ここまで本当に大変だった。
だが、遂に思っていた通りに剣が完成する。
それと同時にアルージェは12歳の誕生日を迎えた。
「ふふふ、ついに出来たぞ!エマに伝えにいかないと!」
アルージェは目の下に隈を作って、フラフラと寮に向かう。
途中で体力の限界を迎えて、バタンと床に倒れる。
見かねたルーネがやれやれと首を振って、アルージェを背中に乗せて寮に向かう。
「
ルーネの背中で揺られながら眠るアルージェは寝言を呟く。
アルージェは目を覚ましたのは夕方頃だった。
「うわっ!寝てた!?えっ、てことは武器も・・・?」
アルージェが部屋をキョロキョロと見渡す。
出来た武器は壁に立てかけられていた。
「よかったぁ!夢じゃなかったよぉ!」
アルージェが安堵をして、ベッドに寝転ぶ。
「良くないだろう」
アルージェが寝ているベッド脇で座っていたミスティが声をかける。
ミスティから声を掛けられたアルージェはビクッと体を揺らす。
「また、無茶をして。ほんとアルージェは変わらないな。変わらないのは良いが、こちらの気持ちも少しは考えてくれ」
「あぁ・・・、あははははは・・・・・・」
勢いでごまかそうとしたがミスティの顔を見て、笑い声が先細りする。
「本当面目ない・・・」
アルージェは体を小さくする。
「本当に反省しているんだろうな?」
「すいません・・・」
アルージェはなるべく弱い自分をミスティに見せる。
「はぁ、ならいい。それであれが?」
ミスティは壁に立て掛けている剣に視線を向けてアルージェに確認する。
「はい!そうなんです!
「・・・」
ミスティはアルージェを冷たい目で見る。
「パスを繋ぐ必要があって、少し時間がかかるんですけど絶対できると思います!あっ、パスをつなぐっていうのは、僕がこのために考案した魔法で、」
ミスティの視線に気付かずアルージェはペラペラと話し続ける。
ミスティはアルージェが楽しそう話す姿を見て、次第に表情が柔らかくなる。
「アルージェ様、エマ様をお呼びしましょうか?」
マイアがアルージェの話を遮り、提案する。
「あっ!お願いします!もしかしたら王都の武術教室に行ってていないかもですが」
「本日は図書館に居ると、今朝言っておられましたので少し様子を見てきます」
「はい!お願いします。それでパスを繋ぐ魔法なんですけどね」
アルージェはマイアにお礼を言った後、すぐにミスティの方を向きなおし話を続ける。
「お嬢様、なるべく早くエマさんを連れてきますので頑張ってください」
マイアは会釈して、すぐに図書館へ向かう。
「アルージェ、今回作った武器の機能について本当は全部聞きたいのだが、これ以上話を聞いてしまうと実際に使っているときに驚きがなくなってしまう。そうだろう?だから今は少し我慢してもらって少し腹ごしらえでもどうだろう?」
ミスティがアルージェの話を遮って提案する。
アルージェは少し考える。
「それもそうですね!頑張って作ったので、驚いてほしいですからね!分かりました!」
アルージェはミスティが興味を持ってくれていると嬉しくなり、目を輝かせて答える。
「あっ、でもご飯はあるんですか?」
「もちろんだ。マイアがお昼ごろに食堂からアルージェのために持ってきてくれていたものがある。冷めてしまっているが」
ミスティは作戦がうまくいったことにホッとする。
「熱いの嫌なので、冷めたまま食べます!」
アルージェがベッドから立ち上がり、リビングのテーブルに向かう。
ミスティはマイアが持ってきてくれていた食事をテーブルに用意すると、アルージェがガツガツと食べ始める。
ルーネは壁際で体を丸めて片目だけ開けて、ミスティの巧みな誘導に感心していた。
少ししてマイアがエマを連れて戻ってくる。
マイアから現状を聞いて、ミスティの負担を減らすためにエマは速足で来た。
だが、アルージェが大人しくご飯を食べていることに驚く。
「エマ!ご飯食べてるから少し待ってね!」
アルージェはエマが来たので慌てて食事をかきこもうとする。
「アルージェ君、こんばんは。慌てないでゆっくりで良いですよ。今日はもう予定ないので!」
アルージェはそれを聞いて、かきこむのをやめる。
エマがミスティの傍によりコソコソと話しかける。
「いつものあれはどうしたんですか?」
「あぁ、実際に使っているところを見て驚きたいと言ったら、目を輝かせて喜んで食事を始めたよ」
「なるほど!さすがミスティさんです!」
アルージェは食事を終えて、すぐに皿を流し台に持っていこうとする。
アルージェが皿を持ったことにマイアが慌てて、アルージェの隣に駆け寄る。
「アルージェ様。こういったことは私の仕事ですので、すぐに呼んでください。ですが、お心遣いありがとうございます」
マイアはアルージェから皿を受け取り流し台に持っていく。
「い、いや、違うんだよ・・・。なんかごめんね・・・」
机から皿を除けたのは
アルージェはエマの首飾りに
それだけなのだが何か勘違いをされてしまったようだ。
「それじゃあ、エマ!首飾りの準備はいい?」
「はい!いつでも大丈夫です!」
アルージェはエマの返事を聞いてから頷き、そそくさと部屋に向かう。
すぐにアルージェは部屋から水色の剣を持って出てくる。
後ろには無理やり起こされたであろう、ルーネが眠そうにトボトボとついてきている。
「それじゃ!準備はいい?始めるよ!」
アルージェは嬉しそうに剣を構える。