のために買ってくれたんでしょ?」


 袋から避妊具を取り出して柔らかに微笑む累。私は恥ずかしくて顔を隠した。


「でもごめんね。俺の…普通サイズじゃ入らないんだ。結菜といつかこうなる日が来るって思っててから、海外から取り寄せてる。だから安心して。でも俺とこうなりたいって思ってくれてること…すごく嬉しかった」


 そう言うと累は私に初めて深いキスをした。


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