翌日、早速攻撃魔法研究会に顔を出す。
ディビックがアルージェのことを見つけて、笑顔で近づいてくる。
「んふふ、やっぱり来たね。みんな君を待ってたよ」
攻撃魔法研究会のメンバーがアルージェに気付き、自分の作業を止めて近づいてくる。
「今日は俺と!」
「いや、昨日の戦い見ただろ!お前に無理だよ!」
「あいつら言い合ってる間に俺と戦ってくれ!」
「おい!何抜け駆けしようとしてるんだ!」
「こいつを捕えろ!絶対許すな!」
「うわぁぁぁ」
メンバーが騒がしく誰がアルージェと戦うかを議論?している。
「まぁまぁ、みんな落ち着いてよ。アルージェはきっとみんなの相手をしてくれるはずさ。ンフフ」
ディビックがメンバーを宥める。
議論は無理だとわかったので、くじ引きでアルージェと戦う順番を決める。
そして、アルージェは順番通りに一人ずつ戦っていき。
何人かかなり手強くて危ないところはあったがなんとか全員と戦い勝利を収める。
「ありがとうございました!皆さん自身のスタイルを確立していて、戦いづらかったです!」
アルージェが頭を下げて、礼をいう。
「くそぉ・・・、なんであんだけ戦ってアルージェが一番ピンピンしてるんだ・・・・」
元々魔法使いということもあり、メンバーはあまり体力をつけていなかったようで、すでに床に倒れ込んでいる者もいる。
「僕は元々剣士なので、走り込みやら筋肉トレなんかも毎日やってるんですよ!」
「あれだけ体力が有って、魔法も使えるって、弱点ないじゃないですか」
「いや、それくらいじゃないと
「な、なるほど。我々もアルージェさんを見習って、体力をつけるべきかもしれませんね」
「それは俺も思ったぜ」
「あはは、課題を見つけられたみたいでよかったです。それじゃあ今日はこの辺で僕は失礼しますね!」
「また、いつでも来てね。ンフフ」
ディビックが手を振りアルージェを見送る。
「はーい!」
アルージェは寮へ戻る。
「あれ?そういえばディビックさんと戦ってないな。様子見してたのかな?まぁいいや」
ルーネに跨り寮に戻り、今日見つけた自身の課題について考える。
「武器の出し入れが結構ネックになってたなぁ。これがスムーズにできていないせいで後手に回ることが多かった印象だ」
アイテムボックスから望みの武器を出すのは、なかなかに意識を持っていかれる動作だ。
相手によって武器を変えて立ち回りができるのはいいことだが、そこでもたついてしまって後手に回ることが多々あった。
「これは要改善だなー。あとあれだ、みんなソナーのような魔法を使って居場所をすぐに把握してくる。僕もあれを使うか、もしくはソナーのような魔法を阻害するなにかが無ければ厳しいだろうなぁ。
場所が割れてたら魔法を使う時も後だしになるし、新魔法体系の方法で魔法を行使しているからどうにかなったけど、普通だったら即負けだろうね」
聞くところによると、
発生地点を探ろうと思ったが、広範囲に魔法を行使している為、逆探知が難しく見つけるのは困難を極める。
なので対策が必須だ。
後はみんな新魔法体系の魔法に興味があるみたいだった。
あそこにいたみんなはかなり努力して、詠唱を端折って魔法を行使する詠唱破棄、一つの言葉に意味を詰め込む短縮詠唱ができるようになっているらしい。
だけど無詠唱に勝るものはないようで、できるなら新魔法体系で魔法を行使したいと言っていた。
「これは僕だけできめられないからコルクス教授に相談かな?」
ルーネが寮の前に着いたので、吠えて合図してくれる。
「おわっ!?ごめん考え事してた」
「ワウッ」
なんでもいいから早く降りてくれと念が頭に響く。
「あいあいさー!」
アルージェがルーネから飛び降りて寮に入る。
「まだ、ミスティさんは戻ってないみたいだね。なら今の間に
部屋に戻り、自身で書き写した紙を見返すが、あまり有益な情報は載っていなかった。
「まぁ、当たり前か。付与するのを考えてたんだから逆は難しいよなぁ。そもそもどういう原理で付与されてるのかわからないし」
それから何日か
一度性質が変わったものを元に戻すと言うのはかなりめんどくさいもので、それが人間二人の命を賭けたものであれば尚更だ。
「あっ、そろそろ時間なので、今日はこれで失礼しますね」
エマが時間を気にしながらアルージェに声をかける。
「おつかれー、また明日ねー」
アルージェが手を振ってエマを見送る。
エマは最近学校終わりにわざわざ王都に行って格闘術を習っているらしく、体を動かすのにハマっているらしい。
目的があるみたいだけど、僕には教えてくれないんだよな。
しかもかなり厳しく鍛えてもらってるらしくて、この間
「あっ、そうだ!エマ待って!」
アルージェがエマを引き止める。
「は、はい?」
エマがアルージェの言葉で振り返る。
「僕も毎日体を動かして、体力作りしてるんだけどさ、朝一緒に走ったりしない?二人でやる方が長続きすると思うんだけど」
アルージェの提案にエマが笑顔になる。
「ぜ、是非!お願いします!」
「わかった!なら明日の朝から早速いける?一つ目の鐘が鳴ったあと(6時)だからかなり早いけど」
「は、はい!絶対に行きます!」
エマは上機嫌で王都に向かう。
「なんだか、目に見えて喜んでくれてるね。良かったよ」
アルージェも席を立ち寮に戻る。
翌朝からランニングする時はエマと一緒にすることになった。
結構な距離を走ったり飛び跳ねたりするので、厳しそうだったけど僕が励ますと頑張って僕についてこようとしてくる。
エマはすごく気弱に見えるけど、固い意思があるんだと思う。