歩きながら考える
将来の展望は
陽射しに包まれて
穏やかなひととき
ひとり熱く語って
誰かの隣
その誰かって
高校最初のクラスで
「結婚は見合いと恋愛どっちがいい?」
と質問された
「恋愛」と即答すると
「え?」という反応
意外なのか
思惑どおりか
知るよしもなく
答えたまんま
「なに聞いてんだよお前」と別のクラスメイトが笑った
「いや、まあ、その」と真顔の質問者が
「やっぱ結婚すんなら恋愛だよな?」と言う
おれは
「恋愛」
と
うわごとのように繰り返す
「なに、そんなに結婚したいとかなの?」とまた別のクラスメイトが言った
おれは
「する」
と
つぶやく
すると
「恋愛結婚か」
と
やはり真顔の質問者が言った
バイトを希望しても
「親は?」
と確認されてしまうし
「学校は?」
と質問されると
「内緒です」としか答えようがないんだけれど
そういうのはダメなんだって
だから雇えないよって
反対を押し切ることの大変さを知り
許可を取らねばならない現実を知り
財布をのぞいては
そっと閉じる
夏を過ぎると
とたんに窮屈になった気がして
朝「おはよう」と声をかけると
「なんだよ。ほかに話題ないのかよ」と言われてしまったので
「めんどくさいなあ」と本音を漏らした
あんなに嫌で面倒だった塾が
いまでは生きがいになっているっぽくて
自分の変化に驚くけれど
毎日の静けさが苦しくて
自分の声の大きさが煩わしくて
どんどん口数が減っていくけれど
なあ
このまま進めばいいと思う?
どのつらさげて
なにを決めるんだって?
「まだ早いけれど最初の確認だ、ちゃんと考えて記入してから提出しろよ」
と
担任の先生が配った進路希望書に
おれは
・給与所得
・恋愛結婚
・詩人
と記入して職員室へ持っていった
「うん?」と担任
黙る私
「うん」と担任
天井を見る私
「まあ、いいんじゃないか?」と担任
「そうですか」と私
「ああ」
「どのあたりがですか」
すると担任は天井を眺めてからグルっと椅子を半回転させて
「これ」
と一冊のノートを渡してきた
なんですかこのノート
おれはパラっと
すると
ん
なんのランキング
っていう並びがあって
「ふー」と息を深く遠く吐く担任「それ。入試の時の成績な」
おれは初めて見たから
「初めて見ました」と言う
すると
「そりゃそうだろ。見せてないし、生徒が見る機会なんてない」
なぜそれをいま?
「好きにしろ」担任が真顔で言う、
「おまえは頑張った。頑張ってきた。いまも頑張ってる。それでいい。そのままいけ」
そのあと会話を続けたけれど
「失礼します」と一礼して職員室を出ると
なぜか
なんだか
なんていうか
その
いい気がした
ちょっとだけ
おれは
おれでいいんだ?
って
自分に問いかけた