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第404話 清水寺ダンジョン、攻略開始



 まずは1層で準備運動をした後作戦会議だ。

 このメンバーは、女子は私と彩花ちゃんだけ。そして、魔法使える人も比較的少なめ。

 つまり――うちのクラスの脳筋を煮詰めたようなメンバー。


 現在時刻は9時20分で夕食は18時。それまでに戻らないといけないから、着替えとかいろいろ考えると使える時間は8時間弱。

 はっきり言って、それは「上級ダンジョン最下層までの片道に掛かる時間」なんだよね。


 その限られた時間で、24層以降に行かないと出てこないドラゴンと戦って、更に戻ってくる。それをやろうとしたら、物理メインパーティーではほぼ無理だと思う。


 事前に清水寺ダンジョンのエリアとかは調べてある。厄介なエリアもあるけど、対処するための準備はしてきた。クラフト全員がフリークラフトできるっていうのはこういうとき強いね。


「作戦確認ー。まず、24層までの敵とは最低限の戦闘で突っ切ります。OK?」

「オッケー!!」

「マップ担当者は覚えてきたよね」

「任せろ」

「バッチリだぜ」


 昨日の4班が辿り着けなかったのは、それぞれが別行動をしたせいもあると聖弥くんから聞いてる。

 なので、反省点を活かし、私たちは3班15人で行動する。


 班メンバーのなかでふたりずつマップ担当を作って、担当階のマップは頭に入れてきてもらった。アプリを見ながらでもいいけど、頭に入ってる方が指示出しは早く済む。

 ルート取りの優先は広間だ。氷コンボで殲滅すると大体ショートカットになるから。


 今回に限っては、「ドラゴンと戦って倒すこと」を最優先にしてるので、経験値は諦めてもらうことになった。私と蓮は大規模範囲攻撃ができるけど、彩花ちゃんの班員にそれができる人はいないから。

 広間があった場合、基本的には蓮が氷コンボを使って、モンスターを殲滅することになっている。


「では……御用改めであーる!」


 バス屋さんが落として行った木刀を掲げて彩花ちゃんが新撰組ムーブするから、反応に困る。

 この場合なんて言ったらいいの? 今宵の虎徹は血に飢えておるとか?



 ラピッドブーストをあげて移動力アップし、2層からはまず森林エリア。もうここのショートカットはお約束だよ。

 蓮がウィンドカッターを唱えてごっそり木を切り倒すと、メンバーからわあっと喝采が上がった。


「おおお! 生ランバージャックだー!」

「凄え、安永のガチ魔法久々に見た!」


 高LV魔法使いを生で見る機会ってあんまりないからね。

 去年の文化祭の時に蓮は他のクラスメイトと一緒に出稼ぎしてたけど、その後に新宿ダンジョンでのLV上げがあったから、威力が桁違いになってる。


「魔法で切り倒すのはランバージャックじゃない気がする」

「そうそう、木を切り倒すのは木刀に限る」


 倉橋くんが真っ当な反応をしたのに、彩花ちゃんがずれている!

 違う、普通は木刀で木を切り倒したりしないんだよ。

 それは斧の役目だ! 中森くんだって「木を切り倒したくて斧にした」とか言ってたし。


「じゃあ、3層まで突っ切るから私の周りに集まって。インフィニティバリア!」


私の周りに約半径5メートル程の、淡い光のドームができあがる。

 それを見た途端、蓮がウィンドカッターを撃ったときと比にならないくらいのどよめきが起きた。


「うわー、柳川が魔法使ってる!」

「この目で見てもまだ信じられねえ」

「やかましいわ! 10秒で消えるからさっさと行くよ!」


 私=魔法できない人と去年の初め頃に染みついた印象が抜けきらない……。ぐぎぎぎ。


 インフィニティバリアの中に15人がみちみちになって、そのまま走る。

 もちろん私がガチに走ったら全員置いてけぼりになるから、様子を見ながらね。

 切り倒されてないエルダートレントとかダイアウルフとかが攻撃しようとしてくるけど、インフィニティバリアに阻まれる。

 ばいんと跳ね返るダイアウルフに、野郎どもの野太い歓声が上がった。


「凄え! 無敵じゃん!」

「チート過ぎるだろ、これ!」


 みんな、テンション上がりまくり。気持ちはわかるけど、あげるのはテンションじゃなくてスピードにして欲しい!


「しゃべってないで走れー! インフィニティバリア!」

「遅れる奴は木刀で殴るぞ!?」


 バリア外に出てしまった人がいた場合の保険として、彩花ちゃんは一番後ろにいる。

 万が一誰かが攻撃されそうになったら、それのフォローのためね。


 でも、「一番後ろで木刀持ったまま前を急かす彩花ちゃん」って、うちのクラスでは恐怖の対象でしかないんだよね……。

 騒いでいた男子たちも黙って必死に走り、なんとか2回目のインフィニティバリアが切れる寸前で私たちは階段に駆け込むことができた。


「私のMPだと8回しか使えないからね? この調子だと5層に入る前にマジックポーション飲むことになるから」

「ちなみに俺、前にマジックポーション10本飲んで、オーバーヒートって言われる状態になって鼻血出してぶっ倒れて、ほとんど一日潰れたことあるからな」


 階段に15人は結構狭いんだけど、これは今話しておかないといけない。

 さすがに1層で使ってみせるのはもったいないし、できなかったよ。

 そして蓮も自分のオーバーヒートの経験を話して、危機感を煽っている。大半がガクブルし始めたので、私は更に追い打ちを掛けた。


「私の場合はマジックポーション12本が限界だよ。ポーション中毒で気持ち悪くなって回復に結構時間が掛かった」

「うげぇー……60万円!?」


 金子くんが呻いてるけど、気にするところそっち!?


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