焼きたてふわふわフレンチトーストにメープルシロップを掛けて、カリカリベーコンを載せてナイフで切って一緒に口の中へ。うーん、この甘みとしょっぱさのコンボが最高!
「美味しーい! 颯姫さんってお料理上手ですね」
ライトさんやタイムさんは先に食べていたらしくて、山盛りフレンチトーストは「私たち専用」としてどんどん高校生のお腹に消えていく。
聖弥くんは甘い物オンリーの食事って苦手らしいけど、私と同じくベーコンを載せて食べてる。蓮は甘い物だけでもいけるから、控えめにメープルシロップを掛けてるね。
ママはそんなに動いてないせいか、食パン1枚分くらいのフレンチトーストとサラダを食べた後はのんびりコーヒーを飲んでて、彩花ちゃんは「虫か」っていうくらいに蜂蜜を掛けて、砂糖の入っていないミルクティーをガブ飲みしながら幸せそうに食べている。
あー、うん。そういえば小碓王も甘い物は好きだったなあ。甘味っていうと果物くらいしかなかったから、当時は貴重だったしね。私ももちろん好きだったから何も言えないか。
「うん、これが俺の中の正しいJK像だよ」
何故か激甘フレンチトーストを食べる彩花ちゃんを、感慨深そうにバス屋さんが見てたりして。後で刺されても知らないぞう?
「バス屋さん、どういう高校生活を送ってきたんです? 女子はエグい生き物ですよ」
心の中に男性視点を持つ女子であるところの彩花ちゃんが、フォークをバス屋さんに向けながら尋ねている。
「俺? んー、高校は女子が少なくて、俺理系だったから特に2.3年の時はクラスに女子がほんの少しいるだけか全くいないかって感じ。大学も工学部だったからまた女子は少なかったし、2年で中退しちゃったからなあ」
「まさかの理系で工学部……」
愕然と呟いた彩花ちゃんに、颯姫さんとタイムさんとライトさんが同時に笑った。
「全員同じ反応したのよー。このバカっぽいバス屋がまさか高偏差値の大学行ってたとは思わないじゃない?」
「いや、姫も成績の良さと頭の良さは違うんだってわかってるだろ。……頭のいい奴はあんな都市構成にはしないし、少しは防衛兵も残しておくもんだよ」
「なんの話です?」
都市構成に防衛兵って……ダンジョンの話じゃないよね。
「僕とライトさんが藤さんと知り合ったゲームでね。藤さんは鬼課金で恐ろしく強かったんだよ。どっからその金出してるのって聞いたらダンジョンって言われて誘われて、現在に至るってわけ」
「お金を見せびらかしてダンジョンに勧誘するって手を使ってたの。まあ、何人もそれで一緒に戦ってきたけどライトさんとタイムさんしか最終的には残らなくてね」
「おお……新手の勧誘方法を知りました」
掲示板とかでパーティーメンバー勧誘してるとかは話聞いたことあったけどね。
「ゲーム内でも一緒に戦ってたから、非常時にどういう行動を取る人なのか、普段のひととなりはどうなのか、戦術を扱える人か、そういうところまで見られたしね。……で、バス屋が加入後にゲームに誘ってみたら、拠点運営が酷すぎて、サブマスターに設定されてた私とライトさんが泣きながら何度も修正する羽目になったの」
「てへっ☆」
うーん、チャラいイケメンはてへぺろが似合うなあ……。でもこれは一切反省が見られないてへぺろだ。案の定怒った颯姫さんの肘打ちがバス屋さんのみぞおちに入り、私たちはそれを「そろそろ見慣れてきたな」と思いながら昼食を終えた。
昼食の後は、私だけシャワーを浴びて少しお昼寝。ポーションは既に飲んじゃったから、疲労回復手段がこれしかないんだよね。
でも、程良い硬さのマットレスが使われてるベッドは寝心地が良くて、快適……。すぐに私は、眠りに落ちていった。
1時間半後に目を覚ましてから、今度は私たちはポータルを使って20層へ行くことになった。
ライトニング・グロウが今攻略してるのは70層だそうなんだけど、そこにいきなり行けば経験値的には美味しいけども私たちの強さが完全に追いつかない。下手すると命の危険がある。
さすがにそれはまずいって事で、20層で様子を見ることになったのだ。同行するのはバス屋さん。なんか心配のある人選だけど、強いことに関しては間違いないもんね。
「確認よ。目標は22層の攻略。今度はユズだけじゃなくて全員で戦うわ。手加減不要よ、暴れまくれ!」
ママがライブの煽り文句みたいに目標確認をした。いやー、いわれなくても暴れるけど、ちょっとママと彩花ちゃんが怖いな!
20層からは私だけでなく全員で戦うし、私も村雨丸解禁だ。
敵を倒すときとか楽になってるからLV上がってるんだなって実感はあるんだけど、村雨丸を持ったときどこまで20層の敵に通用するかはちょっと疑問。
聖弥くんが全員にラピッドブーストとパワーブースト、蓮にはマジックブーストを掛けてフロアに降り立つ。
ここは……海エリアか。うーん、本来水の中にいるはずのモンスターが地面でビチビチしてる。
「まず敵の強さを計らないとね」
打ち上げられたチョウチンアンコウみたいなモンスターに向かってママが鞭を振るう。叩きつけられた棘がモンスターに食い込んで、鞭を戻す動きでそのままモンスターごと巻き取られて宙を舞い、別の場所に思いっきり叩きつけている。
「エグぅ……」
「ヒャッハー! 叩き放題じゃん!」
ママにドン引きしてるバス屋さんを無視し、彩花ちゃんは草薙剣で魚型モンスターをブッ刺しまくる。蓮と聖弥くんはちょっとそれを引いた目で見ていた。うん、戦闘民族だもんね、女性陣って。――私も含むか!
「いや、戦わないとしょうがないんだよ! やろう!」
村雨丸を抜いて走る。ミニクラーケンがいるから、まずあれがどれだけ斬れるか試してみよう!
「イエエエエェェェ!」
イカとしては破格に大きい胴体を村雨丸で斬り付けると、半分くらいまで斬れた。暴れられるとその長い腕が危ないから、すぐさま2撃目を入れて完全に両断する。――うん、戦える!
「ウインドカッター! いけるな、初級魔法で一応倒せる。よし、一気に片付けてやる!」
「待避待避ー!」
蓮が「一気に片付ける」って言ったから、私たちは慌てて聖弥くんの後ろに隠れた。聖弥くんは蓮から見て後ろになる場所でプリトウェンを構えている。背の高いバス屋さんが一番後ろでしゃがんだけど、慌てて蓮が振り返って弁明する。
「いや、さすがにここで氷コンボは使わないから! スパークスフィア!」
海エリアのモンスターは共通して雷が弱点だ。フル装備の上にマジックブーストが掛かった蓮の上級魔法で、敵がどんどん減っていく。
「あっちは蓮に任せて、こっちの敵は私たちで倒そう」
「了解!」
敵の大半は蓮が倒すことになったけど、効率は上がる。
アポイタカラを見つけなかったら、こういう感じに地道な戦闘が続いていたんだろうなあと思いながら、私たちは1時間ほどで3フロアを攻略した。
「ふう……」
22層の敵を倒し終わって、村雨丸を振る。これは血振りと言って刃に付いた血を払う動作なんだけど――。
「うわああっ!?」
突然蓮が悲鳴を上げた。私の持ってる村雨丸から勢いよく水が噴き出して、それを思いっきり被る位置に蓮がいたのだ。不憫なことに。
「え? ええっ?」
「柚香、魔力、魔力止めろ!」
「止め方わからなーい!」
「丹田を意識しろ! 巡ってる気を体内に留めて、村雨丸まで回さないようにイメージして」
慌てながらも意識を切り替えて自分の中だけを気が巡るイメージを強く持つと、村雨丸が放水を止めた。
金沢さんのところで村雨丸を作ってもらったとき、蓮がやっぱりこんな感じに村雨丸から水を噴き出させちゃったことがあった。
でも今のは、その時よりも水量が多い!
それって私の魔力が当時の蓮よりも上がってることを示してるんだけど……あり得るの? 魔力の指輪は確かに装備してるけどさあ!
でも、でも魔力が上がってるのは間違いないことで。
力や素早さは、今までのことがあった分、段階的に上がっても実感しにくかった。
突然おそらく前回とは破格に違う成長率を見せた魔力のおかげで、LVが上がってるんだっていうのがじわじわ嬉しさに繋がっていく。
ヤマト、まだ特訓1日目だけど、私確実にLV 上がってるよ。
絶対迎えに行くから、待ってて。