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第113話 マユ参戦

 今日の第一目標であるツノウサテイムができたので、ここからはLV上げだ!

 クラフトズはスリーマンセルで、私は聖弥くんのフォローをしつつ、ガンガンモンスを倒していく。


 30分ほど戦ったら、既にマユちゃんのLVが3になっていたので、ステータス上げを兼ねてマユちゃんも戦わせることに。


 マユちゃん、なんとLV3にしてHPは20あるし、STRも8まで上がった。マスターの寧々ちゃんよりも強くなってる。

 寧々ちゃんと須藤くんのLVもひとつ上がったし、同じフロアに他の班もいたから私たちは8層へ下りることにした。


 その途中でまた誰かの凄い悲鳴が――違う、あれ悲鳴じゃないや。

 イェエアアアアァ!! って感じの叫び声だ。

 なんでそれが悲鳴じゃないと判断したかというと、声の主が倉橋くんだったからだ。


 倉橋くんは私と同じく刀を使ってるし、A指定されたうちのひとりでもある。つまり、強い。初級ダンジョン7層なんてところで悲鳴上げるタイプでもない。


 うう、気になるけど、今はそっちに気を取られてちゃいけないね。

 後で本人に直接訊いてみよう。


 8層は7層と同じ森林エリアだ。敵も特に強くなるわけじゃない。

 ただ、7層と同じ強さの敵がでる分、7層でいっぱいいっぱいの戦力だと移動距離が伸びる分8層攻略はきつい。


 まあ、私たちは全然余裕なんだけどね! マユちゃんもいるから実質6人パーティーだし!


「マユちゃん、アタック!」


 寧々ちゃんの後ろに隠れていたマユちゃんが、化けキノコに向かって突撃していく。

 体は小さいけど、ミニアルミラージは動きが素早いしツノが鋭い。あいちゃんと須藤くんがショートソードでぶったたいていた化けキノコに、そのツノは易々とめりこんでいった。


 ツノは鋭いわ、刺さった方の化けキノコは柔らかいわ……。まあ、柔らかいけどその分HP高いんだよね、化けキノコ。

 3人+1匹でボコったらすぐ倒せるけども。


 化けキノコは小さな魔石を残して消えた。

 時々、ここでキノコドロップするらしいんだよね。エリンギっぽい奴。巷では「化けエリンギ」って呼ばれてる。毒はなくて、味はまんまエリンギらしい。

 今日は出なかったけど、エリンギたっぷり鍋とかやってみたいな。配信ウケしそう。


「ゆーちゃんってさ、余計なこと考えてるときすぐわかるよね」


 上から降ってきたヘビを嫌そうに避けつつ、あいちゃんが指摘してきた。


「うん! エリンギ鍋のことを考えてた!」

「さすやな……」


 須藤くん、言葉とは裏腹に「さすが」なんて絶対思ってないよね!?


「はいはい、さすやなー」

「さすやなー」

「なんかそれ、今日の合い言葉になってるけど、私的には『さすねね』だよ。なんでマユちゃんは寧々ちゃんの言うこと聞くの?」

「えっ……いや、テイマーになって改めて思うんだけど、なんでヤマトって柚香ちゃんの言うこと聞かないの?」


 ヘビの頭を刀でブッ刺しながら、曇りのない目で寧々ちゃんが私にとどめを刺してくるぅー!


「なんで……なんでヤマトは私の言うこと聞かないんだろうねぇぇ!」


 解せぬよ! と叫びながら、私は化けキノコを一刀両断にした。

 ううう、寧々ちゃんはさっきテイムしたばかりのマユちゃんに簡単にコマンド通してるのに、なんで私は成功率1割くらいなんだろうなあ。


 私に問題があるのか、ヤマトに問題があるのか、もしくは両方なのか。

 ほんっと、解せぬわ!



 2日目午後の成果は、寧々ちゃんと須藤くんがLV9に上がり、あいちゃんが10に、聖弥くんは11にとLVアップ。私は上がらなかった。

 マユちゃんもLV5まで上がったから、明日は寧々ちゃんと須藤くんがLV10になったところでLV上げはやめようということになった。


 寧々ちゃんも、マユちゃんを鍛えたいっていうしね。

 ツノウサって装備ができないから、人間に比べると攻防共に難があるけど、ステータス自体は悪くない。鍛えればある程度はマスターのLV上げのお供になってくれそう。


 少しだけ早めにダンジョンから出ると、大泉先生はマユちゃんを見て仰け反っていた。まさか、寧々ちゃんがテイムしてくるとは思わなかったんだろうね。

 テイマー用の厩舎が宿泊棟に隣接してあるから、マユちゃんはそこに預けることになった。食堂のおばさんから貰ってきた、キャベツの外側の葉っぱをバリバリと食べて元気そうである。よしよし。


「マユちゃん、夜は寂しいかもしれないけど、我慢しててね。明日おうちに連れて行ってあげるからね」

「ブッ」


 まるっとしたマユちゃんを撫でながら寧々ちゃんが語りかけると、ちゃんと理解してるらしくて返事が返ってくる。

 モンスターはテイムされると知能が上がるんだよね。いや、元々ある程度の知能はあるらしいんだけど、人間を攻撃することしか考えてないから発揮されないのか。


 テイムされて、マスターができるとマスターを守ることを第一に考えるようになるみたいで、途端に行動指針が変わる。

 今日見てた感じ、マユちゃんは「自分は弱い」って自覚があるみたいだった。

 野生のモンスはとにかくこっちに攻撃してくるのに、マユちゃんは敵を見てもすぐに突っ込んでいかなかったから。


 最初に寧々ちゃんが「私から離れないでね。他のモンスに攻撃しなくてもいいから、危なくないようにしててね」って言ったせいなのか、基本は寧々ちゃんの後ろにいて、攻撃コマンドを出されたときだけ戦ってる。


 今後ステータスが上がると、もしかすると行動が変わってくるのかもしれない。ちょっと楽しみだな。


 そんなことを考えつつ、マユちゃんをモフり倒して厩舎から出たら、倉橋くんが先生にお説教されていた。


「倉橋くんが怒られてるの初めて見たよ」

「ほんとだー。なんかやらかしたのかな」


 須藤くんと聖弥くんは厩舎に入る前に別れたので、女子3人でそんな事を言いながら近くを通ろうとしたら――。


「柳川! 柳川って刀曲がらない!?」


 なんか焦った様子の倉橋くんが、先生に懇々とお説教をされながらも私に必死な顔で手を伸ばしてくる。


 えー。

 私って、刀曲げると思われてるんですかー……。

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