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第百四十四話

翌日


デゾルブ剣に出来た結晶を見せる為、コルクス教授の元へ向かう。


「おじゃましまーす!教授いますか??」

アルージェが元気よく部屋に入る。


「お前まだここにいたのか」

コルクスは研究机で何やら作業をしていたが、アルージェの方へ視線を向ける。


「明後日には出ていきます!今日は聞きたいことが有って来たんです。これ何か知ってますか?」

アルージェがアイテムボックスから剣を取り出し、形状を変える。


「あのなぁ、俺はお前と遊んでる時間はねぇんだ」

コルクスは嫌そうな顔をして言うが、作業の手を止めてアルージェの側に寄ってくる。


「これなんですけど」

なんだかんだで寄って来てくれる教授優しいとは口に出さず、デゾルブ剣にまとわりついた結晶を見せる。


「ん?なんだこれ?魔力を帯びてるな」

アルージェから剣を取り上げてじっくりと観察する。


「どうやら濃縮された魔力の結晶みたいだ。なにしたらこんなもんが生まれるんだ?」

アルージェに剣を返さず、観察を続ける。


「知り合いの方に光魔法を撃たれて、付与解除ディスエンチャントと同じ要領で咄嗟に吸収したらこんなものが出来てました」


「なるほどな。なら本当に魔力の結晶ってことか。ふむ、成形したら魔玉になりそうだな」

コルクスは結晶を剣から剥がし、魔力操作をして結晶を綺麗な玉にする。


「こんなもんだろ、魔玉は売れば金になるぞ」

コルクスは剣と魔玉をアルージェに渡す。


「ちなみに知ってるだろうが魔玉は武器に何かしらの能力が付与できるようになる。けど効果は使ってみな分からん。これならお前も出来そうだから、やり方教えてやるよ」

コルスクが残った結晶で、アルージェにやり方を伝授する。


「おぉ!出来た!」

アルージェは出来上がった魔玉を天に掲げて喜ぶ。


「ちなみにこれって売ったらおいくらに・・・?」


「そうだな、光属性となるとかなり高えだろうな。金貨五枚は余裕ってとこか」


「金貨五枚!?」

アルージェは驚きで魔玉を落としそうになり、慌ててバランスを取る。


「あぁ、安く見積もってそんなもんだな。魔玉ってのは本来高位な魔獣を倒した時に手に入るもんだからな。かなり珍しいもんなんだよ」


「おぉ!ついに金持ちへの道が見えた!」

アルージェはいそいそと魔玉をアイテムボックスへ片付ける。


「ん?お前魔道具作ってるんじゃないのか?」


「えっ?作ってますけど?」


「それなら金貨五枚くらいすぐ稼げるだろう、販路がねぇのか?」


「い、いやぁ、ちょっと世に出してはいけないものを作ってるんで・・・」


「何作ってんだよお前。それと既に知ってるだろうが、魔玉は魔道具製作では半永久的に魔力を供給できる装置になるから幅が広がるな」


「ど、どういうことですか!」

アルージェが前のめりになる。


「なんで知らねぇんだよ!付与魔法の授業出てたんじゃねぇのかよ。はぁ、魔道具を使用するには基本的に使用者の魔力を注ぎ込んで使うことになるだろ?それを魔玉で補うってわけだ。魔玉は魔力の塊だからそれを魔道具に組み込むことで、動力の確保ができるってわけだ。魔道具で使う魔力なんて魔玉視点で見たら塵みたいな量だ。だから半永久的に魔力を流し込み続けられるってわけだ」


「おぉ!ってことは魔道具製作が更に楽しくなるんですね!ふふふふ」

アルージェはニヤニヤして夢想する。


「お前、ガキのくせになんて顔してんだよ」

コルクスはアルージェの顔を見て、軽く引く。


「そうと決まれば魔道具作成!って思ったけど、そろそろ学園から出ていく用意しないといけないんだった・・・。はぁ、流石に野宿中にやるのもなぁ・・・。いや、野宿中にやれば良いのか!そうしよう!そうしよう!」


「魔道具作成なんて精密作業、外でするのは辞めとけ。魔玉無駄になるぞ」


「この剣があれば、魔玉はすぐに作れるし。練習ってことで!」


「魔玉を使い潰すなんて、ドルンが聞いたら卒倒するだろうな」


「あはは、でもこの剣のおかげですけどね」

アルージェは急に俯く。


「あっ?なんだ?」


「コルクス教授には本当に色々お世話になったなって思って・・・、色々思い出しちゃいました」


「はっ、聖国なんてサッサと潰して学園に戻ってくれば良いだろ」


「あはは、教授なら本当に潰してしまいそうですよね。正直言って今の僕では読み手ライブラリアンに勝てるのか不安で・・・」


「ぐぇっ」

アルージェは当然後頭部に衝撃を受けて、床に倒れ込み声を出す。


「いたた、酷いですよ。結構本気で悩んでる一番弟子に対してひどくないですか」

頭を摩りながら起き上がり、コルクスに視線を向ける。


「あぁ?誰が一番弟子だ。お前はもう用済みだ!破門だ!破門!」


「うぅ、そうですか・・・。はぁ、教授に相談した僕が馬鹿でした。それじゃあ僕はもう行きますね。最後になりましたが、本当にお世話になりました!」

アルージェは研究室から出て行こうとする。


コルクスはため息を付き、アルージェを引き止める。

「おい、待て」


アルージェが振り返ると、透き通った綺麗な石が付いたキーホルダーをコルクスがアルージェに向かって投げる。

「お前にこれを渡しとく」


「これは?」


「お前の居場所が分かる魔道具だ。そうだな、これ以上は絶対に死ぬ。いや、指先すらも動かせないってなったら、それにありったけの魔力を注げ」


「魔力を注ぐとどうなるんですか?」

透き通る石を通してアルージェはコルクスを見る。


「一回だけ俺が助けに行ってやる」


アルージェが目を見開き、コルクスを見る。


「えぇ!?転移魔法が組み込まれてるってことですか!」


「あぁ、そうだ。お前の魔力総量なら余裕で発動する」


「きょ、教授!!」

アルージェが目を潤ませてコルクスに抱きつく。


「お、おい!ふざけんな!って鼻水!汚ねぇ!やめろ!」


「ありがとうございます!」

アルージェは感謝を述べて、部屋を後にする。


コルクスはアルージェの姿が見えなくなるまで見送る。

「ちっ、成り立ての読み手ライブラリアンなんかに殺されんなよ」


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