目次
ブックマーク
応援する
1
コメント
シェア
通報

第88話 握手を交わせたらいいな

『本当にしょうもないことで消耗してしまった』


というのが高校三年生になったときの感想です

自分では『自分が正しい』『私こそが正しい』と確信していても

現実を直視すれば『あれ?このトラブルって、おれが原因?』な場面が多すぎて

攻防戦を繰り返した挙句の果てが

消耗です


まいりました

父はタフだ

その点だけにおいても評価できる

そう思ったのが

どうしようもない事実です


なさけない


よろこばしくもある


本当に、しょうもないことでした

ひたすら消耗するばかりでした


けれども

あがいたことは筋肉になり

もがいたことすら骨となり

鏡に自分を写しては

ほれぼれするのです

ばかだよね、まったく


いまからでも遅くない?

いや 遅すぎる

遅すぎるってどれくらい

いや 遅いのにもほどがあるから

高校三年生の私は

小学六年生のおれのときから

いったいなにをこんなに激しく戦わなければならなかったのかと

思わず愕然としてしまうのです

いったいあんなになにを烈しく言い争って疲れきってしまったか

冷静になってみれば残念です

残念すぎてもう笑うしかない

のに笑えない話


振り返るとよくわかります

あんなに時間たっぷりありました

今だからこそハッキリ言える

あんなに時間たっぷりあったのに


『時間あると思うなよ』

あおられて

ムキになって

かといって相手の思うつぼってわけでもなさそう

つまり単純に

ビジネスでした

だから多少ちょっとくらいは反省するとしても?

正々堂々としていきましょう

こちらはお金をちゃんと払っているんです

もちろん親の金ですが

父が汗を流して

家族には窺い知れない屈辱があったとしても耐え抜き

笑って食卓についていたのですから

私は自分で稼げないことを恥じるよりも

ひたすら感謝をしてみようとむ思いました


いつか社会人になったときに恩返しします

この膨大なコストを必要とした戦禍は

社会から見れば静寂そのもので

家族のゲームでしかありませんね

世界から見れば脆弱のきわみで

家族のワガママのナレノハテ


せめてそうだな

お父さん

あなたの抱えていた

根深い『うらみ』『つらみ』が

私の行動と選択で少しでも解消されたらいいなと思っています

だから

私は配られたカードに不平不満ぶちかましつつも

あなたに心からお礼を申しあげたいのです

いつも

監視してくれてありがとう

おかげで

適当に生き抜くことを学べました

注視してくれてありがとう

おかげで

適当に息抜きできるようになってます


残念ながら

父と母が期待するレベルには到達できていないし

それどころかむしろ劣化しているようにも思えて

笑うに笑えない状況ですが


がんばります


がんばるよ


おれが鉛筆もって消しゴムもって

必死すぎる毎日であっても

世間から見れば

たいしたことない

それがどうした

あっそう

くらいなもので

なにやってんのと批判も受けるし

これだから若いやつらってのは

と舌打ちもされる

けど


私は出会うこともできました

『このひとについていこう』

そう思える大人に

だから

いまさらだけど

いまからですよ


がんばります


父と母の期待を裏切る結果になると思うけれど

ぐるっとまわって結果的には

親孝行にもつながる可能性があるんじゃないのかな

って

思うのですよ


ほら


父が教えてくれた登山道ではないし

母が勧めてくれたケーブルカーでもないけれど

私が進んだ道なき未知も

ひとすじにルートを描き

あの頂上に向かっています


いつ どのように それは わかりません

でもね


展望台でみんなとまた会えるんだと思うよ

それぞれちがった道と手段で登りきって風に吹かれながら

握手を交わせたらいいな

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?