重いと思った
いつもの道
どうにか足を運ぶのだけれども
思いどおりの
動きができない
どうにもならない悔しさ
からっぽのカバンでさえ
この手に余る
着ている服すべて脱いでも
なぜか
重く感じてしまうのは
なぜ
でも もう これ以上は 捨てない
と誓った
軽いと思った
きみを抱っこしたら
「重くない?」
「重いでしょ」
「重くない?」
疑問と断定のリピートくるくる
宙を舞っていたけれど
おれにとって
あまりにも
いとおしくて
重力そのものが
どこかいっちゃった
そりゃね
二リットルのペットボトル六本入った箱よりも
コンクリート製二十五キロの物干し台よりも
数値上は確かに重いはずなのに
ほら
きみを抱えて
おれが くるくる まわれる
きみを抱えて
おれは くるくる 舞っても平気
その命を
この命が
感じ取る
その命を
この命で
運んでいく
科学の進歩を階段教室で学び
宇宙の真理に近づいた気がした
物理法則を知れば知るほど
なぜか不自由を感じたけれど
校舎を飛び出して
敷地を抜けて
暗い夜道の先に見つけた展望台で
呼吸が乱れて視界は妙にクリアになっていった
あの命を
運ぶものがいたんだろう?
乱れた呼吸が整う頃には
ただひたすら自分自身を大切にしようと思った
どの命も
運ぶものがいるんだろう
尺度を知っても
尺度に縛られず
十人十色の価値が乱舞して
なにも価値がない気にされても
その命を
運ぶのは
自分自身だけだよ
風の力を借りて
水の勢いにのり
火のゆらぎで感情を支配しよう
地を蹴れなくても
天をあおげば
命が踊るのを実感できるから
運ぼう