「安永くんのお母さん? ええと、このまま話しちゃっていいのかな?」
突然の涼子さんの乱入に寧々ちゃんは戸惑っている! そりゃそうだよね、寧々ちゃんは涼子さんが週に何回もうちに来てるとか知らないんだし。
「あ、私のことは気にしないで。ヤマトちゃんと遊んでるから!」
犬好きの犬アレルギー、さすがの犬の扱い……涼子さんにロープの引っ張りっこで遊んでもらって、ヤマトはとっても楽しそう。
なんというか、涼子さんの「こうと決めたら一直線」的なところが蓮に似てるんだよねえ。
お刀ミュージカルに対するのめり込み具合も似てたし。
涼子さんの返事を聞いて、寧々ちゃんは改めて私たちに説明を始めた。
「ええとね、特定の武器のクラフトなんだけど、DEXを上げただけでは出なかったんだ。それで、DEXが上がったことで出た武器と防具のレシピを全部取得していったら、最後に『カスタムクラフト』っていうのが出てきたの」
「ああ、なるほど、もしかするとアイテムと防具とかでもいけるかも知れないね」
「そうそう。私の予測だと、『2系統のクラフトレシピ全取得』が条件なんじゃないかと思う。それでね、こういう画面が出てくるんだ」
寧々ちゃんは自分のステータス画面からクラフト画面に切り替えて、「カスタムクラフト」というタブを押した。
ほほう……作りたいアイテムの名前や形状、特記事項とか使用金属、ステータス割り振りまで全部自分で指定できるようになってるんだ。これは、凄い!
「そっか、ロンギヌスだったら『キリストが
横からひょいと画面を覗き込んだママがうんうんと頷いてる。安定の詳しさですね。
「じゃあ、形状は剣を選択して、名前のところに
そこはやっぱり使用者になる彩花ちゃんに訊いてみないとと思ってLIMEしたら、即座に「STRとAGIに半分ずつ振っといて」って殺意の高い返事が返ってきた。
わあ……もうMAGとか全部捨ててるんだね、ミスリルなのに。
多分、草薙剣の方はそれなりにバランス良く付いてるんじゃないかと思うんだけど、彩花ちゃんから別枠のHPとMPについては指定がなかったから、「HP全振り&STRとAGIに半分ずつ」というステ振りを入力。
「ここが問題だね、説明文」
入力をしていた寧々ちゃんの手が止まる。私はその手に自分の手を重ねた。
「大丈夫だよ、寧々ちゃんに責任負わせたりしないから。ここはこっちで考える」
「そうそう、腹黒四天王もいるから心配要らないからね」
颯姫さんとタイムさんがにやりと笑った。わあ、頼もしい……。
「日本神話に詳しいのは藤さんかな?」
「いや、ここはじっくり考えることができるから、調べながら書いても問題ないよ。……えーと、
「後半要らないんじゃない? そこで神様が生まれでもしたら大問題よ」
腹黒四天王のひとりであるママも、マユちゃんを抱えたままで颯姫さんのメモ書きに意見を挟む。
「そう考えると最初の方も要らないかも? 『
うーん、シンプルだなあ。でも、確かに変に条件が付くのはまずいよね。神を殺した剣という謂れが付けばいいだけだし。
「じゃあ、それで行きます」
寧々ちゃんが緊張した面持ちでアプリに説明文を入力していく。そして、カスタムクラフトの画面で項目をひとつずつ指差しながら確認していった。
「全部埋まりました。金属はミスリルで間違いないんだよね?」
「うん、ミスリルだよ。今回はそんなにステータス補正付ける必要ないと思ったし、伝説金属の中では一番安いしね」
まあ、それでも5キロも買うと数百万するんですけどもね。
全部が終わったら材料変換して売り払っちゃってもいいし。神殺しの武器だとマニアが買いそうな感じもある。
私がテーブルにミスリルを出すと、寧々ちゃんがその前に座った。
「カスタムクラフト。作成、
すう、と息を吸ってから、寧々ちゃんは集中してミスリルに手をかざした。ミスリルは一瞬で光り、古びた形の輝く剣に変化する。――クラフトって、いつ見ても凄い!
「柚香ちゃん、鑑定してみて」
「う、うん」
凄いなあ、ステータスが上がったから一瞬なんだ。私は慌ててスマホを取り出してダンジョンアプリで剣を鑑定した。
「いや、凄い神気……鑑定しなくてもわかるっていうか」
颯姫さんが剣を見つめて呟く。確かに私にも少しわかるくらい、神々しい気が剣からあふれ出している。
「【
「よかったぁ……」
私が
「これで、撫子を倒せるんだな」
蓮が感慨深げに
神を殺せる武器なら、神様判定されてる撫子を殺せるんじゃないかって、そういう推測が前提となってるからね。
これが効かなかったら、しばらくはお手上げかな……。
「じゃあ、来週配信ね、決着つけましょう。マナ溜まりもなくて海もない、ゆ~かちゃんにとっての危険要素がないダンジョンの候補を選出して置くわ」
「お願いします」
颯姫さんの力強いバックアップに私は頷いた。
来週か……そこで、全部の決着が付いて欲しいな。