今まで鍛治しかしてこなかったアルージェに新世代魔法体系の常識を徹底的に叩き込まれる。
まずは旧世代の魔法と新世代の魔法の違いについて
旧世代は詠唱により魔法のイメージを固めてから、
魔力操作で魔法発動に必要な分の魔力を体内のから体外に放出するのが必須である。
この動きはどの魔法を使用する場合でも変わらない。
詠唱は魔法のイメージ増強に使うものであり、
属性を分けているのは、魔法を分類したい人間が勝手に分類しているだけだと学ぶ。
例えば、足を速くする魔法
全属性で足を早くする魔法は存在する。
火だと、森を燃やす速度や、転生者ならブースターをイメージするだろう。
水だと激流、鉄砲水、地だと大地の流動や自転、公転をイメージする人もいるだろうがイメージしやすいのは風だろう。
詠唱を同じにして魔法を発動すると皆寸分の狂いなく同じ速さになる。
これは何故か、詠唱の中にどのくらいの速さにするかという条件を組み込んでいるからである。
自身でイメージできないことは詠唱をすることで解決できる。
想像したことも無いことをできるので、詠唱は非常に便利ではあるが、デメリットもある。
例えば、風のように速くと抽象的に表現しても皆のイメージはバラバラになってしまう、
当たり前だ、徒歩や走ったことしか経験したことがない人間と、馬に乗ったことがある人間、ドラゴンに乗ったことがある人間だと
皆想像できる速さが違うのだから。
このままでは人によっては想像していたより速く自身で制御できなくなってしまうので、もう少し遅くしたいと思うこともあるだろう。
なので、詠唱込められた付与された力を認識することが第一段階であり、
修飾語を追加したり変更する方法を知れば多少の調整は可能なる。
しかし、先人によって作られた詠唱のルールが有り、微細な調整は不可能だ。
一方、新世代魔法はどうだろうか。
詠唱がないのですべて脳内でイメージをする必要がある。
魔法の大きさ、速度、放つ際の角度や、放った後の挙動など考えだしたらキリが無いが、全てを脳内でイメージできなければ、中途半端なものが発動してしまい、無駄が生じる。
また、自身がイメージ出来ないことは出来ない。
詠唱による、補完もないので、当たり前である。
先人達が、どれだけ苦労して効果などを詠唱に置き換えたか、その労力は計り知れない。
先人たちがここまでしたのも単に誰でも簡単に魔法を使えるようにするという目標を胸に頑張ったからである。
だが、今の人間社会ではどうだろう魔法は貴族たちが使うものと勝手に貴族達が独占していて、平民には魔法の知識を全く与えないように秘匿している。
新世代魔法は違う、貴族だけでなく平民も努力すれば誰でも魔法を使えるようになるということを目標にしており、今はまだ学会で発表も何もしていないのでコルクスだけが知っている状態だが、
いずれは誰でも学べることが出来て、誰でも知ることが出来るようにしたいと考えている。
そして皆が秘匿せずに知識を共有し、魔法の新たな可能性を見出したい。
今の体系では魔法の進歩は止まってしまっている。
そもそもの発端は貴族しか使えないようにしてしまっていることである。
そのせいで新しい発想がほぼないのである。
もちろん努力していないとは全く思っていない、だが貴族は保守派が多い。
当たり前だ、今のまま進めていればずっと自分達の利益があるのだから。
だがそれじゃあ、これ以上魔法は発展しない
魔法に興味のある平民がいて、どれだけ適性があっても、生まれが平民というだけでほとんどが魔法を使えないのである。
生まれだけで魔法が使えないのはおかしい、コルクスはそう考えていたから新体系を提唱するのだ。
その足がかりとしてまずは、アルージェを選んだ。
魔力総量の多さはもちろんだが、農民の倅で、魔法についてほぼ何も知らない。
コルクスはそんな存在を探していた。
そして巡り合ったのだ、最高の逸材と。
アルージェがコルクスから新体系の魔法を学び初めてから、数ヶ月後が経った。
食堂に行けばタダで美味い飯がルーネの分まで出てきて、
寝床はミスティさん達と同じ部屋、毎日朝昼夜と食事は一緒に取るようにしている。
そのおかげで学内からでる必要がなく、魔法だけを考えていた数ヶ月だった。
ミスティさんは攻撃魔法はもちろんのこと、それと同時にマナスポットの研究をしているらしい。
僕に負けるまで聞こえていた声が何者で、何故色の書について知っていたのかを明かしてやると意気込んでいた。
マイアさんは特殊な体質の為、
是非とも隅々まで研究させて欲しいと現代であれば、セクハラ紛いのお願いを研究者に頼まれたらしいが仕事があるのでと断ったと聞いた。
だが、次は空いてる時間だけでもお願いしますと研究者達が食い下がってきて、どうにか研究させてくれないかとしつこかったみたいで、金砕棒で地面にクレーターを作ると蜘蛛の子を散らすように逃げていってそれ以降は近づいてこなくなったみたいだ。
それじゃあミスティさんが授業を受けたりしている間の空き時間は何をしているかって?
けど、今まで淡々と仕事をこなしていたマイアさんが時折笑顔を見せるようになってミスティさんは喜んでいた。