アルージェはまず自分の周辺に魔法陣を展開する。
そして魔力を操作し、管のようなパスを繋げる魔法を紡ぐ。
この魔法自体は不可視で、魔法陣展開後は何も動いていないように見える。
だが、実際はアルージェの魔力が大きく動いて、すでに首飾りを対象にして魔法が行使されている。
ミスティとエマは新魔法体系を学んでいるので、剣と首飾りが何かで繋がっていると感覚的に理解する。
その後、首飾りが纏っていた魔力を剣が急速に吸収していき、魔力の動きが止まる。
「終わったんですか?」
エマがアルージェに確認する。
アルージェがエマに近づき手を握る。
「ほら、この通り終わったよ」
エマがポロポロと涙を流す。
「えっ、えっ、どうしたの?何か嫌なことしちゃった?」
エマが急に泣き出したので、アルージェは慌てて握った手を離す。
「だ、大丈夫です。少しだけ一人にしてもらえますか?」
アルージェとミスティはアイコンタクトをして、自分たちの部屋に戻る。
「父さん母さん今までありがとう。そしてさようなら。これからは信頼できる友人たちと生きていきます。またいつか会おうね」
エマは膝を突き、天へ祈る。
翌日からはサボり気味だった授業に顔を出す。
まずはカレン教授が受け持つ、攻撃魔法の授業に出席する。
カレンが黒板の前に立ち出席している生徒を見渡す。
アルージェのところで目線が止まり、アルージェの傍まで寄ってくる。
「あんたのこと久しぶりに見たわ」
「い、いやぁ、ちょっと付与魔法に現を抜かしてました・・・」
「はぁ・・・。まぁ勉強してたならいいや。あとそうだ君さ、いい加減空いてる日教えなさいよ。ラーニャとアインがアルージェはまだか。アルージェはまだか。ってうるさいのよ」
「えっ、えっと・・・」
アルージェは直近で何か予定があるかを頭の中で整理する。
「い・つ!」
カレンはアルージェにプレッシャーを与える。
アルージェはカレンの圧に屈して「二日後!二日後の休息日にいけます!」と答える。
「わかったわ、なら休息日に会いに行くって伝えとくわ。もし破ったら」
カレンはギロリとアルージェをにらみつける。
「た、たとえこの身が朽ち果てようとも、絶対に行きます!」
「そう、ならいいわ」
カレンは黒板の前に戻って、授業を始める。
アルージェがカレンの授業を受けている頃、コルクスは学園室に出向く。
ノックもせずに学園長室に入ると、
コルクスを見るや否や、
「おい、やめろ!じゃれつくな!うお!クソッ!」
メンバーがなだれ込んできて可愛いの嵐になすすべなく、コルクスは体勢を崩して床に倒れこむ。
さめがぺったんぺったんと移動して、コルクスの上にマウントを取る。
そしてこれでもかという程、ひれでペチペチと顔を叩く。
「うわっぷ!クソッ!おい!お前らいいかげんに・・・、ぐあぁぁぁ!」
その後も十分以上は無茶苦茶にされた後、学園長がコルクスのもとに来る。
「おぉ、コルクス。相変わらず仲が良いのぉ」
長く蓄えた髭を撫でながらめちゃくちゃにされているコルクスに声をかける。
「ふざけんな!こいつらが勝手にじゃれ付いてくる。ただそれだけだ!」
「フォッフォッフォ!昔からの知り合いじゃったりしてな」
学園長がチラリとコルクスに目線を送る。
「ちげぇ、こいつらとは学園で初めて会った」
「そうか、そうか。お主がそういうならそうなんじゃろうな」
「チッ、めんどくせぇ探り入れやがってよ。今日は用事があってきた」
コルクスはバツが悪そうに話す。
「聖国の動向だが、あいつらアルージェがここに在学していることを恐らく把握してやがる」
「そうか、隠し通すことは出来ないと思っておったが、想像より早かったな」
学園長は
そして、ソファに腰かけて考え始める。
学園長は数秒考えてから顔上げる。
「なぁ、コルクスよ。どうにかしてアルージェをこの学園から外に出してくれんか」
「学園から出せって言われてもな」
「やり方は任せる。愛弟子なんじゃろ?」
「わかった。まぁここにいるよりは別のところにいるほうが安全だろうしな」
コルスクは頭を掻きながら答える。
「フォッフォッフォ。では、任せたぞ」
学園長は机に戻っていき、コルクスも研究室に戻る。
休息日前日。
アルージェは珍しくコルクスから呼び出しがあったので研究室へ向かう。
「教授から呼び出しなんて、珍しいよね。何かあったのかな?」
アルージェは後ろからついてくるルーネに話しかける。
「グウゥン」
ルーネも何故呼び出されたかわからないので、首を傾げる。
「そうだよねぇ。呼び出しとかほんと久しぶりじゃない?」
「バウッ!」
ルーネが首を縦に振り答える。
研究室に入るとコルクスが、アルージェの到着を待っていた。
「お待たせしました。呼び出しなんて久しぶりだったので少し遅くなりました」
コルクスはアルージェの言葉に何も反応せずに用件だけを告げる。
「お前この学校から出ていけ」
「えっ・・・?」
アルージェはコルクスの言葉に驚き、言葉を失う。