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第百四十五話

更に翌日。


鍛冶場で武器を多めに作って、アイテムボックスに保管する。


そして、遂に出立の日。


マイアさんが片付けてくれた寮の部屋を見つめる。


「どうした、アルージェ?」

ミスティがアルージェの様子に気付き、声を掛ける。


「あぁ、すいません。絶対にみんなで戻ってくるぞって思ってました」


「フフフ、そうだな。絶対に皆で戻ってこような」


「わ、私もまだまだ魔法学びたいので、絶対みんなで戻って来ましょうね」


「はい!絶対に戻って来ましょう!門行く前に冒険者ギルド寄っていいですか?」


「あぁ、いいぞ」

「だ、大丈夫です!」


二人の了承を得たので、門に行く前に少しだけ冒険者ギルドに寄る。

折角フォルスタに移動するので、配達の依頼が無いかを確認するが特に依頼は無かった。


ギルドから出て、集合場所の門に移動をする。

門に行くとアイン達が既に集合していた。


「お、アルージェ!来たね!そちらの女性達も一緒かい?」


「はい!こちらがミスティさんとマイアさんとエマ、それとこの大きな狼は僕の相棒のルーネです!」


「ミスティだ、よろしく頼む。隣に居るのは側付きのマイアだ。私たちの身の回りの世話を任せている」


「よろしくお願いいたします」

マイアはスカートの裾を持ちカーテシーをする。


「よ、よろしくお願いします」

エマもマイアの動きを見て、スリットの入ったチャイナドレスの様な服の端を持ちカーテシーをする。


「バウッ!」

ルーネは元気に挨拶をする。


「ミスティちゃんはブレイブライン家の子だから、あんた余計なことしない方がいいわよ」

カレンがアインに釘を打つ。


「余計なことって・・・、僕が一度でもしたことあるかい?」


「どこの村行っても、女子勢に囲まれてるから念の為よ」


「僕は何もしてないんだけどね・・・」

アインは頬を人差し指で掻く。


「あはは、アインさんかっこいいですからね」

アルージェが笑う。


「アルージェ、そちらの方達も私達に紹介してもらえないか?」


「あっ!そうですね。まずこちらがアインさん!冒険者ギルド内では勇者再来と謳われている僕が尊敬している方です!」


「あはは、それは少し恥ずかしいな。まぁ長い期間一緒になるからね。仲良くしていこう!」


「そしてこちらはラーニャさん。宗教のことはわからないけど、すごく高位な方です!」


「いえ、私なんてまだまだですよ。皆さんよろしくお願いしますね」


「アルージェ、その大丈夫なのか?」

ミスティがアルージェに耳打ちをする。


「はい、聖国とは完全に別の宗派になっているらしく。交流も無いそうです」


「そうですね。聖国は主に主神であるレムール様を完全なる存在として信仰していますが、我々はレムール様だけではなく、レムール様の周りでレムール様を支える神も揃って完全な存在として信仰しております」

ラーニャにミスティの耳打ちが聞こえたようで解説をしてくれる。


「だから大聖堂のステンドグラスには色々な人が描かれていたんですね!」


「はい、あそこにはレムール様はもちろんレムール様を支える神も描かれていますよ。そのせいではあるんですが、聖国で広く普及しているレムール教の方達とは理解し合えないとも考えています」


「ふむ、なら問題はないのか・・・?」


「問題ないと思っていただければと、小さい頃のアルージェ君を知っている私には裏切ることなんて出来ませんから」

ラーニャはアルージェを優しい顔で見つめる。


「そうか、私達もアルージェを守りたい気持ちがあるので、少し過敏になっていたかもしれない。疑ってしまって済まない」

ミスティが頭を下げる。


「いえ、そんなミスティさんの気持ちは尤もです。長い旅になります。そんなかしこまらないで大丈夫ですよ」


「ちょっと、あたしのこと忘れてない?」

カレンが口を挟む。


「カレン教授は皆さん知ってますよね?学園で攻撃魔法の授業を担当してくださっている方ですので」

思い出したかのようにカレンの紹介を始める。

カレン教授の授業を受けていなかったマイア以外は頷く。


「あれ?マイアさんは会ったことないですか?」


「そうですね。授業の際はお嬢様より休息の時間を頂いておりましたので。ですが、お名前は聞いたことがあります。学園長がよくカレン教授の話をしておられましたので」


「あっ、そうだったんですね。カレン教授はすごい人なので!」


「なんかあたしの紹介だけ適当じゃない?別にいいけど」


「よし、それじゃあ挨拶も終わったし出発しようか!」

アインの言葉に頷き門に向かうと、聞き覚えのある音が聞こえる。


「ん?この音って」

アルージェが振り返ると、首に自分達の荷物を纏めた風呂敷を巻いている秘密結社らびっといあー達の姿があった。


「どうしたのみんな。もしかしてお見送りに?」

アルージェが駆け寄りうさぎに話しかける。


うさぎはキュピキュピと音を立てながら必死に何かを伝えようとする。


「ふむ、ふむふむ。なるほど。全くわからん」

アルージェの言葉にさめが反応してペチペチとヒレでアルージェを叩く。


「うわ!ごめん、ちょっと!あぁ助けて!」

マイアが近寄ってきて、さめの動きを止めて話を聞いてくれる。


「どうやら、私達についていくと言ってます」


「えっ?大丈夫?結構危ない旅だしそれに・・・」

学園長の言葉をアルージェは思い出していた。


“誰か一人でも欠けてしまえばみんな動かなくなる“


という言葉を。


秘密結社らびっといあー全員でガッツポーズを取る。


「何かあればアルージェ様が守るから大丈夫と言ってます」


「えっ、そりゃもちろん何も無いように守るけどさ」


ぴょこぴょこと秘密結社らびっといあーは飛び跳ねる。


「ならさっさといくぞ!ついてこい!と言ってますね」


「そっか、皆行く気満々なんだね。学園長の許可があるなら別にいいんだけどどうなんだろ?」


アルージェの言葉に大きいパンダが手紙をアルージェに渡す。


「ん?」

アルージェは受け取り中身を確認する。


アルージェへ


いきなりですまんが、秘密結社らびっといあーの皆がどうしてもお主に着いて行くと言うので、旅が終わるまで預かってもらえぬか。


儂はそれとなく止めたのじゃが、本人達はもう行く気になっていて止めることは無理じゃった。


お主ならきっと秘密結社らびっといあーの皆を守ってくれると信じておる。

よろしく頼んだぞ。


追伸

学園の皆がお主の無事を祈っておる。

また、学園でお主の姿が見れることを楽しみにしておるぞ。


「あぁ、しっかりと許可とって来てるみたい。みんなぬいぐるみなのにしっかりしてるね」


「ははは、なら良いじゃないか。アルージェは本当皆んなに愛されてるな!」

アインがアルージェの肩をポンポンと叩く。


「ありがたいです。それじゃいきましょうか」

今度こそアルージェ達は王都を出発し、フォルスタへ向かう。

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