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第89話 その宣言を

なりふりかまわぬ君へ

せめてもの償いとして

この言葉を贈りましょう

形のないものを

形あるものの力で見えるようになったとき

その胸の奥に刻み込まれた設計回路が

ぎしっと鳴って

すっかり忘れていた粒子を取り戻せますように


ぎいっといた

骨のきしみを

心の叫びと勘違いしないでください


なんのために今

君は

なりふりかまわなくなってしまったの

ですか


本当は全部なにもかもご存知のはず

直視するのが怖いのは

素直に生きている証拠

言葉にするのがおそれおおいのは

きみの命が正常に稼働しているからです


さあ

どうか

その穴に

れてみてください


もっとも柔らかくて

もっとも温かく

もっとも無防備だからこそ

もっとも気高い領域

宇宙をりたくなったら

目を閉じてごらんくださいませ


叫べば叫ぶほどの無口を

体現している君ならば

必ず届けられます


覚えているから苦しくて

笑えるようになるために忘れる道を選んだ

それでもなお

記憶の石碑に刻み込まれたことば

君の過去を恥ずべきものとさらしてもなお

立つ

想い出しながら嗚咽おえつもよおしてしまっても

立つ

どこへ向かって進めばいいのか誰も教えてくれないからこそ

自由に迷っていいんだよ

さあ



生まれたときから授かっている設計図が

リフォームを求めています

君の細胞すべて新しく生まれ代わり

君が心から望む姿があればその姿にもっとも近づいていくでしょう


工事の合図

リフォームの開始

どうぞ

その宣言を


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