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第百四十三話

「ん?アルージェどっかいくのかい?」

アインがアルージェの言葉に反応する。


「そうですね。実は色々あって、聖国に追われてる身なんです。だから王都を離れて二ツールと辺境伯様の家に行くんですよ。後三日もしたらフォルスタに向けて出発しないといけないんですよ」


「辺境伯に?奇遇だね。僕達も辺境伯に呼ばれてて、近々王都を出ようとしてたんだ。よかったら一緒に行かないかい?」


「いいんですか?先にニツールに行きますけど」


「あぁ、僕は構わないさ。久しぶりにニツールにも寄りたいしね」


「ちょっとアイン勝手に決めないでくれる?」

デザートに出てきた蒸しパンを食べながら、カレンが会話に割り込む。


「えぇ、ダメかい?」


「別にダメとは言ってないじゃない。ただ勝手に一人で決めないで相談しなさいって言ってるの」


「人数が多い方が楽しいかと思ったんだけどダメかな?」


「だからぁ!はぁ・・・もういいわよ」

カレンは頭を抑えて蒸しパンの残りを食べ始める。


「私もアルージェ君達と一緒に行くのは反対はありません。けれどアインさん。行く場所まで勝手に決めてしまうとこちらの予定もありますので、その辺り先にこちらに確認しても良かったのではないですか?」


「確かにラーニャの言う通りだ。アルージェと一緒に行けると思うと少し気持ちが高まってしまっていたよ。すまない。」

アインが頭を下げる。


「カレンさんもこれで問題ないですか?」

ラーニャがカレンにウインクする。


「えぇ、問題ないわ。ありがとうラーニャ。私は今期授業も一段落したから、長期休みに入るし長くなっても大丈夫よ」


「私も巡礼の為と言えば、長期間空けることを可能ですよ」


「よし!なら決まりだね!」


「はい!なるべく早く出たいので、三日後くらいにニツール側の門で集合で大丈夫ですか?」


「了解!」

「分かったわ」

「分かりました」

三者三様の返事をする。


「そうか、皆王都から出ていってしまうんだね。僕はしばらく退屈しそうだ。それならこの今溢れてくるインスピレーションだけでも!あぁぁぁぁぁ!もうだめだ!それじゃあ!」

ペポルは一人で叫びながらバァンと扉を開き、部屋から出ていく。


「あぁ!またな!」

アインは出ていくペポルに返事するが、ペポルの耳に届いているかは不明だ。


アルージェ達は出てきていたデザートまでペロリと平らげる。


「あぁ、美味しかった!」

椅子にもたれ掛かり、アルージェはお腹を摩る。


「本当、料理人は変人だけど、ご飯だけは美味しいのよね」

カレンも満足げに椅子にもたれ掛かる。


ラーニャは口元をランチクロスで拭く。


「なら、今日はもう帰ろうか。三日後に出るなら準備もあるしね」

アインが皆の顔を見て、提案すると各々頷く。


アルージェ達は先に店の外に出る。

少ししてからアインが会計を済まし店の外に出る。


「アインさん!ご馳走様です!」

アルージェがアインに近づき元気にお礼を言うと、アインは少し驚いた顔をしてから微笑む。


「アルージェは本当に年齢がわからなくなるよ。なら三日後、僕達は鐘がなる前に集合するからアルージェも早く来てくれよな!」

背を向けて片手を上げて、アインは立ち去る。


「私は先に買い物を済ませてから帰ります」

ラーニャはカレンとアルージェに手を振って、市場に向かう。


「カレン教授はもう戻ります?」


「そうね。私は学園に戻ろうかしら。空き馬車いたら良かったけどいなさそうね」

カレンはすぐに乗れそうな馬車を探すが、どの馬車も人が利用してそうなので歩いて学園に向かう。


「あっ、少し待ってもらえたら早く帰れますよ!」

アルージェがカレンを引き止める。


「えっ?本当?なら少し待とうかしら」


アルージェは目を閉じてルーネに念を飛ばす。


「おっ!届いた!数秒でここに来てくれるみたいです!」


「来てくれる?」

カレンが首を傾げると、数秒後にルーネが到着する。


「ルーネ!待ってたよぉ!」

アルージェがルーネに抱きつく。


「バウッ!」


「えっ?もしかしてこの子に乗るの?」

カレンは少しビビりながらアルージェに聞く。


「はい!ルーネ。カレン教授も乗せてもらえる?」

アルージェはルーネの頭を撫でながら尋ねる。


「ワウッ!」

ルーネは元気に返事をする。


「ルーネも大丈夫って言ってます!」

アルージェがルーネに跨る。


「ほら!教授!」

アルージェがカレンに手を差し出す。


カレンはアルージェのことをボーッと見つめる。


「あんた生意気!」

カレンがアルージェの手を取ると、アルージェがカレンを持ち上げてアルージェの後ろに乗せる。


「教授、掴まっててくださいね!」

アルージェがルーネに指示を飛ばすとルーネが寮に向けて走り始める。


「きゃっ!」

カレンがルーネの初速に驚き、声を出す。


カレンの悲鳴が聞こえたので、アルージェはルーネに減速するように指示する。


数分後、学園に到着する。


ルーネからアルージェが飛び降りる。

「ありがとうね!すごい早くついたよ!教授降りれますか?」

アルージェが手を差し出す。


「え、えぇ、大丈夫よ」

カレンがアルージェの手を取り降りるが、地面に座り込んでしまう。


「あはは、部屋まで送りましょうか?」


「だ、大丈夫よ。バカにしないで!」

カレンはなんとか立ち上がるが、また座り込んでしまう。


「・・・」

アルージェがカレンを見る。


「な、何よ!仕方ないでしょ!あんなに速いと思わなかったんだから!」


「何も言ってないですよ・・・。部屋まで送りますね」

カレンの体を支えて、カレンの部屋まで連れていく。


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