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第百十三話

辺境伯様研究費用をたっぷりと頂き、部屋で楽しく魔道具製作をしていると、突然部屋の扉がバァンと開け放たれる。


「うわぁ!ビックリした!」

アルージェは突然の大きな音に驚き飛び跳ねる。


扉の方を見るとミスティとエマが仁王立ちで立っていた。


「あ、あれ?僕なんかやっちゃいました・・・・?」

アルージェは心当たりを探るが、最近は魔道具製作しかしていないので騒ぎも起こしていないはずだと一人で納得する。


「あぁ、アルージェ。君は本当に・・・」

ミスティが頭を抱えながら話す。


「アルージェ君・・・」

エマも何故か僕を憐れんだ目で見てくる。


「えぇ・・・、本当に何やったか記憶にございません!」


「なるほど、少年にはあくまで自覚がないと」

ミスティはアルージェを睨みつける。


「ひっ、本当に何もしてないんです。信じてください!」

アルージェはミスティの睨みに怯み、土下座の姿勢に移行する。


「はぁ、アルージェ君部屋に引きこもり過ぎです。外に行かないと体に悪いですよ」

エマがため息を吐き、こりゃダメだと呆れながら話す。


「え?籠りすぎ?そんなこと・・・」

よく考えたら魔道具製作を初めてから、授業にもあまり行かず部屋に篭り、ひたすら製作に勤しんでいた。


「言われてみたら、そうかもしれない」


「言われなくても、そうなんだ。カレン教授も心配してたぞ。もちろん私もだ、食事時も部屋から出てこないで、ちゃんと食事は摂ってるんだろうな?」


「食事・・・、そういえばお腹空いたかもしれないです」


「はぁ、本当にアルージェは仕方ないな。今日はエマと王都に行こうって話してたんだ。アルージェも一緒に来るんだ」


「えっ、でも良い案が・・・」


「いいな?」


「は、はい!喜んで!」

ミスティの睨みに負けて、王都に行くことになった。


「食事は王都で摂ろうと思うがアルージェもそれでいいか?」


「はい!問題ないです」


「そうか、なら私たちも用意するがあるから30分後に出発だ」


「わかりました、ならそれまで魔道具製作を・・・」

ミスティがアルージェをギロリと睨む。


「せずに、お風呂でも入ろうかなぁ!ハハハハ」


「あぁ、そうすると良い」


アルージェは風呂場に向かう。


「最近、魔法触ってなかったから少しやっとかないと」

アルージェはそういい魔法陣を展開する。


水を出して体に触れても寒いと感じない程度の温度に調整する。


「よしこれで良いだろう」

水を触って、お湯になっていることを確認。


体にお湯を纏わせて、水流を操作して体を勝手に洗ってくれるように設定。


「あぁ、自分で動かさなくて良いから楽だなぁ」

体を洗った水は、そのまま排水溝へ流す。


「よし!湯船に浸かろう!」

湯船に浸かり、初めは体を伸ばしゆっくりとしていたが、段々と暇になってくる。


「そうだ!」

アルージェは何かを閃いて魔法陣を展開する。


脱衣所で待機していたルーネが魔力の気配に気付きアルージェの様子を見ると、

アルージェは浴槽の水を魔力で操作していた。


水で出来た蝶が風呂場をヒラヒラと舞い、水で形作られた小型の龍を天井付近で回らせる。


ルーネはその光景に目を輝かせて風呂場に入りアルージェとはしゃぐ。


「ん?何やら風呂場が騒がしくないか?」

ミスティがマイアに確認する。


「確かにそうですね。ルーネに見張ってもらっているのでもんだいないと思いますが・・・」


「はぁ、アルージェは時折年相応のことをするからな。念の為に様子を見にいくか」

ミスティはマイアに髪を櫛で解いてもらっていたが、立ち上がりアルージェの様子を見にいく。


風呂場に近づくにつれて、「行くよ!見ててルーネ!」「バウッ!バウッ!」と二人が風呂場ではしゃいでいるのが分かる。


ミスティが「入るぞ」と声を掛けるが、中の二人は気付いている様子がなく、ミスティが扉を開ける。


その時、ザバーンと水が飛んでくる。


「あっ・・・」

アルージェが風呂場の水でドラゴンの顔を形作り、その口から飛ばした水がミスティにかかる。


「アルージェ・・・」

ミスティはプルプルと震えて明らかに怒りが伝わってくる。


「あわわわわ」

アルージェとルーネが抱き合って震える。


それから更に出るのが遅れたのは言うまでもあるまい。


「さぁ、行くか」

準備の出来たミスティが号令をかける。


「お、おー!」

エマはアルージェの方をチラチラと見ながら掛け声をあげる。


「お、おー・・・」

アルージェはあの後ミスティの準備が終わるまで正座をさせられていたので、足がプルプルと震えている。


「わ、わぅ・・・」

ルーネは30分の間、伏せをさせられていたので、体が少し痛くてプルプルとしている。


「まぁ、正直私はそこまで怒っていない。つい忘れてしまうがアルージェはまだ子供だしな。ルーネも楽しいことが好きなのは知っているからな」


「あはは、面目ない・・・」

「わぅ・・・」


「まぁさっきの事は水に流して、王都を満喫しようではないか!」


「確かにポタポタと滴ってましたもんね、フフフ」

アルージェが小声で呟くと、ミスティがギロリと睨む。


「なんでもありません!」

一同は予定より遅れて王都に到着した。





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