☆第九十五章 行登さんと星弥くん。
麗奈の言うとおりだった。何がって?
行登さんと星弥くんはいつの間にか超仲良しになっていた。
星弥くんは行登さんにへばりついて、肩車をしてもらったり、腕相撲をしていたり、一緒に折り紙を折ったり、二人でスマホで動画を見てケラケラ笑ったりしている。
今日は麗奈の家に初めてお邪魔させてもらった。お祝いの品を持っていったら、行登さんが休みの日で、星弥くんと楽しく遊んでいる。
「ね、子どもに人気あるんだよー」
「本当だね」
ちょっと驚いた。白浜で見たときは、星弥くんは麗奈にべったりだったのに。
「あの時はねー、まだ行登に心を開いていなかったというか、知らないお兄さん? おじさんが家にいるって感じだったけど、少しずつ距離を縮めて今じゃラブラブよ。ありがたいけどね。ほら、二人目が産まれるとママを独り占めしようとして赤ちゃんがえりする子が多いけれど、星弥は最近パパっ子になってくれているから」
星弥くんと一緒にいる行登さんの表情はいきいきとしている。本当に子どもが好きなんだなぁ。
「ところで名前決まったの?」
「ああ、そうそう、じゃーん」
麗奈が手に持っていたのは出生届けだ。
「あ、偉月になってる!」
「そう、勝ち取ったw」
「誠一郎はよかったの?」
「星弥にどの名前がいいかって聞いてみたの。そしたら偉月を選んだから」
「なるほど、名付け親はお兄ちゃんね!」
偉月くんは麗奈に抱っこされてすやすや眠っている。
麗奈が耳元でボソっと「琴ちゃんも、もう一人どう?」なんて言う。
そんな未来は……あるのだろうか。