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第八十五話

アルージェは日々の日課である剣の修行に追加でコルクスに言われた通り、魔力操作の練習を毎日欠かすことなく実施している。


そのおかげで大気中に存在する魔力を感じ取ることが出来たり、大気中に存在する魔力の流れがわかるようになった。

また、自身の体内にある魔力を自由自在に放出できるようにもなり、魔法を行使する基盤が完成しつつある。


魔力の流れがわかるようになったので、自身の魔力総量が感覚的に分かるようになっており、

カレンさんに言われた通りバカみたいに魔力を垂れ流しにしていたんだと自覚もできた。


「まだ魔力操作しかできないけど、それでも世界がここまで広がるなんて」

魔力操作をする上で一つ学んだことがある。

魔力を体の一部に集めるとそこが一時的に強化されるということだ。


例えば、腕に魔力を集めると、今まで持てなかった重たいものが持てたり、

すごい速度で武器を振るうことができるようになる。

自身の体だけを武器に戦っていた時では考えられてないくらい、アルージェの感覚は研ぎ澄まされていた。


「今はまだ、一部分だけにしか集めることができないけど、集めることができる部分が増えれば、

きっと、すごい速度で縦横無尽に移動しながら敵からの反撃を許さないで攻撃する、あのカッコいいシチュエーションができるんだろうな!

んー、でも、きっと上位の冒険者は複数個所に魔力を集めることが当たり前で、これがスタートラインなのかもしれない、魔力操作がここまで重要になるなんて思ってもみなかったや」


実はこれはマイアさんの体質を聞いた時に少し考えていたことを実行しただけある。

マイアさんは魔力を放出できない体質で、そのせいで余命は短いとされていたけど、

それを克服して今ではそのおかげですごい力を出すことができるようになっていた。


つまり、体内で何らかの方法で魔力を消費していたということになる。


おそらくは無意識に魔力操作をして体の一部に魔力を集めて、身体強化を行っていたのではないかと僕は考えて


同じことをしたらどうなるのか試したら同じことが出来るようになっていた。

ただ、僕との違いはマイアさんは出来なければ死ぬというシチュエーションでやっていたので一部分だけでなく無意識に複数個所に魔力を集めることができるようになっていたことだろう。


「ルーネと戦った時、金砕棒を自由自在に扱っていて、追撃の時には飛ばされたルーネと同じ速度で跳んできたて言ってたからなぁ」


それともう一つ、魔力の流れをみることができるようになって気付いたことがある。


ルーネから出ている魔力が明らかに普通の魔力とは違うような気がする。

感覚でしか話せないけど、そこらへんにある魔力は緑とか青とかなんかそんな色をしているが、

ルーネから出ている魔力はそもそもが真っ白で更にきらきらと粒子を纏っている。


「ルーネは毛質だけじゃなくて、魔力まで神々しいんだよなぁ」

隣で丸まっているルーネを撫でながらしみじみと呟く。


ルーネに聞いてみようかと思ったけど、ただキラキラしているだけで変なとこはないし、

何より自分の修行と勉強で手一杯だから追及するのはまた今度にしようと思ってずっと後回しにしている。


「さて、そろそろ教授のところに行かないと、また氷球アイスボールで狙われちゃうな、ルーネ、起きて!教授のところに行かないと!」


アルージェが声をかけるとルーネは起き上がり、体を伸ばす。

「本当に猫みたいだなぁ」とアルージェが呟くとルーネは首を傾げてアルージェを見る。


「何でもないよ!」とアルージェが言うと、ルーネはそれなら早く乗れと頭をちょいちょいと背中側に動かす。


ルーネに跨ってから「ミスティさん、マイアさん僕たちもう出ますね」と声をかけると、部屋の奥から二人の返事が返ってきたのを聞いてコルクスの元へ向かう。


二分ほどルーネにしがみついてコルクスの部屋に到着したので、中に入るとすでにコルクスがいつもアルージェが使っている机に座って待ち構えていた。


「ようやく来たか、人を待たせのが好きな奴だ」

アルージェが来たのを確認して、机から立ち上がり、アルージェを足先から頭のてっぺんまでじっくり見る。


「」


「お前、初めて来たときと比べる魔力操作がうまくなったな」

どこからともなく杖を取り出す。


「そんだけ、魔力操作うまくなれば魔法も使えるだろう、文字も読み書きできるようになったようだし、そろそろ魔法の発動させてみるか」


「ほんとですか!?」

コルクスに近づきアルージェはきらきらとした瞳でコルクスを見る。


「なに年相応のことしてんだ気持ち悪い、魔法教えるからさっさと用意しろ」

コルクスはシッシッと手を振り追い払う。


「はい!そういえば教授!僕杖持ってないです!」


「杖だぁ?んなもんお前には、んなもんいらねぇだろ、杖はあくまで魔力操作の補佐をする役割だけだ、お前は魔力操作を十分できるだろうが」


「そうだったんですね!なら教授は何でもってるんですか?」


「なんでって・・・・、どうでもいいだろそんなこと、とりあえず魔法だ魔法、イメージしやすいものをイメージしろ」


アルージェは頭に氷を思い浮かべる

「できました」


「なら、次は体内の魔力を操作して、どこでもいいから魔力を放出しながらイメージしたものを形作れ」


「形作れってどうやって・・・」

ムムムとアルージェは力む。


「力むんじゃない、イメージしたものになれと魔力に命じるんだ」


「な、なるほど」

徐々にイメージした氷が形作られる。


出来上がっていく氷を見て、コルクスは的を用意する。

「いいぞ、なら次はそれをどのくらいの速さで飛ばすかを魔力に命じろ、そしてあの的に当てろ」


「わかりました」

返事をしてすぐにコルクスが作った的に向かって氷が放たれて、ビチャッと音がする。


「まぁ、初めてにしては上出来だな」


「なんで最後水になっちゃったんだろう」


「今日は氷を作って飛ばす練習をしておけ、的が無くなったらいつでも俺に言え、それと魔力がなくなることはないだろうが、魔力を使いすぎて気持ち悪くなったらこれを飲め」

コルクスがどこからともなく取り出したのは瓶に入った液体


「これは?」

アルージェは初めて見たので確認する。


「魔力が回復するポーションだ、それくらい勉強しとけ」


「すいません!」


「ったく、返事だけはいっちょ前にしやがってよ、まぁいい、なんかあったら声掛けろ、俺は少し向こうで研究結果をまとめる」


「わかりました!」

いっちょ前に返事をして、氷を作り、的に向かって飛ばす練習を再開する。


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