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第62話 アイスクリーム浮かべた

 デパートの屋上で望遠鏡を眺める

 ほんとうは望遠鏡から眺めたいけれど

 ちょっと ちょっと 持ち合わせがね

 だから望遠鏡を眺めている


 視界には海が広がり

 圧倒的な青

 空のほうが広いのかな

 丘の向こうの海が見えない


 島へ向かう舟が白く尾を残す

 すぐそこまでの距離だけれど

 泳いではいけないと教わった


 デパートの屋上にある観覧車は

 テレビで見たことあるのより小さめだけど

 グルグルガタンと目の前で濁音

 圧倒的な鉄


 ほんとうのことはわからない

 もしかすると全部が発泡スチロールで

 お菓子の家ではないにせよ

 壁は食べられそうな気がする


 拾い食いはだめですよ

 としつけられたのもあるけれど

 自分のモノではないことくらい

 おれにだって見分けられる


 異国にも海が広がり

 格闘技も盛んらしいから

 いつか習いたいと願った


 どこでどう分岐するのかわからないが

 おれには塾と予備校が配られて

 このカードで戦えってことらしい

 このカードで闘うために

 おれは海鳥に問いかける


 どうすれば飛べる

 どうすれば跳べる

 はじめだけだよ

 そのままでいい


 はじめだけだな

 このままでいい


 一日一歩の一善から見て

 減点ばかりの毎日だ

 埃を拾ってゴミ箱に捨てれば

 汚ないでしょ手を洗いなさい

 え だって 説明しようものなら

 屁理屈なんかやめなさい


 はじめだけだよ

 求められていくばかり

 次


 次


 さらに次


 この上


 その上



 さらに上を目指せ



 デパートの屋上にカフェができて

 長く座れるようになったから

 ますます望遠鏡を眺められる

 いつものように君が教えてくれる

 いつものようにノートが整ってる

 バイトはじめたよ 週三だけど

 ちょっと ちょっと 贅沢だよね

 コーヒーにアイスクリームを浮かべた

 注文はしておいたから

 君のにもアイスクリームを浮かべた

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