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第百四十二話

「はぁ、仕方ないね。アルージェは本当にブロンズかい?そんだけ強ければシルバーは硬いよ?僕の方からシルバーになれるようにギルドに推薦しておこうか?」

アインは剣を鞘に収めて、盾を背中に担ぐ。


「いやー、当分は学生の予定なので、このままで問題ないです!」


「そうかい。アルージェがそれでいいなら僕はこれ以上何も言わないよ。それより動いたらお腹空いたね。この後もまだ時間あるかい?可愛い後輩にご飯奢らせてよ」


「いいんですか!?是非!」

アインとアルージェは話ながらラーニャとカレンの元に寄っていく。


二人の元につくとまずラーニャが話しかけてくる。

「アルージェ君、本当に強くなりましたね。アインさんの魔法を見て流石に私ダメだと思いました・・・」


「君、暴食スライムグラトニースライムと戦った時より強くなってない?流石にあれは死んだと思ったわ」

カレンは笑いながらアルージェに話しかける。


「あれからも毎日訓練続けてますから!それに最近は組み手の相手が出来たので、対人も訓練できるようになったんですよ!」

ニマニマと笑いながらアルージェが話す。


「あちゃー、やっぱりアルージェもアイン側の人間だわ」

カレンは額を抑える。


「ははは、そうみたいだね。すごく親近感湧いてる自分がいるよ。そうだ、この後アルージェとご飯行くんだけど二人も一緒にどうだい?」


「あっ!いいですね。私もお腹空いてきました」


「あたしも賛成!どこ行くの?いつものとこ?」


「んー、そうだね。人の目を気にしないで食べたいし、あそこに行こうか!」


聖堂騎士の皆さんに挨拶して訓練場を後にする。


錬金術の賜物アルケミスト・ギフト


アイン達に連れられて来た店の名前だ。


「アルケミスト・ギフト・・・?錬金術師・・・?」

アルージェは疑問を抱きながら、アイン達に続いて入店する。


「いらっしゃいませ。ご予約はしてますでしょうか?」

中に入るとピシッとシャツとベストを着こなした男性が近づいてくる。


「いや、予約はしてないんだけど、これを」

アインが店員に何やらキーホルダーを見せる。


「少々お待ちください」

男性が奥に下がっていき、数秒で戻ってくる。


「確認が取れました。ようこそ、アイン様。本日は4名様でご来店でしょうか?」


「うん、そうだよ」


「かしこまりました。こちらへどうぞ」


そのまま店員に個室へ案内される。


「では、ごゆっくりどうぞ」

店員は綺麗なお辞儀をして、そのままホールに戻っていく。


「ふぅ、やっと座れたね」

アインが盾を壁に立てかけて、席に座る。


カレンとラーニャも杖を壁に立てかけて席につく。


料理も頼まず談笑していると、扉が開き料理が運ばれてくる。


「料理いつの間に頼んだんです?」

アルージェがアインに尋ねる。


「ここは僕達の行きつけだからね。王都で何かあればいつもここに来るんだけど、頼む物もいつも一緒だから待ってれば出てくるようになったんだよね」


「王都すごい・・・、そんなことあるんですね・・・」


「あはは、そんなのここだけだよ。料理人も面白いやつでね、きっとアルージェとも意気投合出来ると思うよ」

アインが楽しそうに話す。


「確かにここの料理人変わってるわね。自分は錬金術師だって言い張るんだもんね」

カレンは運ばれたきた料理を食べながら話す。


「でも、悪い人ではないんですよね」

口に入っているものを飲み込んでからラーニャも話す。


「まぁ、アルージェも食べてみてよ」

アインに勧められてアルージェもまずはスープを口に運ぶ。


「美味しい」

飲むだけでなんだかホッとする。

とても優しい味だ。


フォークとナイフを持って、次はメイン料理に手を出す。

ただのカツに見えるが、切ると中からチーズが溢れ出てくる。


どうやら細切れを重ねて作られているミルフィーユカツのようだだ。


「あぁ、これも美味しい!とんかつソースとか白米が欲しくなるなぁ」

アルージェはガツガツと食べ進める。


「あはは、気に入ってもらえてよかったよ」


結構な量有ったが、皆ペロリと食べ終わる。


最後のデザートが出てくる。


見た目はただの蒸しパンだ。


「あれ?これどっかで見たことある」

どこで食べたか思い出そうとしていると扉がバァンと開く。


「アイン!カレン!ラーニャ!久しぶりじゃないか!」

扉の方へアルージェが視線を向けると、そこには見知った顔のずんぐりむっくりが居た。


「久しぶりだねペポル!元気にしてたかい?」

アインが片手を上げてペポルに挨拶する。


「あんたホントいつでも元気ね」

カレンは呆れながら話す。


「お久しぶりです。ペポルさん」

ラーニャは律儀にお辞儀をして挨拶する。


「んんん?」

ペポルがアルージェに視線を向ける。


「き、君は!インスピレーション君じゃないかぁぁぁぁ!」

ペポルはアルージェに指差し叫ぶ。


「錬金術師さん!!!」

アルージェもペポルに指差し叫ぶ。


「ん?もしかして知り合いだったのかい?」


「知り合いというか、以前錬金術師さんが屋台を出しててごちそうになったんですよ」


「まさか、君がアイン達と知り合いだったとはね。僕たちは運命の環で繋がっていたんだね!」

ペポルは嬉しそうに飛び跳ねたりしてはしゃぐ。


「なんだろう、それ逃げられそうにないですね」


「僕は君に会えて嬉しいよ!」


「まさか、ペポルさんがこのレストランのシェフなんですか?」


「チッチッチ。シェフではなくファーストアルケミストだよ」

ペポルは指を立てて横に振る。


「ペポルさんめちゃくちゃすごい人だったんだぁ」

アルージェは少し遠くを見つめる。


「君にもこれをあげよう。是非いつでも顔を出してくれ!」

ペポルはアインが持っていたキーホルダーのようなものをアルージェに渡す。


「この店、いつの間にか予約しないと入れなくなっちゃったんだけど、それを入り口で見せれば予約無しで入れるよ。いつでも待ってるからね」


「いいんですか?ありがとうございます!あっ、でも当分王都を離れないと行けないので、来るのは少し先になっちゃうかもしれないです」

アルージェは肩を窄める。

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