☆第九十四章 セカンドベイビーの名前が決まらない。
麗奈から、産まれた子の名前が決まらない。というメッセージが入っていた。
『産まれる前に候補をあげてなかったっけ?』
『そうなの、わたしは星弥に続いて、自然物の名前がいいんだけど、旦那が自分の好きな漫画のキャラの名前にしたいとかふざけたこと言っていて』
漫画のキャラか……よっぽど思い入れが強いのだろうな。
『どんな名前?』
『誠一郎』
『う、うーん』
なんと返事したらいいのか。悪くないけど今どきな感じではない。
『麗奈はどんな名前にしたいの?』
『空良(そら)、海登(かいと)、偉月(いつき)』
なるほど、星と空、星と海、星と月 どれも綺麗だ。
『どれも素敵だね~(*^^*)』
『でしょ?』
『それで、結局どうやって決めるの?』
『うーん、お互い強情だから退かないんだよねー』
出生届は産まれてから二週間以内に提出せねばならない。杏の名付けの時を思い出した。
学の両親が大量に名前の候補をあげていて、なんかわからないけれど、わたしの意思がほぼゼロで杏になった。
それなのに名付け親はもういまここにはいない。
名前というのはその子の一生を決める力がある。
ふと、思った。麗奈は行登さんのどこを好きになったんだろう? 女同士もっとそういう話をしたらいいのかな。
一緒に白浜に行った時に思ったのは『普通の人』だった。
申し訳ないけど特にイケメンって感じでもなく、身長は低め、服のセンスはそこそこ?
麗奈とラブラブって感じでもないし、うーん……。退院したら聞いてみよう。
退院の日は、わたしと環名ちゃんの二人で迎えに行った。本来なら行登さんが行くべきなのだろうが、仕事が休めなかったそうだ。
「ねぇ、麗奈さんって行登さんのどこが好きなんですかー?」
迎えに行った病室で、環名ちゃんがわたしが聞こうと思っていたことをさらりと聞いた。
「わたしだったら、やっぱり仕事休んで、旦那に迎えにきてほしいって思うかなぁ」
核心をつくなぁ。すると麗奈が
「今日は萌奈ちゃんが手術の日なのよ。だから、私が仕事行けって言ったの」
と答える。
「えっ、萌奈ちゃんが手術⁉️」
「そう、大きな手術だから」
「行登さんはその手術に……」
「助手として入るの。萌奈ちゃんは行登のこと大好きなのよ」
この間、会った、十二歳の純粋な笑顔を思い出す。
「行登はね、子どもに人気あるのよ」
なんとなくイメージできないが、そうなのか。
「子ども大好きでね。病院に入院している一人一人の子を気にかけている」
「確か、整形外科って……」
「そうなの。本人は小児科希望しているんだけどね。あの人、見た目そっけないけれど、仕事はすごいできるの。手先が器用でテキパキしている」
「つまり、麗奈さんは行登さんのそういうところを好きになったの?」
環名ちゃんが尋ねる。
「そうね。仕事中はほぼ100%好きね」
「仕事以外は?」
「30%」
「随分、落ちるわねw」
退院して初めてセカンドベイビーの顔を見たが、今度は行登さんそっくりな気がする。
髪の毛は薄めで、本当にこじんまり……ああ、新生児ってこんな小さかったけな。
とにかくかわいい赤ちゃん、無事に名前が決まりますように。