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36. モデルの依頼(前編)

次の日の朝9時。

学校の美術室に行くと既に佐々木さんはいた。


「昨日は無事帰れた?」

「え、あ、うん」

「それならよかったわね」


佐々木さんは開口一番に昨日の話を始めた。

(やっぱりあの場では言えない何かがあったんだ)

だとすれば内容は予想できる。


「山本さんが好きって言ってたのに大木さんとエッチなことしてたのはなにかなー?」

「そ、それは……」


あの時口でしてもらったのを見られていたんだ。

たしかに声をかけられたタイミングが良すぎた。

全然周りを警戒していなかったから見られていても気づかない。


「大木さんに鞍替えしたって訳じゃないよね?」

「してないです……」

「男子高校生がお猿さんなのは知ってるけどちょっと節操なしかな」

「はい……、すみません」


ふーっとため息をついてなにか考えている。


「あそこは有名なデートスポットだから他の人が来たかもしれないよ」

「はい……」

「そんなところで致してたら大木さん襲われたかもよ」

「え……?」

「もし私じゃなくて男の人だったらどうだった?」


そうだ、見られたのが佐々木さんだから何もなかった。

もし乱暴な男にでも見られていたら、

大木さんがそのまま襲われてもおかしくない。

相手が一人ならなんとか守れるかもしれないけど、

大体その手の男は集団で祭りに来るから……。


「状況がわかった? なら言うことは?」

「恵子のおかげで助かりました、ありがとう」

「よろしい」


佐々木さんに助けてもらったのは理解できた。

ただ大木さんとの関係はどう説明すればいいのか。

経緯を説明するとどうしても大木さんの秘密に触れることになる。

だとすれば黙っているしかない。


「大木さんとの関係の説明はいらない」

「え?」

「代わりに美術部の活動手伝ってくれたら黙っていてあげる」

「ほんとに!? ありがとう!!」

「明日の朝からしばらくお願いしようかな」

「わかった。何か必要なものはある?」

「体力かな」


体力……何か力仕事っぽいな。

そんなに体力ないけど全力で頑張ろう。


次の日


美術部の部室に入るとみんな一斉に俺を見た。

部屋には10人以上いて全員女子だった。

上級生の姿が多いように思う。

俺の顔を見てなにか話している。


「あの、恵子……さん?」

「ん? なにかな?」

「なぜこんなに注目されるんでしょうか?」

「やってもらいたいのはモデルなのよ」

「モデル……」


体力を使う仕事ってモデルなのか。

立っているだけでいいならそこまでつらそうじゃないけど。


「あ、モデルを舐めてるな。姿勢変えずに立っているのは大変なんだからね」

「なるほど」

「まあずっと姿勢を保つの無理でも立っているぐらいしてもらうよ」

「それぐらいならなんとかなりそう」


気づくべきだった。

佐々木さんのイントネーションがおかしかったことに。


「じゃあ美術室に行こうか」

「はい」


佐々木さんを先頭にぞろぞろと並んで歩く。

(なんか白い巨塔の総回診のシーンみたいだ)

まあその場合、患者は俺なんだけど。

美術室に入るとステージの前に連れてこられる。


「ステージに乗ってね」

「はい」

「みんなに見えるように少し向き変えてね」

「はい」


少し高くなっているステージに立つ。

ここからだと見学しているみんなを見下ろせる。

改めて見ると、暑いせいか薄着の女子が多い。

食いつくように前かがみになっている子も多いので、

チラチラとおっぱいが見えており、人によっては乳首も見えている。

まずい、大きくなってしまう。


「じゃあ服脱がすね」

「はい……はい!?」

「なんかひっかかって、あ、すごい」


ズボンを下ろす時に大きくなったあれがひっかかって、

下ろした勢いの反動でお腹に当たる。

思わず股間を隠してしゃがむけどもう既に女子全員に見られた。


「すごい…」「年の割に……」「初めて見た……」

「ほら、立って。モデルしてくれるのよね?」

「なんで脱ぐんだよ!?」

「ヌードモデルだからね」

「ぬ、ヌードモデル!? 聞いてないよ!?」

「うん、だって聞かれてないし」


体力がいる仕事って言われて、

モデルそれもヌードモデルなんて普通連想しないよ!?


「手伝ってくれないなら……」

「すみません、やります、やらせてください」


そうだった、俺に選択権はない。

大木さんにいつもお世話になっているのだから、

これぐらい我慢しないと。


「ほら、立って」

「はい……」


ゆっくりと立ち上がる。

女子の目線も俺の動きに釣られて上に来る。


「手で隠さない」

「はい……」


隠していた手をどけると女子の軽い悲鳴?が聞こえた。

(ううう、恥ずかしい)

今まで斎藤さんと大木さんにしか見せたことないのに、

いきなり大勢の女子に見せてる。

それも完全に大きくなった状態で。


「これは思いがけない収穫だったわね」

「な、何が?」

「大きくて形も立派」

「そもそもヌードデッサンってそこ書かないんじゃないの!?」


あくまで骨格とかを隠さないためのヌードであって、

あれを書くためにヌードになっている訳ではない……はず。


「最初はその予定だったんだけど意外と興味ある子が多くて」

「は!? 怖くないの!?」


え、恐怖の対象とかじゃなくて?

よく露出狂が捕まってるから見せられるのは怖いものだと思ってた。


「安全な状態なら怖さより興味が勝つ場合があるのよね」


たしかにこの人数なら男一人に恐怖は感じないだろう。

でもそれにしても……。


「はい、じゃあ撮影するね」


呆然としている間に撮影されてしまった。

ポラロイドカメラから出てきた写真には、

くっきりと俺のものが映っている。


「あの……カメラで撮ったならもう俺はいらないのでは……?」


そう言ったとたん、こいつは何も分かってないという表情で首を振られた。


「あのねぇ、なんのために実物があるの?」

「あ、そうか」

「それに体のラインとか骨格とかは変わらないでしょ?」


言われてみればその通りだった。

最初にそれを考えたのにあれを見せる方に引っ張られた……。


「だからできるだけ大きい状態を維持してもらうからね」

「いやいやいや、そんなに維持できるものじゃないって」


射精せずに刺激を与え続けても30分~1時間もすれば小さくなる。

その後は少し休憩しないとまた大きくならない。

ましてなんの刺激も与えられない状況なら1分と持たない。

そう説明すると佐々木さんもうなずいた。


「そうみたいね、モデルに依頼したらすごい値段だった」


そりゃそうだろう。

仕事でやるとなったら多分バイアグラとかで

無理やり大きくさせ続けるのだと思うから、

体にかなり負担がかかる。


「だから諦めた所に哲也くんが来てくれたってわけ」

「プロで難しいのに素人に出来る訳ないよね!?」

「だから刺激は与えていいよ、それなら長持ちするよね」

「女子の前でしごくって変態だよね!?」

「でも今大きくしたものみんなに見せてるよね?」


言われてみると完全に見せつけた状態だった。

返す言葉もない、どうみても変態だった。


「あと人前で大きくし続けてる時点で才能あるから誇っていいよ」

「そんな無駄知識も才能もいらない……」


佐々木さんがニコっと笑いながら無駄知識を教えてくれた。

くそう、でもかわいいなぁ。

普段の笑顔はなんというか完成された笑顔って感じだけど、

今の笑顔はどこか感情が見える。


「じゃあ貴重な時間を無駄にしないようにスタートしよう」


最初は興味のまなざしで見ていた女子も、

スケッチが始まると明らかに目つきが変わった。

細部まで見逃さないように注意しているのがわかる。

(あ、本当にモデルなんだ)

ただの興味本位じゃないかと若干疑っていたけど、

みんなの本気度が伝わってくるので間違いだと気づいた。

それなら俺も恥ずかしいけど頑張って大きくしよう。


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