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第八十二話

翌日、学園長室に顔を出す。


扉をノックして「アルージェです。いらっしゃいますか?」と確認すると、

ガチャリと扉が開き小さなパンダが出迎えてくれる。


「君は秘密結社らびっといあーの小さな方のパンダ!」

覚えて貰っていたのがうれしかったのか見返りキューティポーズを見せてくれた。


「かわいいー!」

褒めるとこぱんだもノッてきたようで色々な可愛いポーズを見せてくれる。

ポーズが変わるごとに拍手して、「かわいー!」と声援を送ると何分かして満足したのか部屋の中に入れてくれた。


「ありがとね」

こぱんだにお礼をして中に入ると学園長が机付近で作業をしているのが見えた。


「学園長、おはようございます」

アルージェが声をかけると、学園長は作業を辞めアルージェの方へ体の向きを変える。


「おぉ、アルージェか、よく来たな、そこに掛けると良い」そういって応接セットの椅子に案内する。


「どうじゃコルクスとは上手くやっていけそうか」


「どうでしょう、見込みなしとは思われてはないと思いますけどそれ以上は分からないです」


「よいよい、あやつが初日で儂の元に来なかったのは初めてのことじゃ、恐らく気に入られたんじゃろうな」


「本当ですか?でも帰り際とか早く出て行けって冷たかったですよ・・・?」


「それがコルクスの持ち味じゃ、気にするでない、それで今日はどうしたんじゃ?まさか秘密結社らびっといあーのしょーを見に来たのか?」


「あはは、可愛かったですけど、違います、学園長に少し話しておきたいことがあって来ました」

そのまま昨日起きたことを包み隠さず話した。


神様と会ったこと、魔力の多い理由、これから聖国が僕の命を狙いに来ること

突拍子もない話のはずなのに、なにも疑うことなく信じてくれた。


「そうか、そうか、話してくれて助かるわい、事前に準備さえしておけば問題なかろうて、

ひとまずこの学園内のにいれば聖国のやつらは入ってくることは不可能じゃ、安心して魔術の深淵を覗くと良い。

だがやはりあれほど大きな魔力、只者ではないと思っておったが、転生者だったとはな、納得じゃ」


学園長が合図すると、

キュッキュッキュと足音を立てて、秘密結社らびっといあーの大きい方のパンダ紅茶を持ってきて学園長とアルージェの前に置いて立ち去る。

アルージェがパンダにお礼を言ってから話を続ける。


「はい、昨日まで誰にも言ってなかったのですが、

事が事だけに知らせておく必要がありそうな人には伝えようと思いまして。

そういえば、学園長は転生者を僕の以外に見たことってありますか?」


「そうじゃな、自分は転生者だと言って入ってくるやつは早々おらんが、

過去に何人か学園に入学したことがあったのぉ、皆それはそれは優秀な生徒じゃったわ」


「そうなんですね、僕も負けないようにしないと」


「フッォフォッフォ、他人と競うのも良いが自分のペースでしっかりと続けることも大事じゃよ」


「確かに!継続は力なりですもんね!それじゃあ今日からコルクス教官に魔法指導を受けるので僕はこれで失礼します!」


「そうかそうか、頑張ってきなさい」

学園長は誰が見ても好々爺だと答えるだろう笑顔でアルージェを見送る。


「失礼しました!」

アルージェは学園長室から出て、コルクスの元に向かう。


「さぁ、ルーネ急いで行こう!」


ルーネに跨り少し移動するとコルクスの部屋に到着する。

ノックをして中に入るが「あれ?部屋間違えたかな?」とアルージェは不安になった。


昨日の今日で部屋が綺麗にに片付いていた。

キョロキョロとコルクスを探していると、奥から尖った氷塊が飛んでくる。


「うわっ、あぶな!」

ギリギリ氷塊を躱すが、奥からさらに無数の尖った氷塊が飛んでくる。


「なんだよ!もう!」

アルージェが腰に付けているアイテムボックスからメイスを取り出し、

氷塊にメイスを叩きつけて、氷塊を粉々にする。


「どんなもんだい!」

その後も飛んでくる氷塊も粉々にして、余裕綽々のアルージェだったが、

次に飛んでくる氷塊の大きさをみてさすがに絶句した。


「あはは、これは無理かも、、、」

アルージェの体よりも3倍以上大きな氷塊が飛んでくる。


ルーネがアルージェの襟を咥えて、距離を取って何とか氷塊から逃れる。


「ありがとうルーネ、にしてもこれはなんだ??」

アルージェが疑問に思っていると奥からコルクスが話しかけてくる。


「アルージェ、指導開始初日から俺の貴重な時間を無駄にするなんてずいぶんとできた学生だなぁ、おい」

コルクスのほうを見ると、水色の魔法陣が展開されて全てがアルージェのほうを向いていた。


「あはは、少し学園長にお話があったもので・・・」

身の危険を感じて、説明をするが、


「俺に少し遅れますの一言も言えないくらいの大事な用事ねぇ」

コルクスの展開している魔法陣の光が少し強くなる。


「本当にすいませんでした!」

アルージェは土下座して、許しを請うと魔法陣がすべて消える。


「今回は許す、だが次はねぇ」

コルクスから許しが出たので顔を上げると、空気の玉がアルージェの頬に飛んできて、軽く殴られたくらいの衝撃が頬に走る。


「ふべっ!」

そのままアルージェは少し後ろに仰け反る。


「痛いです。教官・・・」

頬をさすりながら、コルクスに近づいていく。


「次は空気玉エアボールじゃなくて氷玉アイスボールを当てるからな」


「気を付けます・・・」

頬をさすりながらコルクスに案内された席に着席する。

ルーネはアルージェの隣でゴロンと楽な大勢になる。


「魔力操作は、昨日出来るようになっていたから、

今後は自分で毎日練習しておけ、魔力操作こそが魔法のすべてだと認識しろ」

コルクスは少しめんどくさそうに練習方法を教えてくれる。


「わかりました!毎日やります!」


「いちいち言わなくてもいいやるのは当たり前だ」

コルクスは手で何かを払うような動きをする。


「それで今日からやることだが、少しの間はアルージェに魔法の知識をつけてもらうつもりだ」

そこで一区切りして、コルクスは机に置いていた資料をアルージェの前に置く。


「だが、俺は今の魔法体系を教えるつもりはない、なぜなら無駄だからだ」


「無駄!?」


「あぁ、そうだ!だから俺はお前に新世代の魔法ってやつを教えてやる」

その日からコルクスに"新世代の魔法"について、徹底的に教え込まれる生活が始まる。

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