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第135話 コーヒー

しばらく待つと焼きたてのふわふわパンケーキが4種運ばれてきた。

 累はそれらを少しずつ取り皿に入れてくれた。


「ん!このベリーのパンケーキのベリーソースすっごく美味しい」


「本当だ!甘酸っぱくていいね。結菜いちご好きだろ?どーぞ」


 そう言って累はイチゴをフォークに刺して差し出してきたので、私は少し迷ったけどパクリとそれを口に運んだ。


 いちごは甘酸っぱくて美味しい。ニコニコ顔になった私を見て累は嬉しそうに微笑んでまた一つイチゴを刺して私の口元に運ぶ。


 そうして全てのイチゴを私に食べさせるとシロップをたっぷりかけてパンケーキを食べ始めた。

 累は食べるのが早いので私も慌てて取り分けてもらったパンケーキを食べすすめていく。明らかに私の方が少ないのに、先に食べ終えたのは累だった。


「累は相変わらず食べるの早いね」


「うん。美味しいと夢中になっちゃうんだよね。本当はもっとゆっくり味わいたいんだけど、性分だから仕方ない」


 累は甘くなった口をリセットするようにコーヒーを飲むと私がパンケーキを食べるのを頬杖をついて微笑みながら見守ってくれていた。


「?なあに?」


 私が不思議そうに聞くと累は微笑む。


「結菜が美味しそうに食べている顔見るの好きなんだ、可愛いから」


 私はその答えに赤面する。


「もう!そんなこと言われたら食べずらいじゃない。こっち見ないで!」


「だーめ。そう言われたらもっと見ちゃうよ」


 累はたまにこうやって私に意地悪をする。そんな時は本当に困るのだが、可愛い意地悪だからいつも許してしまう。

 私ははにかみながらパンケーキを食べ終えてコーヒーを飲むと累をじっと見つめた。その視線に気付いたのか累が首を傾げた。


「結菜どうしたの?」


「うん…累のこと好きだなって思って」


 私はしみじみと言った。感情がなくなってしまった時はどうなることかと思ったが、それが治った今、私と累を隔てるものは何もない。だから言える時に言っておきたいのだ。


「ふふ。また2人でお茶したり、一緒に散歩したり、夜は同じ布団で寝て、朝起きたらおはようが言えるんだよね。すごく幸せ」


 私がそう言うと累は私がゆっくり飲んでいたコーヒーをパッと奪うと一気に飲み干して無言で私の腕を引いてお会計を済ませ、車に乗り込んだ。


「累?」


「結菜はいつもそうだ。俺が我慢できない男になってしまうのは結菜のせいだからな」


 そう言うと車を家に走らせ、家に着くと荷物はそのままに累は私の手を引いて早足で歩く。ようやく累の部屋に一歩入ると累は私を強く抱きしめた。


「好きだよ結菜。大好きだ。こうして一緒にいられるの…幸せだよ」


 そう言って触れるだけの優しい口づけをした。


「私もだよ。累がいてくれたら他に何もいらない」


 私がそう言うと累はたまらなくなったようで今度は舌を絡め合う深い口付けを交わす。累の唇も舌もとろけそうなほど熱くて心地よい。私は溶けてしまいそうになりながらなんとかたっていた。すると累は私の靴を脱がせるとお姫様抱っこをして寝室に連れていくとそっと大切なものを置くようにベッドの上に寝かせた。


「結菜が欲しい。今すぐ」


「待って、せめてシャワーを浴びたいの」


「待てない。ああ。結菜の匂い。大好き。」


 累は私のスカートの隙間から手を差し込んで大切な場所を探し始めた。


「累…もう…私も累のこと大好きだよ」


 そう言って私も累を受け入れたのだった。


 部屋に静寂が戻り、私は累に抱かれて眠っていた。肌が触れ合っているので心地いい。少し汗ばんでいるのでしっとりと肌がひかれあうことが嬉しかった。


「累…すごく幸せ。こうして一緒にいられるの。嬉しい」


「それはお誘い?それともただの会話?」


 累は私の額にキスをして尋ねてくる。ここでお誘いといえばまた激しい運動をすることになるのだろうから私は笑って答えた。


「会話…累とはもっといっぱい会話したい。いつも言葉が足りずにすれ違っちゃったりしたから、なんでも話して解決したい」


「そっか。確かに俺達会話が足りないかもしれないね。もっといっぱいおしゃべりしよっか」


 累は私の頭を優しく撫でながらそう言ってくれる。


「その前にシャワーを浴びよう。一緒に行く?」


 累が言うと私は首を振った。なので累は私に先にシャワーを浴びてくるように言ってくれたので脱ぎ散らかした衣服を集めてシャワールームに向かった。熱いお湯で汗を流すとほっと一息つけた。先ほどまでの激しい行為のせいか少し痛むが気にするほどではなかった。


 そしてシャワーを終えて身支度を整えると寝室に累を呼びにいく。


「お待たせ。シャワーどうぞ」


「ありがとう。あ、コーヒー飲みたいから頼めるかな?」


「ホット?アイス?」


「アイスで」


 私はそれを聞くとキッチンに向かった。いつもの場所に豆が置かれているので其れをミルで轢いてペーパードリップでコーヒーを淹れていた。

 ふわりと香ばしい香りがして私はその香りを嗅ぐと心やすらいだ。

(早く累と飲みたいな)

 そう思いながらソファにコーヒーを運んで行った。


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