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第190話 薄く青

おれの気持ちなんて世界に影響しないから

なにをどう思おうと勝手だろ


やるせなくて

いらだたしい


昨夜は建設的な覚悟を決めて

真剣に生きよう

って拳

にぎりしめたのに


なんでだよ

どうしてだ

ユラユラ

道の果ての蜃気楼


誰に何を言われようと

揺らぎない生き方をしよう


思ったのに

思ってたよ

思ってたさ

いままでになく強い気持ちで



ひとの気持ちなんて世界に影響しないなら

どこでなにをしようと勝手だろ


理不尽だよ

哀しすぎる


けれども不思議

ちよっとスッキリしている?



まだ見たことのない大都会を想像しながら目指す

いつもの商店街

こんなに大勢の見知らぬ人がいて

おれだけポツリひとりきり

走っても

叫んでも

誰も気にしないのかな

みごとなまでにプライベートタイム




なんで


こんなときにかぎって


好きなひとを見かけてしまう

鏡ちゃんと見てこなかった

服装どんな仕上がりかチェックしてないし

木の実ころがる遊歩道

気づくなよ

気づかないでな

絶対こっち見るな



ふわり春風

と呼ぶには

夏モードの

けれど

風は肌を冷たく刺す


見られた



きみは冬の名残りをフィットさせて

セーターの胸元むなもととがらせたくちみたく

すごい饒舌じょうぜつ


まるで


見て

  見て

    見てよ


もっと ちゃんと見て


見てね?

  見てよ

    見てるんでしょ?


しっかり見てよ


見たね

見たでしょ

見ておいて


『無視する余地あなたにはございません』

容赦ようしゃなくってきた

無言の微笑みが貫通かんつうする


風か

さっきまでと違うな

風だ

やけに なまあたたかい


おれの心

おしゃべりすぎて

いまにもボロでまくりそう


目をそらしたら負けなのさ

無意味なルールで自分を追い込んで


一歩

やけにチカラめて さらに

一歩



おれの肩に胸に心に風穴かざあな

すでにボロボロだ

いいさ

陽気にふるまうぜ?



目と目が合って

目と目が合ったまま

目をそらさずにどこまでいけるか


目と目が合った

目と目が合ったのに

どうしたものかわからない


ああ

目を泳がせて

きみの胸を見たいのをこらえる

そのとき


ヒュッ


ふたたび冷たい感触

おれのひたい

あおられる髪

視線の先には薄い青

どこから現れた

いきなり現れて

一瞬で消え去る


もうすぐそこで至近距離

チョコレートみたく長いスカート

目と目が合ったまま

きみは手で押さえなかった


あぁ

この


ほほの熱どこかへ逃がしたい


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