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第百十五話

ミスティとエマの目当ては、王都のおしゃれなブティックで何軒か回る。

買った荷物はアルージェが全てアイテムボックスへ収納する。


ミスティもマイアがアイテムボックスを持っているらしいが、荷物持ちは男の役目だと思ったので引き受けた。


「アルージェは何処か行きたいところあるか?」

ここまでだいぶ回って満足したのかミスティがアルージェに尋ねる。


「あ!いいですか!魔道具屋さんとか魔道具の材料を見に行きたいんです!」


「よし、なら行くとするか。エマもそれでいいか?」


「は、はい!大丈夫です!」


魔道具屋は王都にもあまり無い。

なので、以前に王都をみんなで散策した時に来た魔道具屋に出向く。


付与魔法を勉強し、魔道具についてもわかるようになったアルージェは目を輝かせて物色を始める。


「これとかいいな!組み合わせて使えばやりたいこと出来そうだ!うぉー!こっちには水を出し続ける装置もある!」

アルージェは一通り見て周り、欲しいものに目をつける。

それと材料も売っていたので、そちらも物色する。


「アルージェ、欲しいものは決まったか?」


「はい!欲しいと思ってた魔道具はどれも自分で作れそうなので、今回は材料がメインです」

そう言って欲しいものを全てミスティに伝える。


「分かった。マイア先ほどアルージェが言ったものを全て購入しておいてもらえるか?」


「かしこまりました。すぐに店主に伝えてきます」


「すまんな、今日は友としていてもらっているのに」


「いえ、構いません。これが私の仕事ですので」

そそくさと店主に伝えに行き、全て魔法学校に持ってくるように依頼する。


「ミスティさん、ありがとうございます。本当にいつもすいません」

アルージェがミスティにお礼をいう。


「フフフ、私もいつか見返りがあると思っての行動だからな。気にする必要はない」

ミスティはこういうが本当はアルージェのためになんでもしてあげたいと思っているからの行動である。


「フフフ、惚れたか?」

ミスティがアルージェを揶揄うつもりで聞く。


「はい!ミスティさんのこと本当に大好きです!」

アルージェは本心をぶつける。


「ばかもの!そう言うこと誰にでも言ってるじゃないだろうな!」

ミスティは顔を赤くして照れる。


「無自覚にやっているアルージェ様、恐ろしい子」

注文から戻ってきたマイアがアルージェの無自覚な行動に恐る。


「アルージェ君とミスティさん、本当に仲がいいな。私あの中に入れるのかな・・・」

エマは素直にあの関係が羨ましいと思う。

そして、自分の居場所はここに無いんじゃ無いかと俯く。


ミスティはその様子に気付いて、エマに声を掛ける。

「エマ、私と君では戦う土俵が違う。金にモノを言わせることができるのは私の強みだが、君には君の強みがある。それが何なのかはわからないが、君もすでにアルージェにとっては大切な存在になっていると思うぞ。ほら呼ばれてるぞ?」


ミスティが声を掛けた後、アルージェから声がかかる。

「エマー!一緒に素材選んで欲しいんだけどいい?」

アルージェが手を振ってエマを呼ぶ。


「は、はい、今行きます!」

エマはアルージェの方へ駆け寄っていく。


「いいんですか?」

マイアがミスティに尋ねる。


「構わないさ。私にとっては敵ではあるが、アルージェの味方だからな。味方は多い方がいい。それに私の器は大きいんだよ」


「そうですか、それならいいですが、本当はお嬢様も一緒に買い物したいのでは?」


「ま、まぁしたいが、私には魔道具の素材はわからんからな。今回は譲ってやるさ、それこそ土俵が違うんだよ」


アルージェとエマが素材を更に追加で頼み、魔道具屋を後にする。


「もう一軒行きたい場所が有るんですけどいいですか?」

アルージェがミスティとエマに尋ねる。


「あぁ、構わないぞ」


「はい、大丈夫ですよ」


「よっしゃ!じゃあ行きましょう!武具店に!」

アルージェが急に走り始める。


武具店にエマもミスティもついていく。


「さすがにこれはわからないな・・・」

「そうですね・・・、私もさっぱりです」

武器の良さは流石にエマもミスティもわからなかったので、ルーネがやれやれとアルージェの側に移動する。


アルージェがルーネに向かって武器の話をしていたが、ルーネは「アウ」「アウ」とただ相槌を打つだけのゴーレムと化していた。


満足するまで武具店をみて周りそろそろいい時間になったので寮に戻る。


先導していたアルージェが突然振り返る。


「ん?どうしたアルージェ?」


「いつかミスティさんとエマを連れて、僕の生まれた村に行きたいです」

とアルージェが不意に話し始める。


「生まれた村・・・?両親にご挨拶!?」

エマはボフッと頭から湯気が出る。


「なるほど、確かに側付きとしてご両親にご挨拶は必須だな。失念していたよ。なら卒業したら一度、村に戻ってみるか?」


「是非そうしましょう!あとミスティさんのお家にも遊びに行きたいです!エマも気になるよね?」


「えっ?あ、はい!ミスティさんのご実家気になります!」

エマはアルージェの両親に挨拶をするというイベントを想像して、少し返事が遅れる。


「やっぱりそうだよね!また辺境伯様と戦いたいなぁ!辺境伯様本当に強かった。以前はギリギリ辺境伯様に勝たせてもらいましたけど、今度はあっさり負けてしまうかもしれないですね!」


「えっ、アルージェ君辺境伯様と決闘したことあるの・・・?」

エマが焦る。


「あはは、ミスティさんのこと任せてもいいか見たかったそうですよ。ただ辺境伯様は僕のこと殺すつもりは無かったですし、本当にただの力試しって感じでした」


「それでも辺境伯様に認められるなんてすごいです。私はただ噂でしか聞いたことないですけど、この国の王様もブレイブライン辺境伯がいれば、我が国も安泰だと仰ってると聞いたことがありますよ」


「ははは、エマ流石にそれは言い過ぎだろう。だが父がそう言われているのなら私は誇りに思うな。なら長期休暇の時にでも皆で行くか。是非父にエマを友人だと紹介させてくれ。何もない辺境だが」

ミスティからの了承ももらい、次の長期休暇、皆で家に遊びに行く約束をした。






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