目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

第百四十一話

「まさか身体強化までできるとはね、ならこちらも!」

アインは金色に輝く魔力を纏い、身体強化を施す。


「金色の魔力?」

アルージェは気になったが、そのまま切りかかる。

そこからアルージェは両手に持ったショーテルで、アインに攻撃を連打する。


だがアインは巧みに盾を操り全て受けきる。


怒涛の連打の中にアルージェの隙を見つけて、アインはそのまま盾を押し出しシールドバッシュを繰り出す。


「ガハッ!」

アルージェは何の抵抗もなく、アインからのシールドバッシュを顔に食らい後方に吹き飛ばされる。

衝撃で意識が飛びそうになるが何とか踏ん張り、ショーテルを地面に突き立てて飛距離を短くする。


その様子を見て聖堂騎士達がざわつき始める。

「あんなの食らってあの子は大丈夫かよ」

「まだ子供なのにアイン様もやることがえげつないぜ」


アルージェはショーテルを見る。

付与魔法を施していたショーテルは地面に突き立て衝撃を緩和したので、折れてしまっていた。


「ごめんよ」

アルージェは折れたショーテルをアインの顔を目掛けて投げつける。

アインは首だけ動かし躱す。


「想像してたよりずっとお行儀の悪い子だ」

アインは最近お行儀のいい訓練ばかりをしていたため、アルージェの攻撃に嬉しくなり自然と笑みが出る。


「お行儀よく見えましたか?」

アルージェは口から出た血を拭いニヤリと笑う。


「無害な草食動物だと思っていたよ」

アインがアルージェとの距離を一瞬で詰める。

そして、一閃。

その後も追撃を繰り出すがアルージェは全て躱す。


アルージェはアイテムボックスからブロードソードを取り出し、アインの剣筋を読み剣を弾く。


「草食動物もやられてばかりじゃないですよ?」

先程の破裂する小球ブラストボールとは違う、アルージェの身長と同じくらいの大きさの魔法陣をアルージェが展開し、剣を弾かれて無防備になったアインの体目掛けて何度も氷の塊を放つ。


これだけ接近していたのに詠唱がなかった為、アインは油断をしていた。

新魔法体系による無詠唱魔法。

アインは盾を構えることも出来ずに氷の塊をまともに体に受けてしまう。


「ぐはぁ!」

アインがそのまま後方に吹き飛ばされる。


アルージェはブロードソードをアインに投げてから、フランキスカをアイテムボックスから取り出し、アインに向かって投擲する。


アルージェはそのままアインに追撃を入れようと接近する。


吹き飛ばされながらもアインはアルージェから放たれた投擲武器を剣で弾く。

アルージェが接近している最中、アインの口が動いていることに気付く。


「光の雨、天よりの恵み、我が道を照らす光となれ『光の雨シャイニングレイン』」

アインは魔法の詠唱が完了したと同時にアルージェに向かって魔法を行使する。


「しまっ・・・」

アルージェは光魔法の速度を甘く見ていた。

アインの方向からではなく、意識外である空からの奇襲。

幾多の光の雨がアルージェに降り注ぐ。


アルージェが居た場所に砂煙が巻き起こる。


「ちょっとアインやりすぎでしょ!」

カレンが叫ぶ。


「騎士の皆さん!はやく救助を!!」

ラーニャが慌てて騎士団に声を掛けて、救助するように指示を出す。


「これでもまだ立ってるのかアルージェ!本当に強くなったな!」

アインが笑いながら叫ぶ。


可変式片手半剣トツカノツルギ・弐式=ヤタノカガミ」

アルージェの声が響く。


砂煙が晴れると無傷のアルージェが立っていた。

そのアルージェを中心にふよふよとミスリルで出来た盾が浮かぶ。

手には真っ白の剣を持つ。


「ここからもっとペース上げますよ。ついてこれますか?」

アルージェは魔力の奔流が起こる程、体内から魔力を放出し、纏い、身体強化を施す。


「ここまでとは想像していた以上だ。アルージェ君こそガッカリさせないでくれよ」

アインは魔力の奔流は見えていないが、アルージェから圧を感じていた。

剣と盾を構え直し、アインはアルージェの攻撃に備える。


「す、すごい」

その魔力総量を見てカレンが絶句する。


可変式片手半剣トツカノツルギ・参式=アメノムラクモ」

アルージェが呟くと、浮いていたミスリルの盾が変形して、剣になる。

アルージェは二つの剣を両手に持ち、構える。


「行きます!」

アルージェがアインに向かって走り出す。


「もっと君の力を見せてくれ!」

アインもアルージェに向かって走り出す。


だが、二人の足元に外野から魔法が飛んでくる。


「あんた達もう終わりよ!二人ともやりすぎ!アインだってもうアルージェの強さはわかったでしょ」

カレンから制止を受ける。


「えっ、そりゃないよカレン!やっと体が温まってきた」

アインが剣と盾を構えて続けようとすると、魔法がさらに飛んでくる。


「あんたバカなの!子供相手に本気になるな!」

カレンの後ろに魔法陣が展開されていた。


「でも、アルージェだって」

アインがアルージェに視線を向けると、アルージェは剣の形態を元の状態に戻していた。


「アインさん、すいません。僕はまだ学生なので教授の言葉は絶対なんですよ!」

アルージェはアイテムボックスに剣を仕舞おうとしている最中だった。


「ほら、あんたも早く剣をおさめなさい!」

カレンがアインに言うとアインは渋々剣を収めて、身体強化を解く。


「ん?」

アルージェが剣を見ると、結晶化した何かが可変式片手半剣トツカノツルギに纏わりついていた。


「なんだろこれ?後でコルクス教授に聞いてみよう」



この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?