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第40話 居心地

 ブタもおだてりゃ木に登るというから

 なにかこう「登る」とか「高い」に対して

 ちょっとだけ身構えてしまうことがある


 けど好きなんだよね結局のところ

 登るのも

 高いところも


 ビルに入ると

 いちばんうえってどうなってるんだろう

 気になる


 エレベーター

 最上階って行けるのイケナイのどうなの

 そわそわ


 階段なら立ち入り禁止の札が現れるまで

 カツンカツンと登ってしまう


 たいていは

 あがれるけれどなにもない屋上


 あったとしても

 ミニ遊園地

 というよりゲーセン的か

 もぐらたたき

 うごいていないミニ汽車

 観覧車もあるとテンションあがる

 見上げただけで最高潮


 階段カツンカツンと登っていって

 いざ最上階おそらく屋上だね

 っていうドアの曇りガラス越しの外の明るさ

 立ち入り禁止の札はない


 けれども鍵がかかっていた



 子供だったとはいえ

 よくもまあ

 あんな行動


 ときどき家族連れや仲よさげなグループがいて

 自分ひとりがきわだつ


 ときどき迷子かと疑われて

 どうしたの

 どこいくの

 質問を受けるたびに


 そこの向かいにある塾です


 質問してくるひとの目の色が変わる

 なに? 中学受験するの

 へえ? がんばってね

 えらいね?

 たくさんの疑問符を浴びるたびに

 教室で勉強しているほうが優しい空気だな


 さあ毎日がもう戦いです

 1秒たりとも無駄にするなよ

 と

 あらぶる魂の叫ぶ場所

 教室で勉強しているほうが楽しい空気だった


 わかんないことだらけ

 とけないものばかりで

 このさきが思いやられる でも


 たぶんおれは自分勝手に楽しんでいたし

 あれはあれであれゆえに居心地が良かったんだ




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