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第95話 星への望み

それでもふと思う

たぶんちょっとのちがいなんだ

ほんのちょっとの分量です

あるかないかの差だと思う


砂糖

精油

味噌


紅茶と水あめと砂糖を煮詰めて固めただけの飴

いつもの飴

知ってる飴

けど

くちにいれれば

いままさに溶け出すファンタスティック

まるで初めての覚醒気分で

忘れかけていた優しい感覚


潮風に吹かれて

潮の香りに包まれ

潮で溶けた手すり

潮の満ち干みちひに揺れる感情


もともと素だけど

もとから硬くて

そのくせ柔らかすぎて

素顔のままでも

素直になれない


気晴らしに吹きかけたスプレーの

水の微粒子が嗅覚を刺せば

痛みがあるのに

麻酔の効果で

はっかの精油ひとしずく

宇宙そのものに広がってしまう


脳味噌あっても脳内からっぽ


生まれてきたってことだろう

いまこうして生きているってことが


だったら

もう勝ったんだよ

すでに勝っているんだよ

なのにまた

勝ち続けなくちゃならないのか


わかっているけど

ふとしたとき ふとね


からっぽといいながら

ありすぎて困るし

どう捨てていいのかわからないんだ

希望 志望 願望 欲望

たとえ見えない糸だとしても

断ち切られていないのならば

おれはたどるよ


点と点を結んだ絆

星座の名前を覚えられなくても

昔いたかもしれない星

これから目指す先の星

おれはたどる



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