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第百五十話

フォルスタの目と鼻の先というところまで到着した。


マイアと秘密結社らびっといあーメンバーは、朝食の準備が終わり席に座る。


みんなが席に着いたことで朝食が始まる。


「ようやくここまで来たね。今日中にはフォルスタに着くだろう」

アインが朝食を食べながら皆んなに話しかける。


「むっ、確かにこの辺見たことある気がするな」

ミスティも辺りを見渡す。


「なんかあっという間にって感じですね」


「そうですね。私も楽しくてあっという間でした」

エマの言葉に、隣に座るラーニャも賛同する。


「そう?私はそんな感じしないけど」

カレンだけはいつも通りだったようだ。


「まぁ、カレンにとってはいつもと変わらない旅だったからね。でもアルージェ達には有意義になったんじゃないか?」

アインはアルージェ達に視線を向ける。


「この一月でみんな見違えるほど強くなったと思うんだよね。学生だからからかな?順応性が高いし、素直に僕のアドバイスを聞いてくれるからどんどん伸びる。自分達も実感あるんじゃない?自分に合った戦い方を確立出来たって?」


「そうですね。がっちりとした土台が出来たような気がします」

アルージェの言葉にミスティとエマが頷く。


「実りある一月に出来て良かったよ。みんな僕が直々に鍛えたから当たり前だけどね。冒険者ギルド内のランクで言うなら、ゴールド寄りのシルバー辺りにはなってるんじゃないかな。皆にやる気があればすぐにでもギルドで推薦したいくらいだよ」

アインは笑いながら話す。


「それはちょっと・・・」


「あはは、アルージェはそう言うと思ったよ。まぁ皆まだ若いから選択肢はいくらでも有るからね。一つの選択肢として考えてくれたいいよ」


「ここまでしてもらったのに、すいません」


「あぁ、そんなに気にしないでくれ。さぁフォルスタに出発しよう!」

皆が朝食を食べ終わっていることを確認して、アインが立ち上がる。


フォルスタの城壁はもう見えている。


「そういえば、ルーネとは一度も訓練しなかったね。まぁずっと周囲の警戒をしてくれてたから、僕達が安心して打ち合いとか出来たわけなんだけど」


「ワウッ!」


「ありがとね。いつもルーネに助けられてばっかりだね」

アルージェはルーネにお礼を言う。


「でも、なんで訓練してないのにそんなに強いの?」

アルージェが尋ねるとルーネは首を傾げる。


「そういえば、前戦った時ルーネ金色の魔力纏ってたよね。アインさんも金色の魔力纏ってたし、魔力ってどうやったら金色に出来るの?」

ルーネはもう一度首を傾げる。


「ルーネも金色の魔力を纏えるのかい!?」

たまたま聞こえたアインが話に入ってくる。


「そうなんですよ。前に一回組み手してくれたんですけどね。その時見せてくれました。魔力ってどうやった金色になるんですか?」


「んー、そうだなー。僕の場合、特殊な体質で波長の違う二種類の魔力が体に宿っていて。二つの魔力を無理矢理混ぜ合わせて魔力を出すと金色になるんだ。出すのに時間がかかったよ」

アインが原理を教えてくれるがアルージェはイマイチピンとこなかった。


「ルーネもそうなの?」

アルージェがルーネに確認するが、首を傾げるだけで教えてくれない。


「でもアインさんの金色の魔力とは少し違う気がするな。ルーネが魔力を纏ってた時は体からキラキラとした粒子みたいなものも出てて、綺麗だったよね!」


「へぇー、確かに僕のとは違うみたいだね。体の周りに金色の魔力が纏うだけだからね。きっと完全に別物だね」


「やっぱりそうですか・・・。ルーネの正体って一体?」

ルーネに視線を向けてアルージェが尋ねるが、「ただの狼だ」とルーネが脳内に伝える。


「ただの狼・・・、狼ってそんなことも出来るのか!すげぇ!」

アルージェはルーネに尊敬の目を向ける。


「ふんすっ!」

ルーネはドヤ顔で鼻息を漏らす。


「ははは、本当に君たちは仲がいいよね。羨ましいよ」

アインは楽しそうにアルージェとルーネを見る。


「仲がいいというか僕はルーネが絶対に僕を裏切らないって信じてますし。ルーネはきっと僕のこと信じてくれてるんですよ」


「ワウッ」

ルーネは少し恥ずかしそうに顔を背ける。


「いいじゃないか!確かゴブリンに襲われているところを助けたんだっけ?」


「そうですよ。村を出て、フォルスタに行く途中でしたね。あの時は無我夢中でしたけど、今思えばよく生きてたなって感じです」


「きっとアルージェが命懸けで助けたから、ルーネも信頼してるんだろうね」


「バウッ」

ルーネは居心地が悪くなって、エマを乗せたまま早足で先頭集団の方へ行く。


「あぁ、ルーネ待ってよぉ!」

アルージェが追いかけるが、ルーネは追いつかれないようにすたこらと進む。


「ははは、本当に仲が良いね!」

アインはその様子を笑って見ている。


そしてフォルスタに到着する。


門へ向かうと門番が馬車の紋章に気付き、貴族側の門へ案内される。


「門番さん凄いですね、あんなとこからでも見えるなんて」

アルージェが門番に感心しているとミスティが声をかけてくる。


「馬車が見えたら遠目の魔法なんかを使って見ているのだろう」


「そんな魔法もあるんですね」

勉強になるなぁとアルージェは覚えておこうと考えていると、今度はアインが話しかけてくる。

「ん?身体強化は出来るのに遠目は出来ないのかい?」


「それって何か関係あるんですか?」


「あんた本当に魔法学校に通ってたんでしょうね?身体強化と同じ原理で目に魔力を集中すると、遠くが見えたり物の動きがよく見えたりするって基本中の基本でしょ」

カレンが呆れる。


「えっ、知らなかった・・・、ちょっとやってみよ」

アルージェが魔力を操作して目に集中する。


「魔力を込めすぎないように気をつけなさいよ」


「うわぁ!すげぇ!めっちゃ遠くまで見える!あがっ!」

アルージェは思っていたより魔力を込めてしまい、脳がガンガンする。


「ほら、言わんこっちゃない。どんだけ遠くが見えても頭が情報を処理してるんだから見えすぎたら良くないに決まってるでしょ。これが今のルミアス魔法学校の学力だと思われたら恥ずかしいわ。はぁ、ちゃんと色々なこと勉強しなさいよね」

カレンが頭を抱える。


「ははは、ちなみにそれうまいこと使うと戦闘でも役に立つから練習しといて損はないよ」


「銭湯で使うなんてそんな!?」

アルージェはアインに向けて少し軽蔑した目を向ける。


「ん?なんでそんな道端に落ちてるゴミを見るような目で見るんだい・・・?」

アインは意味が分からず戸惑う。


「いや、まさかアインさんも男ってことですね。黙っておきます」

アルージェは親指を上げた拳をアインに見せる。


「何をぐずぐずしているんだ。マイアが手続きをしてくれたから、もう中に入れるぞ!」

ミスティに呼ばれてアルージェはミスティの元に駆け寄る。


「なんだか勘違いされてるような気がするけど・・・、まぁいいか」

アインもフォルスタに入っていく。

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