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第99話 歪んでから、まっすぐ

いつも前を向いて歩いてる気になってる

けど

ときどき突きつけられてしまう

ほら

まるでカニみたいに横

顔だけじゃないよ横

からだ全体を横

肩で空気を裂く感じ


砂混じりの潮風が痛くて

とても前を向いていられない

一段

    一段

        一段

上を目指して進むけれど

かろうじて横

やっとの思いで

横向きから上へ


鉄階段の欄干にも砂

というより小石だな

カコーン


歯切れの悪い足取りで

よろめいちゃうし

靴音が響きそうで

吸い取られてしまう


まるで無音な騒がしさ

照りつける陽射しの熱いこと

まるで

なにしに来た

なにする気だ

制止されてしまう


見渡したい

眺めたいんだ

少しでいい

おれの心グラつかせたい


ふるえている原因を

なにひとつ今日も解決できなくても

おれの心グラつかせてくれ

世界は美しい

この体に叩き込んでくれ


忘れてもなお

忘れられない

希望と呼ぶことさえできない

おれのわがままを

歪んだ針金さらに歪ませて

ほんの匙加減で

まっすぐになるように






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