カレンさんが教鞭を取る旧魔法体系の授業は、詠唱がないと始まらないので、詠唱を覚えることを重要視している。
だがアルージェに詠唱を覚える意味はないので、あまり出ないでもいいかなと思ったが、
魔法の種類をもっと知りたいので、結局授業には出続けている。
カレンさんに会えるのも嬉しいしね。
詠唱のことを話している時は付与魔法について考えている。
隣にいるカレンに気付きもしないで。
付与魔法にこだわる気はないが、自分で武器を作って、自分で付与魔法を付与してオリジナルの武器を作る。
これは今のアルージェの目標であり、こんごこうなりたいという理想の形なのでどうにか攻撃魔法の知識を流用できないかを考えてしまう。
「そういえば、付与魔法のことばっかり考えてたけど、魔道具ってどうなんだろ」
アルージェが呟く。
隣にいるカレンに気付きもしないで。
「あ、アルージェ・・・」
ミスティがアルージェを袖を揺らして、声をかけるが思考している時アルージェに声は届かない。
そして、魔道具について考え始めて、紙に何かを書き始める。
隣にいるカレンに気づきもしないで。
カレンがアルージェのことを杖で殴る。
「いてっ!」
頭を摩りながら横を見るとカレンが笑顔で立っている。
「アルージェ、いい度胸だね。私の授業に出ているのに魔道具のことを考えるなんて」
カレンは自分の手を杖をペシペシと叩きながら話す。
「い、いやー、これは違うんです!」
アルージェは慌てて言い訳をしようとするが、「何が違うの?」とカレンに笑顔で聞かれる。
「あ、あぁ・・・、すいませんでした」
アルージェは素早く机の上にジャンピング土下座をして、カレンに謝る。
「はぁ、アルージェには詠唱必要ないかもしれないけど、詠唱を覚えると相手からの攻撃が何となく想像できるようになるわ。覚えておいて損はないからちゃんと覚えなさい」
そういって、カレンは黒板の前に戻る。
九死に一生を得たアルージェはカレンの言うことは最もだと思い、詠唱の勉強にもいそしむようになる。
授業は鐘が一つ鳴るまで行われる。
時間的に言えば9時から12時、12時から15時までは昼休憩で15時から18時までという感じで一日が終わる。
この二つのコマで何に出るかは自由で、一週間は七日の内五日間が授業で二日が休息日といった感じだ。
休息日は基本何してもいいので、図書館に籠って勉強する物好きや派閥に行って交流を深める者もいる。
「さーて、今日は図書館に行って魔道具の勉強するぞ!」
アルージェは図書館に籠って勉強する物好きである。
魔道具の本は付与魔法の近くにあったので、いつものところに行けばいいだろうと、エマを探しながら図書館の中を移動する。
結局、エマは見つからず、付与魔法棚あたりに行くともう一人エマという物好きがいた。
「おっ、エマここにいたんだ」
アルージェが声をかけると、エマは笑顔で近づいてくる。
「はい、実はこの絶対防御の障壁を張るペンダントについて調べたくて」
「あぁ、だからこの辺りにいたんだね。実は僕も魔道具について調べたくてさ」
「ほ、本当ですか!」
エマが急に大きな声を出すので、アルージェはエマの口を押えて辺りを見渡す。
「急に大きな声出したら、あのゴーレムが来ちゃうから」
アルージェは鼻に人差し指を当てて静かにするようにジェスチャーをする。
「あっ、すいません。まさか同じタイミングで魔道具について勉強できると思わなかったので」
エマも付与魔法というより魔道具のことを勉強していたらしい
「確かにね、ちなみに魔道具の本はこの辺?」
「はい!こっちです!」
エマは嬉しそうに本の場所まで案内してくれる。
エマが案内してくれた本棚の中から読みやすそうなものを数冊ピックアップして、
近くにあった机へ持って行き、本を読み始める。
エマももともと持っていた本は棚に戻して、
何冊か本をピックアップしてアルージェの近くで本を読み始める。
アルージェは本を読み始めようと思ったが、違和感に気付く。
「あれ?そういえばエマ雰囲気変わったね」
眼鏡はそのままだが髪型が三つ編みではなく、髪をポニーテールになるように縛っていた。
「アルージェ君は前の方が好きですか?」
エマは不安そうにアルージェに尋ねる。
この質問外すとまずい奴だ思いながら
「今の方が明るく見えて好きかな」と答える。
「ほんとですか!よかった!」
エマは上機嫌で本を読み始める。
アルージェはエマの反応を見て、質問に対しての答え間違えてなかったようだと安堵する。
そして、アルージェも魔道具の本を読み始める。
その日一日かけて、魔道具の基礎知識を仕入れてみた。
「なんとなく付与魔法の刻印に似てるから意味は分かったけど、後は実際に作ってみないとわからないな」
「魔道具の素材は購買部に売ってますよ、一緒に行きますか?」
エマが提案してくれたので、それに乗って購買部に行って素材を見る。
「これも!」「これも」「これもたかぁい!!」
魔道具の入門道具、素材とみるもの全てが高くて今のアルージェには手が出せそうにない。
「はぁ、ギルドに行って依頼受けないとお金ないや。ルーネ一緒に依頼手伝ってくれる?」
「ワウッ!」
ルーネのやる気が伝わってくる。
「ありがとう!帰ったらミスティさんに報告しよう!」
そのまま購買部を後にする。