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第百十二話

「って言うことなんで、勉学も程々に冒険者ギルドで依頼を受けようと考えてます」

アルージェは魔道具作成勉強の為にお金が必要だと、ミスティへ説明する。


「ふむ、なるほど。魔道具製作か、アルージェが学べば辺境伯領にも間違いなく恩恵があるな。よし、私が出すとしよう。その代わりアルージェはしっかりと学んで、辺境伯領に貢献してくれると助かる」

ミスティは少し考えてアルージェが学ぶ為に必要だった金額を算出してアイテムボックスからヒョイと出し机に並べる。


「えぇ、流石にそれは悪いですよ・・・」

ミスティが出したのは金貨10枚(金貨一枚で1万円程)かなりの金額だ。


「私がアルージェにしてあげられることはこれくらいしかない。それにこれはあくまで先行投資だ。今後辺境伯領に戻ったらしっかりと働いてもらうからな」

アルージェはなかなか受け取らず、返そうとするがミスティは断固として受け取ろうとしない。


「ほ、本当にいいんですね?本当に貰っちゃいますよ?魔道具製作用の道具とか買っちゃいますよ?」

アルージェが何度も確認する。


「あぁ、構わない。素材も必要だろうから、余った分はそっちに回してくれ。私は父に連絡して、追加で貰えないか確認しておく。大丈夫だアルージェ。最悪失敗して借金が残っても、身売りしたアルージェは私が買い取ってやるからな」

ミスティが何故か満面の笑みで話す。


「あははは、洒落にならないですよ」

乾いた笑いでアルージェは話すが、ミスティの目は間違いなくマジの目だ。


「失敗しないように本気でやります」

その目を見てアルージェは決心した。


そして、翌日エマと一緒に魔道具製作セットを見に行って、これだと思った良さげなものを購入する。


寮に帰ってから、早速図書館で書き写してきた物を作ってみる。

初めはただ同じ方向に回り続けるだけのものだったり、縦方向や横方向に一定の動きをし続けるものの製作でそれほど難しくはなかった。


難しいものはこちらから操作をした時にそれに沿って動きを変えるもの。

例えば、同じ方向に回っているものだと回転速度上げたり下げたり、逆回転にするなどである。


だが、動きを制御出来るようになれば、それだけ汎用性が高まる。


そしてアルージェは自信で初魔道具を作り出す。

初めて作ったものは扇風機である。


いやむしろ、今の技術で出来そうなものがこれしかなかったのだ。


「できたー!」

魔道具製作をやり始めて2週間目のことである。

アルージェは製作した扇風機を天に掲げ、ポーズを取る。


「ルーネ見て!これね、ここ押すと風が来るんだよ!」

ルーネの方に向けて風を流す。


初めは興味なさそうに「ワウゥ」と返事していたルーネもいざ風が送られると「バウッ!」と興味が湧いて近づいてきた。


アルージェは近づいてきたルーネに説明を続ける。

「それでね、ここを押すと風が強くなるんだよ!」


「バウッ!?」

送られてくる風が強くなりルーネが驚く。


「どう?面白いでしょ?後はこれの前に行って」

アルージェは扇風機の外枠を持って


「われわれは〜」

誰しも扇風機を見るとやりたくなる例のアレをやってみせる。


それを見たルーネは、キラキラと目を輝かせる。


「へへへ、面白いでしょ」


「何を騒いでいるんだ?」

アルージェの部屋が騒がしいことに気付きミスティが様子を見にくる。


「おぉ、ミスティさんこれ見てください!」

扇風機を天に掲げてミスティに見せる。


「おぉ、魔道具ついに完成したのか。どういう効果があるんだ?」

ミスティはアルージェが初めて作った魔道具に興味津々である。


「これはですね、風を送る魔道具なんです。ここを押すと、ほら!」

アルージェがボタンを押すと羽が回りミスティに風を送る。


「おぉ、これはすごいな!暑くなる時期には非常に助かるな」

ミスティは扇風機を初めて見たようだ。


「あともし可能ならこれを貰っても良いだろうか?父にこんなの出来たと報告して資金を調達できないか相談したくてな。それには見本品が有ったほうが良いと思ってな」

ミスティはこれを使って、アルージェの研究費用を調達する気のようだ。


「是非!これならもう作り方覚えたんで、いつでも作れますから」

アルージェは扇風機をミスティに渡す。


「ありがとう、また何か出来たら教えてほしい。良さげな物は父に見せて研究費用をもらえるかもしれないからな」

扇風機を受け取りマイアに渡す。


「あと詳しい機能を教えてもらえないだろうか。使用時の注意事項があるなら紙に纏めて渡したいからな」


「あぁ、なら僕が紙にまとめときますよ」

アルージェが早速テーブルに向かい、注意点と説明を書き始める。


数日後の朝食時にミスティから

「アルージェ、ちょっといいか?」と声が掛かる。


「どうしたんですか?」

アルージェは先に食べ終わり、そそくさと部屋に戻ろうとしていた。

ミスティから声を掛けられたので、席に座り直して話を聞く。


「すまないな。実は先日の扇風機というやつを父に渡したんだ」


「えっ?王都からなのに早くないですか?」


「あぁ、父がたまたま王様に呼ばれていたらしく近くに居たんだ」


「あっ、そうなんですね。辺境伯なのに領地から離れて大丈夫なんですか?」


「まぁ、何か有ったらすぐに戻れるようにしていると思う」


「へぇ、それで扇風機なんて言ってました?」

扇風機の評価が気になるアルージェ。


「フフフ、それがかなり好評で、今後に期待と言うことで研究費用を追加で出してくれるらしいぞ!」

ミスティも嬉しそうに話す。


「本当ですか!やった!」

アルージェは喜びでピョンピョン飛び跳ねる。


「それから父からアルージェに言付けがあるぞ。これからも期待してる。だそうだ」


「あははは、頑張ります」

貴族様からの期待にはしっかり応えないとなんか怖いから頑張ろうと決意する。


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