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第百五十二話

合流してから夕食は部屋で済ませた。

部屋の広さやらサービスの良さを見るに、貴族御用達の宿屋なのだろう。

アインさん達は同じ宿屋だが、別の部屋に泊まっているらしい。


食後、アルージェはマイアに淹れてもらった紅茶を飲みながら、ソファで寛いでいた。


「アウアウアウ」

ルーネが前足をでミスティにちょいちょいと触りながら、聞いたことある鳴き声で何かを訴えていた。


「はぁ、アルージェお前またなのか」

ミスティがアルージェの隣に座り、息が当たる距離まで近づく。


アルージェはよく分からないなと思い、首を傾げる。


「確かにルーネの言う通り女物の香水の匂いがするな」

その言葉を聞いてエマがアルージェを睨む。


「あぁ、リリィさんと会ってきたので、それかも知れないです!」


「はぁ、程々に頼むぞ」

ミスティはため息をつく。

だが、どこか余裕の態度だ。


「あっ、はい?」

アルージェはよくわからんなと思いながら返事する。


「アルージェ、重婚が許されるのは貴族だけだ。つまりだ、私と結婚して貴族になるしかないんだ!」

ミスティがアルージェに向かってビシッと指差す。


「重婚・・・?貴族・・・?でもミスティさんと結婚しても、弟さんいらっしゃるんですよね?」


「フフフ、そこはしっかりと考えている。というより、私の弟は辺境伯の血は流れていないのだ。つまり正規の跡取りは私だけと言うことだ!どうせ私とエマだけじゃないんだろ?ならば貴族になって重婚ができるようにしている方が良いではないか!それで全てが丸く収まる!どうだアルージェ!」

この時を待ってましたと言わんばかりに、渾身のドヤ顔だった。


「ミスティさん達がそれで安心するなら結婚しましょう!それに今更ミスティさん達が他の誰かの元に行ってしまうなんて嫌ですから!」


「よし!決まりだ!エマ、やったな!」


「は、はい!やっと切り出せましたね!仲良しの二人とずっと一緒にいれるなんて嬉しいです!」


「私もここまで仲良くなった二人とさよならはしたくないからな。独り占めできないなら、平等に愛してもらうことにしよう!」


二人の会話から察するにいつの間にか二人の中では話が決まっていたらしい。

結婚はあっさりと決まり、一旦は辺境伯邸で辺境伯様にお話するまでは婚約している形で置いておくことになった。


翌日、アイン達に話すとアインには「そんな軽く決めてしまうんだ。すごいね・・・」と言われたが、カレンとラーニャにはすごく祝福された。


その後、何日かフォルスタに滞在することにした。


まず、いつもの大通りに面している鍛冶屋に向かう。

高級店か何かと勘違いしてしまう外装だが、アルージェの武器を王に献上したことでここまでのし上がった。


「鍛冶屋の名前知らなかったんだけど、リベック武具店って言うんだ。知らなかったなぁ。絶対にラベックさんの兄弟じゃん」

鍛冶屋に入ると、鍛冶屋には似合わないピシッとした服を来た男性がアルージェに近づいてくる。


「こんにちは、アルージェさんですよね?」


「あっ、はい、そうです。店主さんは居ますか?」


「はい、少々お待ちください」


男性は店の奥の方に向かい、数分で店主を連れて戻ってくる。


「おぉ、坊主!無事な姿を見れて良かった、ピタッと来なくなったから死んじまったのかと思ったぜ」


「あぁ、すいません。少し王都に行って魔法を学んでたので」


「魔法?もしかして付与魔法か!?」

店主はアルージェに近づく。


アルージェは店主の距離が近いので、少し後に下がる。


「そうですよ!ここで魔法が付与されている武器を見て、学びたくなってしまったんですよ」


「行動力がすげぇな。そうだ、なら何本か付与魔法がついた武器とか売ってくれねぇか?」


「良いですよ」

アイテムボックスから付与魔法を施した槍一本・剣三本・短剣一本を取り出し、店主に見せる。


店主は虫眼鏡で武器を見る。


「おぉ!こりゃいいな!汎用的な付与効果がついてるから、置いてたら売れるだろうし助かるぜ!値段はこんなもんでどうだ?」


店主が人差し指を立てる。


「んー、ならそれで」

アルージェは相場が分からないので、売れれば良いやと思い返事をする。


「おぉ、助かるぜ!おい、金庫から持って来てくれ」

店主が後ろにいた男性に指示する。


「はい、ただ今」

男性が駆け足で金庫に向かう。


「そういえば店主さん、リベックさんって言うんですか?」


「ん?そうだが?」


「つかぬことをお聞きしますが、ラベックさんってご存知ですか?」


「スビア商会にいるラベックか?それなら俺の兄だが?」


「おぉ!そうなんですね!」


「ん?もしかして、あれか!?兄が言っていた運搬屋の逸材って坊主のことか!?」


「あはは、そうかもしれないです」


「はぁ、坊主、多才だなぁ。まさかこんなとこで繋がるとは思いもしなかったぜ」


「やりたいことやってたら、いつの間にかこんなことになってました」

アルージェは笑いながら話す。


「お持ちいたしました」

男性が巾着袋をリベックに渡す。


リベックは巾着袋の中を覗き、中身を確認してからアルージェに渡す。


「これが武器代だ。助かったぜ」


アルージェは受け取り、中を除くと金色の硬貨が五枚入っていた。


「あ、ありがとうございます。あと、鍛冶場で武器修理したので、借りても良いですか?」


「あぁ、好きにしてくれ!俺も仕事に戻るわ!ならすまんが、あと任せたぞ」

アルージェとリベックは奥にある鍛冶場に向かう。


男性は頭を下げて、そのまま店番に戻る。


「そんじゃ、俺の鍛冶場は向こうだからよ」

店主は手を挙げてアルージェに挨拶してから、上機嫌で自分の鍛冶場に向かっていった。


アルージェも鍛冶場に行き、武器の修理に取り掛かる。

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