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第395話 欠けてはいけない重大なピースは私かよ!

 おおっ!? 今までダンジョンで一緒に戦ったことないから知らなかったけど、金子くんは意外にもテクニシャンだ!

 さすがクラフト。力で倒すんじゃなくて工夫で倒してる。あいちゃんや寧々ちゃんの方が余程パワーファイターだよ。


「須藤ー、麻痺させ続けて。片っ端からマッドゴーレムは麻痺させよう」

「了解」

「俺はデストード倒すぜ! うあっち! うっぎゃー!」


 ……さっき焼成した煉瓦マッドゴーレムに刺さってた斧を持って、中森くんが火傷してる! ば、バカなの!? いや、バカだった! 知ってた!


「その斧熱くなってるって気づかなかったの!? ヒール!」

「気づかなかったから持ったんだよ! 柳川サンキュー」

「中森って、全てを犠牲にして筋力に全振りされてるんだな」

「なのに由井にもSTR負けてるって不憫すぎる」


 明るく素直なバカこと中森くん、クラフトのふたりに言われ放題だ。


「でもさー。マッドゴーレム焼いて硬くするとかよく思いついたよね」

「あれね、前に彩花ちゃんが言い出して試したことがあったの。ファイアーボールだと普通に倒しちゃうから、ファイアーウォールでやるのがコツなんだよね」

「……長谷部発案なんだ」


 須藤くんがちょっと私の「マッドゴーレム焼成」のことを褒めてくれたので、それは私のアイディアじゃないと訂正しておく。


「ちなみに、トレントの葉っぱ攻撃をダイアウルフの群れで防いだこともあるから、金子くんと彩花ちゃんは発想が似てるかも」

「凄え、褒められてるのか微妙な気分になる言葉」

「長谷部みたいって戦闘においては最高の褒め言葉じゃねえ?」

「中森は黙ってろ」


 金子くん、辛辣だなあ。教室にいるときと雰囲気違う。


 マッドゴーレムは焼き固めたから室伏くんでも中森くんでも倒せるようになったし、金子くんがトリッキーな動きで自分からの攻撃はせずにモンスターを同士討ちさせ、須藤くんが全体を見てこっちに攻撃を仕掛けられる距離にいるモンスターから優先的に麻痺させている。


 うん、どうなるかと思ったけど、まともにそれぞれが機能すればかなり強い。戦闘専攻のふたりは純粋に力で倒せるし、戦闘向きのステータスじゃないクラフトのふたりはそれを補う頭を使った戦い方ができてる。


「凄い凄い! LV以上に強いよ! これ、私がいなくても普通に活躍できるやつじゃーん! 金子くんがこんなに戦えるなんて知らなかった! スキップはできなかったのにね!」


 去年の体育祭練習中の「スキップ特訓事件」のことを持ち出すと、金子くんはげっそりしながらため息をついた。


「それ忘れろよー。あと、戦うの面倒くさい。ドラゴンの鱗は欲しいけど」


 なんと! 戦うのが面倒くさい!?

 もしかして初期の初心者向け装備の延長線上にあるショートソード+バックラーの戦闘スタイルは、他の武器を扱うのが面倒だったからなの!?


 コーヒーを淹れるのはあんなに熱心なのに、戦闘は面倒って! いや確かに、クラフトは素材をゲットしたりステータスを上げるために戦うのが主な目的であって、戦闘好きだったら戦闘専攻に行ってるか……。


「金子くんも遠距離武器にしたらいいんでは? それか、その身のこなしを活かして、ショートソードじゃなくて毒ダガーとかさ」

「今更武器変えるの面倒じゃん」

「そんな面倒くさがりのところも彩花ちゃんに似てない!? あ、でも彩花ちゃんは戦闘ジャンキーだわ」

「金子は追い詰められないと強さを発揮しないんだよな。セイッ! これで全部片付いたか?」


 室伏くんが焼成マッドゴーレムの最後の1体を粉砕して、フロアからは敵がいなくなった。


「あと、多分このメンバーだと、柳川がいないと詰むよ」

「なんで?」


 私から見てもかなり強いと思うのに、金子くんの判断はちょっと悲観的に感じるね。でも、その続きの理由を聞いたら、めちゃめちゃ納得してしまった。


「最初の、斧をめり込ませた中森と、よりによって毒付きクロウでデストードに向かってった室伏見ただろ? 敵の特性がわかった後ならまともに戦えたけど、俺たち戦闘経験が柳川たちより浅いから、初見の敵には弱いよ」

「そうそう、それにさー、中森と室伏は強いけど指示役がいないとかなりのポンコツだから。金子が本気だせば回せるかも知れないけど、こいつのやる気スイッチ、親指がめり込むくらいまで押さないと動作しないし」

「そういう須藤は全体把握できてるくせに、火力が低すぎだし、普段一緒に戦ってる中森のピンチに助けに行かなかったよなー」


 真顔のクラフトコンビの分析が鋭い! そして、的を射ているだけに悲しい!


「つまり、火力が偏ったときとか片方が使い物にならなくなったとき、すぐにそこを埋められる指示役が必要なんだよね。このメンバーだと柳川以外にまともに回復できる人がいないし」


 ぐう正論! 最初は何でこのメンバー? と思ったけど、金子くんと室伏くんが同じパーティー、中森くんと須藤くんが同じパーティーで、それぞれの欠けた部分を全て埋められるのが私ということか。

 パーティーリーダーとしての戦場把握と的確な指示出し、それに魔法担当。あと一番大事な役目は……ツッコミ!


「金子~、水飲ませて」

「はいはい、全く、世話が焼ける奴」


 私が考え込んでる中、金子くんはペットボトルにストロー刺して室伏くんに飲ませてあげてた。

 うーむ、この「全員揃ってどっかしらが足りないポンコツども」をまとめて、ドラゴンと戦わせるのか……。

 ちょっと頭痛くなってきたぞ?


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